4. 意向確認書、登録前後に見落としやすい3つの注意点
意向確認書をめぐっては、45日ルール以外にも見落としやすいポイントが3つあります。
4.1 ①不在で受け取れなかった場合はどうなる?
簡易書留は郵便局員からの手渡しが原則のため、不在等により書類自体を受け取れなかった場合は「意向確認ができなかった」ものとして扱われ、口座が勝手に登録されることはありません。ただし、公金受取口座の登録機会そのものを逃すことになるため、不在票が入っていた場合は早めに再配達を依頼しましょう。
4.2 ②不同意申出書をなくしたらどうする?
不同意申出書は再発行できませんが、任意の様式で提出できる場合があります。紛失した際は速やかに「意向確認書照会専用フリーダイヤル」へ相談しましょう。
4.3 ③口座を変更したら年金の振込先も自動的に変わる?
すでに公金受取口座を登録している方が、その後に口座を変更した場合は特に注意が必要です。日本年金機構によると、公金受取口座を変更しても、年金の振込先口座は自動的には変更されません。変更後の口座で年金を受け取りたい場合は、公金受取口座の変更手続きとは別に「年金受取機関変更届」を提出する必要があります。「同じ口座を紐づけているのだから自動で連動するはず」と思い込みやすい部分だけに、見落としがちな落とし穴といえます。
5. 秋にはもう一つの通知も|「緑の封筒」年金生活者支援給付金と便乗詐欺への警戒
9月から秋にかけて届く書類は、意向確認書だけではありません。年金に上乗せして支給される「年金生活者支援給付金」の請求書も、この時期に届く代表的な書類のひとつです。
年金生活者支援給付金は、公的年金等の収入が一定基準以下の方に、年金へ上乗せして支給される恒久的な制度です。受給している基礎年金の種類に応じて「老齢」「障害」「遺族」の3つに分かれています。
2026年度は物価上昇を反映して3.2%の増額改定となり、老齢年金生活者支援給付金の基準額は月額5450円から5620円へ、170円引き上げられました。基準額をもとにすると、年間の給付額は6万7440円となり、2025年度の6万5400円から年間2040円の増額です。ただし、この金額はあくまで基準額であり、保険料の納付済期間や免除期間などに応じて個別に算出されるため、対象者全員が一律に受け取れるわけではありません。
この給付金は対象者に自動的に支給されるものではなく、原則として請求手続きが必要です。新たに支給対象となる可能性のある方には、日本年金機構から毎年9月上旬より順次、請求書が入った「緑色の封筒」が届きます。請求書を「後で手続きしよう」と放置してしまうと、請求した月の翌月分からの支給となり、受け取れるはずだった期間の給付を原則としてさかのぼって受け取ることができません。
5.1 特殊詐欺被害が半年で618億円急増|年金手続き時期を狙う「便乗詐欺」にも警戒を
- 2026年1〜6月の特殊詐欺の認知件数:2万2031件(前年同期比+3408件)
- 同期間の被害額:1816億2000万円(前年同期比+618億8000万円)
- 2025年、65歳以上の高齢者が占める被害件数の割合:51.3%(1万4273件)
- 同、被害額の割合:59.2%(841億1000万円)
今回の「公金受取口座登録の意向確認書」のように、実際に公的機関から書類が届くタイミングでは、それに便乗した連絡にも警戒が必要です。日本年金機構や市区町村の職員が、電話や訪問で口座の暗証番号を聞いたり、ATMの操作を求めたりすることはありません。「手続きをしないと年金が止まる」などと不安をあおられた場合は、その場で対応せず、家族や公的な相談窓口に確認しましょう。
メールやSMSにも警戒が必要です。日本年金機構の「ねんきんダイヤル」などに寄せられた不審な電話・メールに関する問い合わせは、2025年度に電話2349件、メール678件にのぼっています。「マイナンバー情報の登録が未完了」などとして偽サイトへ誘導する手口もあるため、記載されたリンクを安易に開かず、届いた連絡に少しでも不審を感じた場合は、公式サイトで確認した窓口に問い合わせましょう。
6. まとめにかえて
9月から秋口にかけては、「公金受取口座の意向確認書」をはじめ、受給額の上乗せにつながる「年金生活者支援給付金(緑の封筒)」など、年金受給者の暮らしに直結する重要なお知らせが相次いで届く季節です。
「難しいから」「よく分からないから」と確認を後回しにして放置してしまうと、もらえるはずの給付金を逃したり、意図しない口座登録が行われたりする原因になりかねません。
一方で、こうした公的通知が届くタイミングを狙った「便乗詐欺」や「不審な偽SMS」への警戒も不可欠です。
「届いた書類にはしっかり目を通し、内容を確認する」「電話やメールでの口座情報・暗証番号請求には絶対に応じない」という2つの姿勢を徹底し、正しく安全に公的制度を活用していきましょう。
公的年金や給付金の制度は、自ら正しく知って手続きを行った人がしっかりと恩恵を受けられる仕組みになっています。届いた書類を「よく分からないから」と後回しにせず、まずは中身を確認する習慣をつけておきたいところです。
特にお知らせが集中する9月・10月は、ご家族同士で「何か年金機構から封筒届いてない?」と声を掛け合う絶好の機会でもあります。離れて暮らすご両親がいる方は、この機会に一度連絡を取ってみてもよいかもしれません。
公的機関が電話で金融機関の暗証番号やATMの操作を求めることは絶対にありません。不安や不審を感じたら、その場で判断せず、公式窓口(#9110や専用ダイヤル)へ相談しましょう。届いた書類をきっかけに、ご自身とご家族の年金生活を見直すきっかけにしていただければと思います。
参考資料
- 厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」
- 日本年金機構「『ねんきん定期便』の様式(サンプル)と見方ガイド」
- 日本年金機構「令和8年8月から年金振込口座の公金受取口座登録に関する意向確認書をお送りします」
- デジタル庁ニュース「公金受取口座の特例制度が2026年8月スタート。年金受給者の給付金等の受取が簡単に」
- 警察庁「令和8年上半期における特殊詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)」
池上 翠
