朝晩には涼しさも増し、おだやかな秋の気候が心地よく感じられる季節になりました。
9月9日は、菊の花を飾って邪気を払い、健康長寿を願う「重陽の節句」にあたります。五節句の一つとして古くから親しまれてきた、長寿を願う行事であり、シニア世代にとってもこれからの人生を見つめ直す良いきっかけとなる日といえそうです。
この時期をきっかけに、定年後や子育てが一段落したタイミングで「何か新しいことを始めたい」と考えるシニアも少なくないでしょう。
株式会社ハルメクホールディングスが2026年8月に公表した調査によると、投資をしているシニア女性は64.8%まで増え、投資をする理由として「趣味・旅行の原資づくり」を挙げる声が目立つといいます。趣味や習い事とお金の関係は、シニア世代にとって今まさに関心の高いテーマといえそうです。
実際、株式会社CCCMKホールディングスが2023年3月に公表した調査の時点で、直近1年間に習い事を経験した人はすでに36.7%にのぼっていました。習い事への関心は、この数年で一段と高まってきているとみられます。
ただし、いざ習い事を選ぶとなると悩ましいのが月謝です。
「思ったより安い」という声もあれば、「思ったよりお金がかかる」という声もあり、実は世代や調査によって支出感覚に差があります。
本記事では、シニアの習い事にかける費用の実態と、ジャンルごとの月謝の傾向を整理したうえで、家計・貯蓄とどう両立させればよいかを考えます。
1. シニアはどれくらいお金をかけている? 意外と手厚い「1万円以上」派
まず、シニア自身が趣味・活動にどれくらいお金をかけているのかを見てみましょう。
株式会社イオレが2025年10月に公表した「シニアの趣味・活動トレンド調査2025」(50歳以上のシニア400人が対象)によると、旅行や趣味の道具代なども含む趣味・活動全般にかける月間支出は「1万〜3万円」が37.3%で最多となり、月1万円以上を使っている人は約6割にのぼるといいます。
一方、株式会社しんげんが2024年3月・4月に公表した調査(成人男女それぞれ200人、20歳代〜50歳代以上が対象)では、習い事にかける月額費用そのものは男女とも「1万円以下」が7割を超えるという結果でした。
イオレ調査は旅行やレジャーも含む「趣味・活動全般」への支出額、しんげん調査は「習い事」に絞った費用と、集計対象の範囲が異なる点には注意が必要です。単純な金額の大小だけで、シニアの方が習い事にお金をかけている、と結論づけることはできません。
総務省統計局「家計調査」(二人以上の世帯、2025年計)で、習い事をしていない世帯も含めた世帯全体の「月謝」平均を見ると、65歳以上の世帯では月換算1000円台前半にとどまります。
これは、そもそも習い事をしていない世帯が数多く含まれているためで、実際に通っている人の支出額(上記)とは意味合いが異なる数字です。
2. 【ジャンル別】月謝の傾向を家計調査で見る
実際の月謝はジャンルによってどれくらい変わるのでしょうか。総務省統計局「家計調査」(二人以上の世帯、2025年計)では、月謝を細かなジャンル別にも集計しています。65歳以上の世帯(再掲区分)の年間支出額を月換算すると、次のとおりです。
- スポーツ月謝:月換算約370円
- 音楽月謝:月換算約160円
- 他の教養的月謝(書道・華道・茶道・絵画など伝統文化系とみられる区分):月換算約230円
- 他の教育的月謝:月換算約80円
- 家事月謝:月換算約70円
- 語学月謝:月換算約30円
この数字はいずれも習い事をしていない世帯を含めた世帯平均であるため、実際に通う場合の月謝そのものより低めに出ますが、内訳を比べるとスポーツ月謝は語学月謝の10倍以上と、ジャンルによる水準の差がはっきり表れています。
なお、同じジャンルの習い事でも、実際の月謝は地域や教室の運営主体によって差が大きい点には注意が必要です。公民館や自治体主催の講座であれば数百円〜数千円程度で受けられる一方、民間のカルチャースクールやスポーツクラブでは月1万円を超えるケースも珍しくありません。ここで紹介した家計調査の数字は、あくまで全国・全世帯の平均値であることを踏まえたうえで参考にしてください。
また内訳の傾向として、「他の教養的月謝」(書道・華道など伝統文化系とみられる区分)は、年齢が上がるほど単調に増えるわけではありません。年齢階級別(二人以上の世帯、2025年計)の年間支出額を見ると、次のとおりです。
- 29歳以下:年109円
- 30歳代:年1152円
- 40歳代:年2374円
- 50歳代:年1669円
- 60歳代:年1684円
- 70歳以上:年2803円
- (再掲)65歳以上:年2707円
40歳代でいったん年2374円まで上がったあと、50歳代・60歳代は年1600円台〜1700円台に落ち着き、70歳以上になると年2803円と全年代で最大となる、珍しい傾向が見られます。
リタイア後に時間のゆとりが生まれることで、こうした伝統文化系の習い事に改めて関心が向かいやすいのかもしれませんね。
3. 筆者からのコメント
習い事を選ぶときは、いきなり月謝制の教室に入会するのではなく、体験レッスンや単発講座を複数回試して「続けられる金額感」を見極めることをおすすめします。
実は総務省「家計調査」を見ると、スポーツクラブの使用料は60歳代の世帯が他の年代よりも高く、年間で8000円を超える水準になっています。60歳代は現役を退く一方でまだ体力があり、運動系の習い事にお金をかけやすい時期といえるのかもしれません。裏を返せば、年代によって「お金をかけやすいジャンル」は変わるということでもあり、人と比べず自分の生活リズムや体力に合った予算を選ぶ視点を大切にしてください。
金額の大小だけでなく、こうした「生きがい」となるような趣味を持つことで、日々の生活に張りが生まれることもあります。今は仕事や家事に追われがちな40〜50歳代のミドルシニア世代も、時間にゆとりが生まれる60歳代以降を見据えて、これから先の長くなる人生でどんなことをしてみたいか、今のうちから考えてみてはいかがでしょうか。
ちなみに総務省統計局「消費者物価指数」(2025年基準、2026年7月分)を見ると、教養娯楽の物価は前年同月比1.9%の上昇となっています。食料(同3.5%上昇)ほど急激ではないものの、習い事を含む教養娯楽関連の費用にも、値上がりの波は確実に及んでいるといえそうです。
