9月は、年金生活者支援給付金の請求のはがきが届く時期にあたります。届いた封筒をきっかけに、ほかにも受け取れるものがあるのではないかと気になる方もいます。
60歳を過ぎてから受け取れる公的なお金は、年金本体のほかに9つほど並びます。ただ、それらは横一列に同じ性質で並んでいるわけではありません。何もしなくても効き続けるものと、自分が申し出なければ一円も動かないものが混ざっています。
ご相談では、加入しているものや受け取れるものを一覧にしてみたというお声を数多くいただきます。そこで手が止まるのは、一覧のどれが自分の申し出を待っているのかまでは、名前の並びから見えてこないからです。この記事では、9つを自動で効く側と動かないと効かない側に仕分けながら並べていきます。
なお、60歳・65歳以上が受け取れる公的な給付金に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。
1. 60歳以降に受け取れるお金、自動で受け取れるもの・アクションが必要なものに仕分けるとどうなるのか
老齢年金、障害年金、遺族年金といった公的な仕組みは、暮らしを支える柱になります。ただ、受け取る資格ができた時点で入金が始まるわけではありません。
9つの制度をひととおり見渡しておきたい場合は、【2026年最新】60歳・65歳以上がもらえるお金・公的給付金一覧!年金上乗せ・雇用保険・医療介護の申請漏れを防ぐ完全ガイド!「知っておきたい」お金の仕組みを徹底解説にまとめています。
支給を動かすのは、受け取る本人が出す「年金請求書」という書類です。書類が届いて審査に進み、そこで支払いの手続きが立ち上がります。
給付金や補助金についても、用意するのが国か自治体かを問わず、この立ち上がり方は変わりません。受け取る側が申請を出すところが起点に置かれています。
期限を過ぎてから出した、添付書類が揃っていなかった。こうしたつまずきがあると、受け取れる額が目減りすることも、支給そのものにたどり着かないこともあります。
そこで、9つを仕分ける物差しを一つ決めておきます。役所や保険者の側が対象を把握していて案内が届くものは、自動で効く側に寄ります。逆に、要件に当てはまっているかどうかを役所の側が知り得ないものは、自分が申し出なければ動きません。以下の章では、この物差しを制度ごとに当てていきます。
2. 【老齢年金】上乗せの2つは、どちらも自分から申し出て動かすものなのか
老齢年金を受け取っている人が一定の要件に当てはまると、本体の年金に足して受け取れる仕組みが2つあります。仕分けてみると、片方は役所の側が把握しにくく、もう片方は案内が届くことがある側に入ります。
2.1 年金に足される家族手当のような「加給年金」は、通知を待っていて届くものなのか
加給年金が足されるのは、厚生年金に20年以上加入していた人が65歳を迎える場面です。そのとき、生計を維持している年下の配偶者や子がいることが前提になります。
役割としては、年金の側の家族手当にあたります。配偶者や子の状況によって当てはまり方が変わるため、自分から申し出る側に入ります。
加給年金の対象になる期間と家族の条件はどうなっているのか
上乗せが決まるかどうかは、下に挙げた期間と、家族の状況の両方で見ます。家族の側の条件は、65歳未満の配偶者、18歳到達年度の末日までの間の子、1級・2級の障害の状態にある20歳未満の子。このいずれかがいることです。
- 厚生年金加入期間が20年以上ある人は、65歳到達時点(または定額部分支給開始年齢に到達した時点)
- 65歳到達後(もしくは定額部分支給開始年齢に到達した後)に被保険者期間が20年以上となった人は、在職定時改定時、退職改定時(または70歳到達時)
なお、20年に届いていない場合でも読み替えが効くことがあります。共済組合等の加入期間を除いた厚生年金の被保険者期間が、40歳(女性と坑内員・船員は35歳)以降で15年から19年あるときです。
ただし、止まる場面もあります。配偶者の側が被保険者期間20年以上の老齢厚生年金や、組合員期間20年以上の退職共済年金を受け取る権利を持っているとき。もしくは、障害厚生年金、障害基礎年金、障害共済年金などをすでに受けているとき。これらに当たると、配偶者加給年金額は支給停止の扱いになります。
2026年度に加算される加給年金の額はいくらなのか
2026年度の年額は、次のとおりです。
- 配偶者:24万3800円
- 1人目・2人目の子:各24万3800円
- 3人目以降の子:各8万1300円
