4. 【試算の前提】この計算に当てはまらないケース

ここからは、1ページ目の試算がどんな前提で成り立っているのかを補足します。実際の年金額は、この計算どおりにならないことが多くあります。

試算に置いた前提は、平成15年4月以降の加入期間だけで480か月、老齢基礎年金は満額、昭和31年4月2日以後生まれ、という3点です。

4.1 平成15年3月以前の加入期間は乗率が違う

報酬比例部分は、平成15年3月以前の期間に1000分の7.125、平成15年4月以降の期間に1000分の5.481という別の乗率を使います。

40年加入という前提で考えると、平成15年3月以前の期間を持つ方が多くなります。その期間については乗率が高いため、同じ報酬でも報酬比例部分は試算より大きくなります。

また、昭和21年4月1日以前に生まれた方については給付乗率が異なるとされています。

4.2 共済組合の期間がある人は別に計算される

日本年金機構は、共済組合加入期間を有する方の報酬比例部分について、各共済加入期間の平均報酬額と月数に応じた額と、その他の加入期間に応じた額をそれぞれ計算するとしています。

なお、1ページ目で見た分布のもとになる資料には、共済組合等の期間を含めて該当した方の年金月額には共済組合等から支給される分が含まれていない、という注意書きが添えられています。

4.3 繰下げ受給・加給年金・経過的加算は含めていない

老齢厚生年金の額は、報酬比例部分に経過的加算と加給年金額を合計した金額です。1ページ目の試算では、報酬比例部分と老齢基礎年金だけを足しています。

加給年金は、厚生年金保険の被保険者期間が20年以上ある方に、生計を維持されている配偶者または子がいるときに加算されます。加算のためには届出が必要です。

また66歳から75歳までの間に繰下げ受給を選ぶと年金額は増額されます。分布のなかで20万円以上に入っている方には、報酬の高さ以外の要素で届いている方も含まれます。

5. 【2027年9月から】標準報酬月額の上限が段階的に引き上げられる

ここからは、上限そのものが動くという話です。2025年6月13日に年金制度改正法が成立し、標準報酬月額の上限の引き上げが決まりました。

厚生労働省は、賃金が上昇傾向にあることを踏まえた改正だと説明しています。

5.1 65万円から75万円へ3段階で上がる

標準報酬月額の上限は65万円から75万円に引き上げられます。2027年9月に68万円、2028年9月に71万円、2029年9月に75万円と、段階的に進む予定です。

あわせて、最高等級の方が被保険者全体に占める割合に基づいて改定できるルールも導入されます。

5.2 保険料は月9100円上昇、10年で月約5100円の増額

厚生労働省の試算によると、賃金などが月75万円以上の方の場合、保険料の本人負担分は月9100円上昇します。社会保険料控除を考慮すると月約6100円です。

その状態が10年続くと、月約5100円が増額された年金を一生涯受け取れるとされています。年金課税を考慮すると月約4300円です。いずれも一定の前提を置いた試算とされています。

5.3 上限以下の人を含めて給付水準が上がる

厚生労働省は、上限を引き上げることで月65万円を超える方に収入に応じた保険料を負担してもらい、現役時代の収入に見合った年金を受け取れるようにするとしています。

そのうえで、賃金などが月65万円以下で保険料が変わらない方を含めて、厚生年金全体の給付水準が上昇するとされています。

6. まとめにかえて

厚生年金保険(第1号)の老齢年金受給権者1608万5696人のうち、年金月額20万円以上は302万7673人で18.8%でした。男女別では男子27.5%、女子1.7%です。

40年加入で老齢基礎年金が満額という前提で試算すると、月額20万円に届くのは平均標準報酬額が60万円のあたりで、年収に置き換えると720万円前後になります。

ただしこれは前提を単純にした試算です。平成15年3月以前の加入期間、共済組合の期間、加給年金、繰下げ受給といった要素があると結果は変わります。

ご自身の見込額は、ねんきん定期便やねんきんネットで確認できます。加入記録や試算の中身で分からない点があれば、年金事務所やねんきんダイヤルに問い合わせてみてください。

参考資料

中本 智恵