5. 2026年12月期上期の進捗と、純利益+173.5%予想の中身

直近の決算は2026年12月期上期である。売上高707億円、営業利益21億円、経常利益30億円、親会社株主に帰属する中間純利益11億円、1株当たり中間純利益15円29銭だった。

会社の通期予想は売上高1,730億円で+4.4%、営業利益125億円で▲16.2%、経常利益130億円で▲23.5%、当期純利益100億円で+173.5%となっている。

上期実績を通期予想と突き合わせると、売上高の進捗率は40.9%、営業利益は17.3%、当期純利益は11.4%にとどまる。時間の按分では上期で50%だから、利益の進捗はかなり後ろに寄っている。

この偏りには季節性が効いていると考えられる。国内事業ではカイロの外部顧客売上高が61億円あり、会社は米国でも2025年1月から3月と2025年末の冬シーズンの気温低下でカイロの販売が好調に推移したと説明している。冬に売れる商品を抱える会社の利益は、構造的に下期へ寄る。

ただ、それだけで進捗率17%を説明しきれるかは別の話だ。通期の営業利益予想125億円は、上期の21億円に対して下期に104億円を積む前提になる。前期の実績149億円からは▲16.2%の減益予想であり、会社側も本業の水準がすぐ元に戻るとは置いていない。

ここで見落としたくないのが、当期純利益+173.5%という予想の中身だ。営業利益は減益予想、経常利益も▲23.5%予想である。それでも純利益が3倍近くに増えるのは、前期に計上した特別損失196億円が一巡することの効果が大きい。

つまり、来期に見込まれている利益の回復は、本業が強くなることによる回復とは別物である。ここを混同すると、決算数値の見え方を取り違えることになる。

キャッシュフローは落ち込んでいない。2025年12月期の営業活動によるキャッシュ・フローは255億円で、前期の112億円から大きく増えた。投資活動によるキャッシュ・フローは▲1億円にとどまり、会社の開示ではフリー・キャッシュ・フローは254億円のプラスとなっている。現金及び現金同等物の期末残高は646億円である。

その一方で、株主還元は利益を上回った。2025年12月期の1株当たり配当は104円、配当金総額は77億円で、当期純利益36億円の2倍を超えている。2026年12月期の予想配当は106円と、さらに増える見込みだ。稼いだ利益で払う還元から、キャッシュと自己資本の厚みで払う還元に一時的に切り替わっている局面と読み取れる。

6. 販売先2社で売上の5割。国内と国際の温度差

もう一つ、この会社の構造を決めている数字がある。販売先の集中度だ。

2025年12月期の主な相手先別販売実績を見ると、PALTACへの販売が658億円で総販売実績の39.7%、あらたが168億円で10.2%を占める。上位2社で売上のほぼ半分だ。

日用品とヘルスケア商品を全国の店頭に届けるには卸を通すのが定石で、これは業界の標準的な形である。ただ、価格や販促の条件が2社との関係で大きく動くという意味でもある。粗利率51%を維持できるかどうかは、商品力だけでなくこの取引条件にも左右される。

セグメントも温度差が大きい。国内事業は売上高1,229億円で▲0.8%、セグメント利益139億円で▲39.9%。国際事業は売上高484億円で+3.4%と伸ばしたが、セグメント利益は8億円で▲36.3%だった。

国際事業の売上に対する利益率は2%に届かない。売上の3割弱を担いながら、利益への貢献はごくわずかという構図である。

国際事業の内訳では地域差がはっきりしている。米国は238億円で+12.1%、東南アジアは92億円で+8.4%と伸びた一方、中国は96億円で▲13.2%と落ちた。会社によれば、中国は発熱患者数の減少により額用冷却シート等の需要が落ち着き、2025年末の冬シーズンに温かい気候が続いたことでカイロの需要も落ち着いたという。東南アジアについては、出荷調整の解消とマレーシアでのマーケティング施策が効いたと説明している。

国内の内訳では、ヘルスケアが583億円で▲1.5%、日用品が508億円で+1.3%、カイロが61億円で+2.6%、通販が27億円で▲39.3%だった。会社は通販について、広告停止および定期購入解約等の影響で減収となり、自社通販サイトおよびコールセンターを通じた製品の販売を2025年12月末をもって終了したとしている。

販売チャネルを1つ閉じたぶん、卸経由の比重は上がる。2社集中はしばらく続く前提で見ておいたほうがいいだろう。

7. 筆者コメント

販売先の集中度と、地域別の売上増減を同時に見ると、この会社の利益がどこで決まっているのかが見えてくる。国内は2社の卸を通した棚の取り合いで、海外は気温である。どちらも自社の努力だけでは動かしにくい変数だ。

会社の説明に何度も出てくるのが、気温と天候だった。冬の寒さでカイロが売れ、暖冬で売れない。発熱患者が減れば冷却シートが動かない。ブランド力の話をしているつもりで読み進めると、最後に出てくるのは気象条件である。

これは弱点ではなく、この事業モデルの性質だ。だから業績を四半期単位で追うと、経営の巧拙と天候の当たり外れが混ざってしまう。年単位、できれば数年単位で粗利率と販管費率を並べたほうが、経営が何をしたかは読み取りやすい。

そして今は、費用と特別損失で沈んだ利益がどこまで戻るのかを試している期間にあたる。決算資料を開くときは、純利益の増減率ではなく営業段階の比率に目を落とすことをおすすめしたい。

参考資料

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石津 大希