この額に重ねて、配偶者の加給年金額には特別加算額が付きます。幅は3万6000円から17万9900円で、どこに当たるかは老齢厚生年金を受給中の人の生年月日で決まります。
配偶者が65歳を迎えたら「振替加算」へ自動で移るのか
加給年金の区切りは、配偶者が65歳を迎えた時点です。とはいえ、そこで丸ごと消えるとは限りません。一定の要件を満たしていれば、以後は配偶者自身の老齢基礎年金へ「振替加算」という形に姿を変えて、一定額が引き継がれます。
受け取る人が本人から配偶者へ移るため、一覧をつくるときは世帯の欄にまとめて書いておくと追いかけやすくなります。
2.2 世帯の課税状況で決まる「老齢年金生活者支援給付金」は、どこまで自動で進むのか
老齢基礎年金を受け取っている人のなかで、所得や世帯の収入が一定の基準を下回っている。老齢年金生活者支援給付金は、そこへ暮らしの底上げとして支給されるお金です。
年金本体とは別の法律に基づく「給付金」という位置づけになります。判定に使う課税の情報は役所の側が持っているため、対象になり得る人にはがきが届くことがあります。ただし、届いたはがきを返送するところは自分の手で行うことになります。
老齢年金生活者支援給付金に当てはまるのはどんな世帯なのか
次の3つをすべて満たすことが求められます。
- 65歳以上の老齢基礎年金の受給者であること
- 同一世帯の全員が市町村民税非課税であること
- 前年の公的年金等の収入金額とその他の所得との合計額が、昭和31年4月2日以後生まれの人は80万9000円以下、昭和31年4月1日以前生まれの人は80万6700円以下であること
ここで数える3つめの収入金額から、障害年金や遺族年金といった非課税収入は外れます。そして、この基準をわずかに超えた層にも受け皿が置かれています。昭和31年4月2日以後に生まれた人で80万9000円を超え90万9000円以下、昭和31年4月1日以前に生まれた人で80万6700円を超え90万6700円以下。ここに入る人へ支給されるのが「補足的老齢年金生活者支援給付金」です。
2026年度の給付基準額と、10月から変わる所得の基準を並べる
給付基準額は、2026年度で月額5620円。前年度からは3.2%の増額です。実際の給付額のほうは、この基準額に保険料の納付状況などを反映させて決まります。
所得の基準額のほうには、令和8年10月分からの変更が控えています。いつの時点で判定されるかによって見るべき数字が入れ替わりますので、新旧を並べて置いておきます。
老齢年金生活者支援給付金の所得基準額
- 令和8年9月分まで:80万9000円以下(昭和31年4月1日以前に生まれた方は80万6700円以下)
- 令和8年10月分から:82万6500円以下(昭和31年4月1日以前に生まれた方は82万4100円以下)
補足的老齢年金生活者支援給付金の対象となる所得の範囲
- 令和8年9月分まで:80万9000円を超え90万9000円以下(昭和31年4月1日以前に生まれた方は80万6700円を超え90万6700円以下)
- 令和8年10月分から:82万6500円を超え92万6500円以下(昭和31年4月1日以前に生まれた方は82万4100円を超え92万4100円以下)
給付額は納付済期間と免除期間からどう組み立てられるのか
次の2つを足した額が、月々の給付額になります。
- 保険料納付済期間に基づく額(月額)は、5620円に、保険料納付済期間を被保険者月数480月で割った割合をかけたもの
- 保険料免除期間に基づく額(月額)は、1万1768円に、保険料免除期間を被保険者月数480月で割った割合をかけたもの
保険料免除期間のほうにかける金額は固定ではなく、毎年度の老齢基礎年金の額の改定に合わせて動きます。つまり給付額を決めているのは自分の納付記録であって、基準額の月額5620円がそのまま振り込まれるわけではありません。
3. 【雇用保険】働くシニアの3つは、どの窓口へ何を出すと動きだすのか
次は、働き続ける人の側に関わる給付金です。シニアの就労を支える仕組み自体は整ってきました。それでも、60歳を境に収入が下がっていく流れは残っています。
年齢階層別の平均給与を、国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」で追ってみます。50歳代後半は男性735万円・女性356万円。そこから60歳代前半で男性604万円・女性294万円、60歳代後半では男性472万円・女性240万円と下りていきます。就職活動にしても就労の継続にしても、若い頃と同じ調子で進むとは限らないところです。
