1. 1カ月のレンジを下に抜けた9月10日の終値

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出所:各種資料をもとに筆者作成

出所:各種資料をもとに筆者作成

まず株価の動きを押さえたい。2026年8月13日の終値は8,325円だった。そこから水準を切り上げ、9月1日には9,103円をつけている。この21営業日の中では、9月1日が最も高い終値である。

ところが9月に入ってからは方向が変わった。9月8日と9月7日はいずれも8,750円、9月9日は8,401円と一段ずつ水準を下げ、9月10日の終値は7,989円となった。

前営業日からは412円の下落で、率にすると▲4.9%になる。8月13日を起点に見れば1カ月で▲4.0%、9月1日の水準からは▲12.2%だ。7,989円は、この21営業日の中で最も低い終値でもある。

なぜこの日に下げたのか。ここは慎重に見るしかない。株価は決算という材料だけで動くものではなく、相場全体の地合いやバリュエーションの調整でも動く。この日の下げが会社固有の要因によるものかは、開示情報からは判断できない。

同日時点のPER(株価収益率)は29.71倍、PBR(株価純資産倍率)は3.16倍である。PERは30倍を下回る位置まで下がった。この水準を高いとみるか低いとみるかは、後述する利益の中身と資本の厚みをどう評価するかで変わってくる。

2. 営業利益が前年同期の2.5倍になった1Qの中身

直近の決算は2027年3月期1Qである。売上高は5,178億円で、前年同期の5,723億円からは減っている。一方で営業利益は1,425億円と、前年同期569億円の2.5倍まで伸びた。

売上が減って利益が2.5倍になる。この組み合わせが今の任天堂を理解する入口になる。

営業利益率で見ると、前年同期の9.9%から27.5%へ大きく戻った形だ。経常利益は2,061億円、親会社株主に帰属する四半期純利益は1,474億円となっている。

なぜ前年同期の利益率がそこまで低かったのか。短信では、2025年6月5日に発売したNintendo Switch 2 が順調な立ち上がりを見せ、年末商戦期にかけても販売台数を伸ばしたとしている。

本体の販売が主役になる時期は、売上は大きく伸びる一方で原価も同時に膨らむ。2026年3月期の売上原価は1兆4,040億円まで増え、粗利率は39.3%まで下がった。前期の61.0%からは大きく水準を落としている。

この構図を踏まえると、1Qの利益率の回復は、本体主導から本体とソフトの併走へと売上の中身が移り始めた姿と読み取れる。ハードウェアの立ち上がり期に沈んだマージンが、戻り始めた局面にみえる。

3. 通期は減益予想でも営業利益は増益見込みという構図

会社の2027年3月期の通期予想は、売上高2兆500億円で前期比▲11.4%、営業利益3,700億円で+2.7%となっている。

ところが経常利益は4,300億円で▲20.7%、当期純利益は3,100億円で▲26.9%と、下の段階に行くほど減益幅が大きくなる。営業利益は増える予想なのに、最終利益は3割近く減る予想である。

この段差はどこから来るのか。前期の利益の作られ方に答えがある。会社の説明によると、2026年3月期は持分法による投資利益827億円、受取利息460億円、為替差益443億円を計上した。これらなどにより、経常利益は5,421億円となっている。さらに投資有価証券売却益326億円を特別利益として計上したため、当期純利益は4,240億円に達した。

つまり前期の経常利益・当期純利益には、本業の外側で積み上がった利益がかなりの厚みで乗っていた。営業利益3,601億円と経常利益5,421億円の間には1,800億円規模の開きがあった。予想の減益は、この上乗せが繰り返される前提を置いていないことの反映と考えられる。

進捗も見ておきたい。1Qの営業利益1,425億円は、通期予想3,700億円に対して38.5%に当たる。線形なら25%の位置である。会社計画は保守的に置かれている可能性が高い。

どの段階の利益で会社を測るかで、印象がここまで変わる決算は多くない。営業利益だけを見れば横ばい圏、最終利益だけを見れば大幅減益。読者はこの二層を切り分けて眺める必要がある。

4. 筆者コメント

株価の下げ方と、1Qで戻した利益率を同時に並べると、市場が何を測りかねているのかが少し見えてくる。

本体の立ち上がり期は、売上が伸びても原価が先に膨らむ。マージンは一度沈み、ソフトの比率が上がるにつれて戻る。1Qの数字は、その戻りの途中にある姿だ。

にもかかわらず株価はこの1カ月で水準を下げた。会社計画が営業段階では小幅な増益、最終段階では大幅な減益という形になっているため、どの利益を見るかで評価がねじれる。ねじれた局面では、市場は低い方の数字に引っ張られやすい。

私が気にしているのは、利益率の戻りのうち、本体販売の勢いに支えられている部分とソフトの積み上がりに支えられている部分の比率だ。前者には波があり、後者は積み上がる。同じ増益でも、織り込むべき持続性は違う。

四半期の一点だけで判断せず、原価率の動きと合わせて追う視点を持ってほしい。