>厚生労働省が公表している「厚生年金保険・国民年金事業年報(令和6年度分)」によると、遺族年金の受給権者は620万2286人、平均年金月額は8万2209円となっています。一方、公表されている支給額の分布から「中央値」を算出してみると約8万6900円となり、平均値を上回る結果となります。

>貯蓄や老齢年金では平均値が中央値を上回るのが一般的ですが、遺族年金ではなぜ逆転現象が起きるのでしょうか。本記事では、事業年報の階級別分布を手がかりに、遺族年金の支給額がどのように散らばっているのかを確認していきます。

1. 遺族年金の平均年金月額は8万2209円

まず、年報が示している全体の数字から見ていきます。

1.1 受給権者は620万2286人

令和6年度末現在、遺族年金の受給権者は620万2286人です。平均年金月額は8万2209円と示されています。

これは旧法によるものも含めた総数で、階級別の人数を足し上げても同じ620万2286人になります。

1.2 年金月額には遺族基礎年金が含まれる

この表には注記が付いています。年報は「年金月額には遺族基礎年金月額を含む」としています。

つまり、遺族厚生年金だけの額ではなく、遺族基礎年金もあわせた額で集計されているということです。額を読むときに押さえておきたい前提です。

2. 分布から中央値を出すと約8万6900円になる

次に、平均だけでは見えない散らばり方を確認します。年報の表には累積構成比の列があり、これを使うと中央値の位置が分かります。

2.1 8万円以上9万円未満の階級で累積53.3%に届く

7万円以上8万円未満の階級までで累積構成比は42.8%です。次の8万円以上9万円未満の階級には64万8178人(10.5%)がいて、ここで累積が53.3%になります。

ちょうど半分にあたる50%を超えるのがこの階級ですので、中央値は8万円以上9万円未満に入ります。階級のなかで按分すると約8万6900円です。

2.2 中央値が平均を上回っている

平均年金月額は8万2209円ですから、中央値のほうが約4700円高いことになります。

平均より中央値が高いのは、低い側に人数が偏って全体の平均を引き下げているためです。

1万円未満と8万〜9万円台に、それぞれ人数の山があります1/2

1万円未満と8万〜9万円台に、それぞれ人数の山があります

出所:厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業年報 令和6年度」を参考にLIMO編集部作成

3. 月1万円未満に65万6669人が集まっている

平均を押し下げているのが、いちばん低い階級の人数です。

3.1 全体の10.6%が1万円未満

年金月額が1万円未満の受給権者は65万6669人で、全体の10.6%を占めます。単独の階級としては最も多く、次に多い8万円以上9万円未満の10.5%をわずかに上回ります。

この左の裾が大きいために、平均が中央値より低くなっています。

3.2 1万円から5万円までは人数が少ない

1万円以上2万円未満は5.9%、2万円以上3万円未満は3.8%、3万円以上4万円未満は2.6%、4万円以上5万円未満は2.9%です。

1万円未満に山があり、そこから5万円あたりまでは薄く、また8万円台で山になるという形をしています。単純な釣鐘型ではないということです。

累積構成比が50%を超えるのは8万円以上9万円未満の階級です2/2

累積構成比が50%を超えるのは8万円以上9万円未満の階級です

出所:厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業年報 令和6年度」を参考にLIMO編集部作成。中央値はLIMO編集部が累積構成比から算出

熊谷 良子

平均と中央値が公表資料に並んでいるわけではありませんので、どちらの数字がどこから来たのかを確かめてから読むところです。年報の注記も一緒に見ておきたいところです。