そこで、雇用保険に関わる手当や給付金を3種類取り上げます。この3つはいずれもハローワークが窓口になり、勤務先を通す手続きが混ざる点で、年金の2つとは動かし方が違います。
3.1 早く再就職した人に足される「再就職手当」は、こちらから申し出るものなのか
再就職手当が置かれているのは、早い再就職を後押しするためです。失業から再就職まで、または失業から事業開始までにかかった期間が短いほど、受け取れる額は大きくなります。
再就職手当を受けられるのはどういう場合なのか
- 対象になるのは、雇用保険受給資格者で基本手当の受給資格がある人
- 支給されるのは、対象者が雇用保険の被保険者となる、または事業主となって雇用保険の被保険者を雇用する場合で、基本手当の支給残日数(就職日の前日までの失業の認定を受けた後の残りの日数)が所定給付日数の3分の1以上あり、一定の要件に該当するとき
再就職手当の額は残日数の割合でどこまで変わるのか
額を左右するのは、就職等をする前日までの失業認定を受けた後の基本手当の支給残日数です。この残日数に応じて給付率が動きます。計算した結果の1円未満は切り捨てになります。
- 所定給付日数の3分の1以上の支給日数を残して就職した場合は、支給残日数の60%
- 所定給付日数の3分の2以上の支給日数を残して就職した場合は、支給残日数の70%
就職が決まったことをハローワークへ届けなければ、この手当の話は始まりません。なお、再就職手当を受け取ったあと再就職先で6カ月以上雇用され、その6カ月間の賃金が離職前より少ない場合は、「就業促進定着手当」の対象になります。
3.2 賃金が下がっても働き続ける人の「高年齢雇用継続給付」は、誰が手続きをするのか
60歳以上65歳未満の人が働き続けていて、賃金が60歳到達時より下がってしまった。高年齢雇用継続給付は、そこに支給される給付金です。
高年齢雇用継続給付に当てはまる人の条件を並べる
- 対象になるのは、雇用保険の被保険者期間が5年以上ある60歳以上65歳未満の雇用保険の被保険者
- 支給されるのは、賃金が60歳到達時の75%未満となった状態で働き続ける場合
高年齢雇用継続給付の支給率は要件を満たした時点でどう分かれるのか
賃金額に対してどこまで出るかという上限は、10%相当額に置かれています。ただし、高年齢雇用継続給付の支給要件を2025年3月31日以前に満たす人については、この上限が15%になります。
厚生年金に加入したまま老齢年金を受け取り、そこへ高年齢雇用継続給付が重なる場合は、止まる分が二重になります。在職による年金の支給停止に加えて、最大で標準報酬月額の4%に相当する額が支給停止に回るためです。支給要件を2025年3月31日以前に満たす人については、ここが6%になります。
この給付は、勤務先が手続きを代わりに行う形が一般的です。ただ、勤務先が制度を案内してくれるかどうかは職場によって差があるため、対象になり得ると思ったら自分から尋ねる形になります。
3.3 65歳以上で離職した人の「高年齢求職者給付金」は、一括で受け取れるのか
65歳以上の人が失業した場面に向けて用意されているのが、高年齢求職者給付金です。
高年齢求職者給付金を受けられるのはどういう場合なのか
- 対象になるのは、高年齢被保険者(65歳以上の雇用保険加入者)で失業した人
- 支給されるのは、離職の日以前1年間に被保険者期間が通算して6カ月以上あり、かつ失業の状態にある人。失業の状態とは、離職し、就職したいという積極的な意思といつでも就職できる能力があり、積極的に求職活動を行っているにもかかわらず就職できない状態を指す
高年齢求職者給付金の日数は被保険者期間でどこで区切られるのか
支給額は、被保険者であった期間の長さで分かれます。
- 被保険者であった期間が1年未満:30日分の基本手当相当額
- 被保険者であった期間が1年以上:50日分の基本手当相当額
65歳未満が受け取る失業手当は4週間ごとに失業認定を受けてから給付されますが、この給付金は一括で支給されます。ハローワークで求職の申し込みをしたところが起点になるため、離職しただけでは動きません。
4. 【医療・介護・生活】4つの軽減制度のうち、案内が届くのはどれなのか
60代、70代と進むにつれて、家計に重く乗ってくるのが医療費と介護費用です。公的医療保険や介護保険には、上限を設ける機能や払い戻しの仕組みが備わっています。この4つは、案内が届く側と、届かない側が入り混じります。
