1. 40代・50代の転職で陥りがちな「条件優先」の罠

人事や採用担当として長年、正社員からパート・アルバイトまで数多くの採用面接やキャリア相談に携わってきました。その中で特に強く感じてきたのが、「40代・50代からの転職」における独特の難しさと、転職後に『こんなはずではなかった』と後悔してしまう人の共通点です。

ミドルシニア世代の転職活動では、これまでのキャリアや実績があるからこそ、無意識のうちに「前職と同等以上の年収」や「知っている有名企業」「待遇や制度の充実度」といった表面的な条件を最優先にしてしまいがちです。しかし、実際に現場で多くの転職者を見送ったり受け入れたりしてきた経験から言うと、この「条件第一主義」こそが、40代以降の転職で最も大きな落とし穴になります。

2. 「働きがい」を左右するのは給与や制度だけではない

ミドルシニア世代が働き続けるうえで、本当に大切なものは何なのでしょうか。

株式会社NEWONE(推せる職場ラボ)が40代〜60代の会社員・経営層812名を対象に実施した調査(『ミドルシニアの働きがいとライフキャリアの実態』2026年7月調査)によると、非常に興味深いデータが示されています。

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出典:【40代~60代800名調査】人は何に希望を持てると、働き続けたいと思えるのか/推せる職場ラボ(株式会社NEWONE)

出典:【40代~60代800名調査】人は何に希望を持てると、働き続けたいと思えるのか/推せる職場ラボ(株式会社NEWONE)

同調査において、「会社への誇り・愛着がある」と回答した人の実に92.5%が「働きがいを感じている」と答えたのに対し、「誇り・愛着がない」人で働きがいを感じている人の割合はわずか5.7%にとどまりました。この結果は、働きがいというものが単なる給料の額や福利厚生の充実度だけで決まるのではなく、「その組織との心理的なつながり」や「会社の目指す方向に共感できているか」に深く関係していることを物語っています。

さらに同調査では、年代別で見たときに「最も働きがいを実感できていないのは50代の一般社員層(28.5%)」であることも明らかになっています。「10年後に今より生き生き働けていると思う」と答えた割合も、40代後半の28.3%から50代前半では16.5%へと急減しており、いわゆる“50代の壁”が存在することが分かります。

3. 転職後のミドルシニアが突き当たる「期待値ギャップ」

人事の現場にいた私のもとにも、「前職より年収が上がったから」「名前の通った企業だから」と期待を膨らませて入社されたものの、半年もしないうちに表情が曇ってしまう40代・50代の方が何人もいらっしゃいました。

条件面だけで会社を選んでしまうと、いざ入社した後に「経営陣の方針に共感できない」「自分の経験や強みが組織の文化と噛み合わない」「周囲の社員との温度差があり、会社を誇りに思えない」といった違和感が生じやすくなります。結果として、給与は高くても『日々の働く喜び』や『組織に貢献している実感』が得られず、不完全燃焼のまま過ごすことになってしまうのです。

柳 奈央子
ミドルシニア世代にとって、転職は単なる「職場の変更」ではありません。自分自身のこれまでの働き方を振り返り、残り10年・20年の社会人生活をどう納得感を持って過ごすかという、ライフキャリアの大きな再設計なのです。

4. 50代に本当に必要なのは「リスキリング」より「方向性の整理」

世間では「リスキリング(新しいスキルの習得)」の重要性が叫ばれていますが、同調査によると、今後のキャリア充実のために必要な支援として、40代では「新しいスキルや知識の習得」が最多だったのに対し、50代では「ライフキャリアの明確化(38.8%)」が最も高い割合を占めました。

これは採用の現場で感じてきた実体験とも強く合致しています。40代・50代で転職に成功し、転職先でも生き生きと活躍されている方は、むやみに新しい資格を取ろうとするのではなく、「自分はどのような価値観を大切にして働きたいのか」「どんな組織であれば誇りを持って貢献できるのか」という軸(ライフキャリア)が非常に明確です。