1. 6,000円台から4,951円まで振れ、直近で8%高に転じた1カ月

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出所:各種資料をもとに筆者作成

出所:各種資料をもとに筆者作成

直近1カ月の株価は、素直な一方通行ではなかった。8月12日の終値5,800円から、8月17日には6,078円まで切り上がった。ここが直近1カ月では最も高い水準である。

そこから空気が変わる。8月19日の終値は5,328円まで下げ、9月3日には4,951円をつけた。約1カ月の中では最も低い水準になる。

高いところからは2割弱の下げだ。3週間ほどで水準が一段切り下がったことになる。

そして足元だ。9月8日の5,083円から9月9日は5,493円へ、1日で8%台の上昇となった。9月3日の底からは1割強戻したことになる。

もっとも、1カ月という枠で切れば起点の5,800円に対して水準はまだ下だ。短期の急騰と1カ月での下落が同時に成立しているのが、いまの姿である。

なぜ1日で8%も動いたのか。決算の開示からはすでに1カ月近く経っており、個別の材料に帰着させるのは難しい。データセンター関連として括られる銘柄群全体の需給や、相場の地合いが効いた可能性が高い。

バリュエーションも押さえておきたい。直近時点のPER(株価収益率)は27.9倍、PBR(株価純資産倍率)は14.95倍だ。PBRが15倍近いという水準は、非鉄金属という業種の一般的なイメージからは想像しにくい。

2. 営業利益1,048億円と、期初計画から倍増した通期予想

2027年3月期1Qは、売上高4,020億円、営業利益1,048億円、経常利益1,115億円、親会社株主に帰属する純利益804億円だった。

ただ、より目を引くのは通期予想の方である。同じ1Q短信で示された2027年3月期の通期予想は、売上高1兆7,550億円、営業利益4,320億円、純利益3,260億円。前期比では営業利益が+128.9%、純利益が+107.4%となる。

これは期初の計画とは別物の数字だ。2026年3月期の通期決算の時点で会社が示していた2027年3月期の予想は、売上高1兆2,430億円、営業利益2,110億円、純利益1,560億円だった。営業利益ベースで見れば、3か月ほどで計画が倍以上に引き上げられている。

なぜここまで変わったのか。会社によると、期初の計画は情報通信事業の光ケーブル増産に伴う原材料調達への懸念を保守的に織り込んだものだった。そのうえで、データセンタ向け需要の継続を前提に好調な業績推移を見込んでいた。

保守的に置いた前提を、実需がそのまま上回ったと読み取れる。強気に転じたというより、抑えていた見積もりを実績に合わせに行った引き上げだろう。

1Qの営業利益1,048億円は、引き上げ後の通期予想4,320億円に対して24.3%の進捗になる。1Qで4分の1という数字は、線形なペースからほぼズレていない。裏を返せば、引き上げ後の水準がすでに実績の延長線上にあるということだ。

なお同社は2026年4月1日付で1株を6株に分割している。分割の前後で1株当たりの数字は単純比較できない。2027年3月期の予想EPS(1株当たり利益)は196.88円である。

3. 営業利益の9割超が情報通信から出ているという事実

1Qの中身をセグメントで割ると、この会社の姿はかなりはっきりする。

情報通信事業部門は売上高2,644億円、営業利益980億円。前年同期比で売上が+83.9%、営業利益が+188.3%だ。営業利益率は37.1%に達している。

全社の営業利益1,048億円のうち、情報通信が980億円を占める。比率にして9割超だ。売上高の構成比は6割台なので、利益の偏りは売上の偏りよりさらに大きい。

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出所:株式会社フジクラ 2027年3月期 第1四半期決算短信をもとに筆者作成

出所:株式会社フジクラ 2027年3月期 第1四半期決算短信をもとに筆者作成

残る部門の営業利益は、エネルギー事業部門が53億円、不動産事業部門が13億円、自動車事業部門が12億円、エレクトロニクス事業部門が4億円である。報告セグメントに含まれないその他の区分は▲13億円だった。

4部門を足しても82億円にとどまる。情報通信の980億円と並べると、同じ連結決算の中に性質の違う会社が2つ入っているようにも見える。

電線・ケーブルという括りで眺めていると、この構造は見落としやすい。銅価の上下が業績を決めるという素材産業のイメージは、少なくとも足元の利益の出どころとは噛み合わなくなっている。

もっとも、これは強さと脆さの両面を持つ。全社の利益が1つの需要に紐づいているという意味では、収益の分散はほとんど効いていない。多角化していることと、多角化が利益に効いていることは別だろう。

4. 筆者コメント

セグメント別の利益構成と株価のバリュエーションを重ねると、市場が何に値段を付けているのかが見えてくる。

PBR15倍近いという水準は、連結全体の平均的な資産効率に対して払われている値ではない。実質的には情報通信事業という1つの部門への値付けであり、他の4部門は分母に入っているだけという読み方もできる。

そう捉えると、1カ月の株価の振れ方も理解しやすい。8月中旬の高い水準から9月初めの安い水準までの下げは、会社の利益構造が変わったからではなく、その1部門の需要見通しに対する市場の温度が動いたためと読み取れる。

私が着眼したいのは、この構造がいつまで「1部門の話」で済むかという点だ。情報通信の営業利益率はすでに37.1%まで来ている。

増産局面に入ったあと、ここまでの利益率がどこまで維持されるのか。株価の水準を支えているのは、結局その持続性への見立てだろう。

決算を見るときは、連結の増益率よりも部門別の利益率の変化に目を向けることをおすすめしたい。