4.1 高くなった月の医療費を戻す「高額療養費制度」は、窓口で自動的に止まるのか
その月の初日から末日までにかかった医療費の自己負担額を数え、年齢や所得に応じて置かれた自己負担限度額と比べます。限度額を上回った分が、後から払い戻される仕組みです。
一般的な所得層、つまり70歳未満で年収約370万〜約510万円の区分だと、ひと月の自己負担限度額は「約8万5800円+(医療費から28万6000円を引いた額)の1%」という式が基本の形になります。
事前の手続きをしないままだと、退院時に窓口で大きな額を立て替えることになり、払い戻しは3〜4カ月後になります。2026年現在は、マイナ保険証を使うか、事前に「限度額適用認定証」を申請しておくことで、窓口での支払いを最初から上限までに抑えられます。窓口で自動的に止まる形にしておくには、その前にひと手間が要るということです。
4.2 介護の負担に上限を置く「高額介護サービス費」の対象から抜けるものを並べる
介護保険のサービスを使って1カ月に支払った自己負担額(1割から3割)を合計し、所得に応じて置かれた上限と比べます。上限からはみ出た分が払い戻される、という仕組みです。
取り違えが起きやすいのは、どこまでが対象なのかという線です。介護施設での食費、居住費(部屋代)、日常生活費。それに特定福祉用具購入費と住宅改修費。これらはこの計算に一切入りません。
上限があるから施設に入っても月々の負担は小さく収まる、と受け取っていると、対象外の食費や居住費が毎月10万円以上乗ってきて、資金が回らなくなる原因になります。一覧に書くときは、上限のある部分と、上限の外にある部分を分けて書いておくと見誤りにくくなります。
4.3 医療と介護を世帯で合わせる「高額医療・高額介護合算療養費制度」の案内が届かない場合を確認
毎年8月1日から翌年7月31日までを1年間と区切り、その間にかかった医療費と介護費用の自己負担額を世帯単位で足し上げます。その合計が基準額を超えたときに払い戻しを受けられる、という制度です。
数え方が年間単位のため見落とされやすい制度ですが、対象になる世帯へは原則として医療保険者から案内が届きます。届かない場面もあります。計算期間の途中で75歳を迎えて後期高齢者医療制度へ移ったとき、あるいは退職にともなって会社の健康保険から国民健康保険へ切り替わったときです。こうしたケースではデータが分かれてしまい、案内が来ないことがあります。過去の保険者へ自分で申請して合算の手続きを取らなければ、時効(2年)で消えてしまう扱いです。
つまりこの制度は、ふだんは自動で効く側にいて、保険が切り替わった年だけ動かないと効かない側へ移る、という性質を持っています。
4.4 住民税非課税世帯への「臨時給付金・自治体支援」は、判定でどこを見られるのか
住民税非課税世帯に向けた臨時給付金が出ることがあります。物価の高騰への対応という名目で、政府が出す場合も自治体が出す場合もあり、額は7万円や10万円です。
その時々の補正予算や地方交付金による一時的なものです。自治体が課税の情報から対象を絞って案内を送る形が多く、その点では自動で効く側に近くなります。
判定で分かれ目になるのは、扶養の扱いです。住民税が課税されている人(別居の家族などを含みます)の税法上の扶養親族等だけで構成されている世帯は、世帯分離をして住民票の上では非課税の単身世帯になっていたとしても、給付の対象からは外されます。効いてくるのは住民票の世帯の状況ではなく、税法上の扶養の状況のほうだということです。
5. 2025年の年金制度改正で、仕分けの前提がどう変わるのかを確認
「年金制度改正法」が成立したのは2025年6月です。掲げられたねらいの一つが、働き方も家族の形も多様になった実態に、制度の側を合わせていくことでした。
この改正では、いわゆる「106万円の壁」の撤廃に関わる社会保険の加入要件の拡大に加えて、遺族年金についての見直しも入りました。いま作った仕分けが数年後にも使えるかどうかは、この改正の中身に左右されます。
5.1 遺族厚生年金の男女差は、どのように整えられるのか
遺族厚生年金のしくみは、いまのところ受け取る人の性別によって扱いが分かれています。
現行制度で女性と男性に置かれている区分を並べる
- 女性
- 30歳未満で死別:5年間の有期給付
- 30歳以上で死別:無期給付
- 男性
- 55歳未満で死別:給付なし
- 55歳以上で死別:60歳から無期給付
