3. 社会保険料は「安いほうがお得」ではない?将来を支える3つの制度
ここまでの仕組みを知ると、「春先はできるだけ残業を抑えて、社会保険料を安くした方がお得かもしれない」と考える方もいるかもしれません。毎月の手取り額を増やすという意味では、たしかに一つの考え方です。
しかし、社会保険料は単なる税金のようなコストではありません。「いざという時の保障」を買っている大切な保険料でもあります。
3つ目のポイントとして、社会保険料が下がる(標準報酬月額が下がる)ということは、日々の手取りが増える代わりに、将来や万が一の時に受け取れるお金も減ってしまうことを意味します。社会保険料の負担額に連動して、将来の給付額が変動する主な制度は以下の3つです。
給付と負担のリアルな関係3/4
LIMO編集部作成
3.1 厚生年金
概要: 老後に受け取る公的年金
標準報酬月額が下がった場合の影響: 将来もらえる年金の受給額が少なくなります。
3.2 傷病手当金
概要: 病気やケガで休職した際の所得補償
標準報酬月額が下がった場合の影響: 休職中の給付額(日額)が減ります。
3.3 出産手当金
概要: 産休中(産前産後休業)の所得補償
標準報酬月額が下がった場合の影響: 産休中の給付額(日額)が減ります。
※傷病手当金と出産手当金は、おおむね「支給開始日以前の12ヶ月間の標準報酬月額の平均額 ÷ 30日 × 2/3」で計算されます。
4. 男女で年額約170万円の差?最新データに見る平均給与の背景
厚生年金の年金額を考えるうえでは、現役時代の報酬にも注目しておきたいところです。厚生労働省の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から、社会保険料のベースとなる「標準報酬月額」などの平均を見ると、以下のような実態が浮かび上がります。
令和6年度末の標準報酬月額の平均は、次のとおりです。
- 全体:33万1936円
- 男性:37万7056円
- 女性:26万6974円
男女の差は月額11万82円となっています。
また、令和6年度の標準賞与額1回当たりの平均は、次のとおりです。
- 全体:46万282円
- 男性:54万2691円
- 女性:33万2213円
男女の差は21万478円です。
さらに、一人当たり標準報酬額を総報酬ベースの年額で見ると、
- 全体:469万1345円
- 男性:538万3938円
- 女性:368万4637円
男女間で年間約170万円もの報酬差があることからもわかるように、将来の年金額に男女で差が生じる背景を見る際には、この現役時代の給与や賞与の違いにも目を向ける必要がありそうです。単なる「負担の大小」だけに囚われず、自分がどのような保障にいくら払っているのか。
そして、自分の現在の「標準報酬月額」が将来の年金にどう結びつくのか。新しい標準報酬月額が反映される9月・10月の給与明細を機に、ご自身の状況を一度じっくり確認してみてはいかがでしょうか。
5. まとめにかえて
今回は、これから届く9月の給与明細で確認したい社会保険料の「定時決定」の仕組みと、将来の給付への影響について解説しました。春の給与をベースに1年間の社会保険料が決まること、そして保険料の金額は老後の年金や休職時の手当に直結していることがお分かりいただけたかと思います。
給与明細から引かれている金額を見るとため息が出てしまうこともありますが、それはご自身と家族の未来を守るための大切なお金です。制度の仕組みを正しく理解し、安心できるライフプラン作りに役立てていきたいですね。
参考資料
村岸 理美