3. 【健康保険】傷病手当金はどれくらい手厚いのか

比較の前提として、健康保険側の中身を確認しておきましょう。LIMOの記事「国民健康保険と社会保険(健康保険)の違いは何ですか?傷病手当金・出産手当金という現金給付は、実は国保では「出ないのが普通」。国民健康保険法から編集部が整理」から要点を引用します。

全国健康保険協会(協会けんぽ)の公式情報によると、傷病手当金の支給要件は、業務外の病気やケガで療養中であること、療養のための労務不能であること、4日以上仕事を休んでいること(最初の3日間は待期期間)、給与の支払いがないことの4条件です。支給期間は、同一の傷病について支給を開始した日から通算して1年6か月です。

出所:LIMO「国民健康保険と社会保険(健康保険)の違いは何ですか?傷病手当金・出産手当金という現金給付は、実は国保では「出ないのが普通」。国民健康保険法から編集部が整理」

3.1 待期の3日間は連続していないと成立しない

引用にある待期期間について、1点だけ補っておきます。

協会けんぽは支給要件の3つ目を「連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと」としています。単に4日休めばよいのではなく、3日は連続している必要があります。

協会けんぽは「連続して2日間会社を休んだ後、3日目に仕事を行った場合には、『待期3日間』は成立しません」とも説明しています。飛び飛びで休むと、いつまでたっても待期が完成しません。

3.2 1日あたりの額と支給期間

1日あたりの額は、支給開始日以前12か月間の標準報酬月額を平均した額を30日で割り、その3分の2にあたる金額です。令和4年1月1日からは支給期間が通算化され、途中で復職しても残りを繰り越して受けられるようになりました。

出産手当金のほうは、出産の日(実際の出産が予定日より後になったときは出産予定日)以前42日、多胎妊娠なら98日から、出産の翌日以後56日目までの範囲で会社を休んだ期間が対象です。

4. 【共通する給付】高額療養費と出産育児一時金は両方にある

国保に無い給付ばかりを見てきましたが、両方に共通する給付もあります。高額療養費と出産育児一時金です。

高額療養費は、1か月(暦月ごと)に支払った一部負担金が自己負担限度額を超えたときに払い戻される仕組みで、どちらの制度にもあります。出産育児一時金は、産科医療補償制度加入機関で在胎週数22週以降に出産した場合で1児につき50万円。こちらも共通です。

整理すると、働けない間の収入を補う給付は健康保険だけの特徴で、かかった費用そのものを補う給付は両方にある、という構図になります。

5. 【任意継続】切り替えても傷病手当金は使えない

国民健康保険には傷病手当金に相当する恒常的な保障が基本的にありません。自営業やフリーランスとして働くなら、就業不能保険や所得補償保険といった民間の商品で備える選択肢を検討することになります。

退職直後であれば、それまでの健康保険に最長2年間そのまま加入し続ける任意継続という選択肢もあります。

ただし、任意継続を選べば傷病手当金が使えるようになるわけではありません。協会けんぽは「任意継続被保険者期間中に発生した病気・ケガによる傷病手当金及び出産手当金は支給されません」としています。

受けられるのは、在職中から続けて給付されている場合に限られます。退職時点ですでに傷病手当金を受けている、または受けられる状態にあった人が、引き続き申請できるという扱いです。

任意継続を選ぶかどうかは、保険料の額と家族の扶養で判断することになります。働けなくなったときの収入は、国保に移る場合と同じく民間の保険で備える前提で考えてください。

なお、パートやアルバイトで働く人がどこから健康保険の対象になるかは、社会保険の適用拡大で変わりつつあります。詳しくはLIMOの記事「【106万円の壁】賃金要件は3年以内に撤廃。最も低い宮崎県も1085円になり、全都道府県が目安の1016円を超えた」でまとめています。

6. 【まとめ】国保に無いのは働けない間の収入を補う給付

健康保険では傷病手当金・出産手当金が法定給付ですが、国民健康保険では傷病手当金が任意給付にとどまり、出産手当金は制度として想定されていません。国民健康保険法第58条の第1項と第2項で、文末が「行うものとする」と「行うことができる」に分かれているのがその根拠です。

条例を定めていない市区町村では支給されません。「国保にもある」という情報を鵜呑みにせず、自分の自治体を確認することが第一歩です。

任意継続に切り替えても、その期間中に発生した病気やケガでは傷病手当金は出ません。一方で高額療養費と出産育児一時金は共通してあります。無いものと在るものを切り分けて、備え方を考えましょう。

参考資料

LIMO編集部社会保障解説班