この差をならすための見直しがいつから動くのか。予定されている施行は2028年4月です。
2028年4月から予定されている要件はどこまで具体化したのか
誰が原則5年間の有期給付の対象に入るのか。その線引きは、男女それぞれについて細かいところまで定められています。
- 女性は、施行の直後(2028年4月)に原則5年間の有期給付の対象になるのが、18歳年度末までのこどもがいない、2028年度末時点で40歳未満の人。すでに遺族厚生年金を受け取っている人や、2028年度に40歳以上になる女性は、見直しの影響を受けない
- 男性は、新たに5年間の有期給付を受けられるようになるのが、18歳年度末までのこどもがいない60歳未満の人
- こどもがいる場合は、18歳年度末までのこどもがいるあいだは現行制度と同じで、見直しの影響はない。こどもが18歳になった後、さらに5年間は増額された有期給付および継続給付の対象となる
5.2 有期給付と継続給付は、どんな形で上乗せされるのか
配慮が必要な場合に向けた給付のほうも、いくら出すのか、どこまでを対象にするのかが具体化されました。
- 有期給付の増額については、新たに「有期給付加算」が上乗せされ、現在の遺族厚生年金の額の約1.3倍となる
- 継続給付(5年目以降の給付継続)の要件については、5年間の有期給付が終わった後も、障害の状態にある人や収入が十分でない人は、引き続き増額された遺族厚生年金を受け取れる。単身の場合、就労収入が月額約10万円(年間122万円)以下の人は継続給付が全額支給され、おおむね月額20〜30万円を超えると全額支給停止となる
見直しの対象には「遺族基礎年金」も入っています。これまでは、同一生計にある父または母が遺族基礎年金を受け取れないケースがありました。2028年4月からは、そうした場合でもこどもが単独で遺族基礎年金を受け取れる形に改まります。
5.3 在職老齢年金の減額の基準額はいくらになったのか
働きながら年金を受け取ると年金が減額される、在職老齢年金というしくみがあります。これについては就労の意欲を妨げているという指摘が重なり、減額される基準額が65万円へ引き上がりました。
公的な上乗せで足りない部分を自分で用意する場合は、値動きのある方法には価格変動リスクがあり、元本割れの可能性もあります。一覧をつくるときは、公的な制度の欄と、自分で用意した分の欄を分けておくと、性質の違うものを混ぜずに眺められます。
6. 著者からひとこと:一覧にしたあと、申し出が要る側に印を付ける
ここまで、9つの制度を自動で効く側と動かないと効かない側に仕分けてきました。一覧をつくること自体が目的ではなく、そのうちどれに自分の手が要るのかを絞り込むための作業です。
7. 棚卸しのときに寄せられる3つの疑問に答える
7.1 Q. 失業手当を受け取っている期間は、配偶者の社会保険の扶養から外れるのか
A. 見るのは失業手当(基本手当)の日額です。ここで引っかかりやすいのが、税と健康保険で扱いが揃っていない点です。失業手当は非課税ですから所得税の計算には入りません。ところが健康保険の扶養の審査のほうは、これを収入として厳しく数えます。線引きは日額で、60歳未満は3612円(年収換算130万円未満)、60歳以上は5000円(年収換算180万円未満)。この線を超える日額で手当を受け取っているあいだは配偶者の扶養から外れ、国民健康保険へ自分で加入して保険料を納めることになります。
7.2 Q. 給付金の案内が届かないのは、対象から外れているという意味なのか
A. そうは言い切れません。たしかに年金生活者支援給付金のように、はがきが届くものはあります。一方で、加給年金、高年齢雇用継続給付、失業手当。これらはどれも自己申告(申請主義)で動く側です。条件に当てはまっていたとしても、役所から案内が来ることはありません。年金事務所やハローワークへ自分で足を運び、対象になるかどうかを尋ねる。その動きがどうしても要ります。
7.3 Q. 特別支給の老齢厚生年金と失業手当は、どちらを選ぶと総額が多くなるのか
A. ご自身の年金額と、失業手当の日額・給付日数を突き合わせて計算しない限り、どちらとは言えません。分かれ目になるのは現役時代の給与です。給与が高く失業手当の日額も高くなる人は、ハローワークで手続きをしたほうが手元に残ります。反対に、給与が低めで年金の加入歴が長い人だと、失業手当を受けずに年金を受け取り続けたほうが総額で上回ることもあります。退職の前に、最寄りの年金事務所で年金見込額を出しておき、あわせてハローワークの失業手当の計算ツールなどで見積もりを取っておくとよいでしょう。
【2026年最新】「住民税非課税世帯」を対象とした「優遇措置」8選 《年金・給与》年収いくらで該当するのか境界線も見ておこう「収入ゼロでも給付金が届かない?」5つの盲点を徹底解説では、世帯の課税の区分がどこで決まるのかを取り上げています。
8. 【独自試算】申し出ないと動かない制度だけを足すと、1年でどれくらいの規模になるのか
仕分けが済むと、次に気になるのは「動かないと効かない側」を放っておいた場合の規模です。そこで、記事に出てきた金額のうち、年額が制度として決まっているものだけを取り出して足してみます。医療費の払い戻しは実際にかかった額に左右されるため、この合計には入れません。
前提条件
- 足すのは、金額が制度として決まっている3つに限る。配偶者加給年金額、生年月日で決まる特別加算額、老齢年金生活者支援給付金の給付基準額
- 配偶者加給年金額は2026年度の年24万3800円で据え置きとして置く(実際は毎年度改定される)
- 特別加算額は3万6000円から17万9900円という幅があるため、下限と上限の2通りで置く
- 老齢年金生活者支援給付金は2026年度の給付基準額である月額5620円が12カ月続くものとして置く(実際は納付済期間と免除期間から計算される)
- 高額療養費、高額介護サービス費、合算療養費、雇用保険の3つの給付は、実際の医療費や賃金・日数によって額が変わるため合計から外す
- この3つが同時に当てはまるとは限らない。加給年金は厚生年金20年以上、給付金は世帯全員が市町村民税非課税という要件で、重ならないことも多い。合計は「制度ごとの年額を並べて足した規模」として読む
①年額が決まっている3つを、そのまま並べた場合
- 配偶者加給年金額は、年24万3800円
- 特別加算額は、年3万6000円から17万9900円
- 老齢年金生活者支援給付金は、月5620円で1年分が6万7440円
②3つを足した年額のおおまかな目安
- 特別加算額が下限の場合は、24万3800円+3万6000円+6万7440円=34万7240円
- 特別加算額が上限の場合は、24万3800円+17万9900円+6万7440円=49万1140円
③臨時給付金が1回あった年に、それを加えた場合
- 7万円の臨時給付金を加えると、下限の組み合わせで41万7240円
- 10万円の臨時給付金を加えると、上限の組み合わせで59万1140円
年額が決まっているものだけを並べても、1年で約34万7000円から約49万1000円、臨時給付金が1回あった年なら約41万7000円から約59万1000円という規模になります。いずれも上の前提で置いた目安であり、3つが同時に当てはまる人は多くありません。自分の場合にどれが残るのかは、加入記録と世帯の課税状況を持って、年金事務所やお住まいの市区町村の窓口で確認していただくのが確かです。
9. 【監修者コメント・熊谷良子】制度ごとの年額と、足し合わせた合計は、確からしさの性質が違う数字
この記事に出てくる制度ごとの年額と、それらを足し合わせた合計は、確からしさの性質が異なる数字です。年24万3800円や月5620円は、制度の仕組みから決まっている金額で、要件に当てはまるかどうかを確かめれば見通しが立ちます。足し合わせた合計のほうは、複数の要件が同時に当てはまると仮定して組んだ推計値です。この2つを同じ重みで並べないほうが、判断を誤りにくいように思います。
適用の条件も添えておきます。配偶者加給年金額の年24万3800円は、厚生年金の加入期間が20年以上あり、65歳到達時に生計を維持している65歳未満の配偶者がいる人の金額です。一方の老齢年金生活者支援給付金は、同一世帯の全員が市町村民税非課税であることが要件に入っています。ですから、この2つが同じ年に同じ世帯で成り立つ場面は限られます。試算の合計は、制度の規模を並べて眺めるための数字と受け取っていただければと思います。
仕分けという観点でもう一つ添えておきたいのが、月額5620円は2026年度の給付基準額であって、実際に届く額ではないという点です。保険料の納付済期間と免除期間に応じて計算されますので、まずねんきん定期便でご自身の月数を確かめていただくのがよいと思います。所得の基準額は令和8年10月分から変わりますし、制度は今後も見直される可能性があります。要件の当てはめについては、年金事務所やハローワーク、お住まいの市区町村の窓口で確認したうえで進めていただくのが確かです。


