2027年3月期1Qで動いたのは水産だった

直近の四半期では、通期とは違う顔が出ている。

2027年3月期1Qの売上高は2,573億円で、前年同期の2,255億円から14.1%の増収。営業利益は124億円で前年同期の103億円から21.0%増、当期純利益は74億円で前年同期の65億円から14.3%増となった。

セグメント別の伸びを見ると、牽引役は水産事業である。売上高1,077億円で前年同期比24.6%増、営業利益54億円で72.6%増。前期に立ち上がった漁撈と養殖の改善が、四半期単位でもそのまま続いている。

対する食品事業は売上高1,382億円で7.4%増だが、営業利益84億円は4.2%の減益だった。売上の規模では依然として食品が水産を上回るが、利益の伸びは逆になっている。

ファイン事業も見逃せない。1Qの売上高39億円に対し営業利益5.2億円で、営業利益率は13.51%。通期実績の4.94%から水準がまるで違う。規模が小さいぶん四半期ごとの振れは大きいが、この事業が薄利ではないことがわかる。

通期予想は売上高1兆円(前期比7.4%増)、営業利益425億円(5.1%増)、当期純利益290億円(5.4%増)。売上高が初めて1兆円の大台に乗る計画だ。1Q時点の進捗率は営業利益で29.3%、売上高で25.7%となる。

もっとも、経常利益の予想は430億円で前期比0.4%の減益となっている。営業増益を見込みながら経常段階では横ばいを下回る計画で、金融費用や持分法の見立てを慎重に置いた予想と考えられる。

販売先の1社集中と、売上1兆円へ向けた投資の重さ

1兆円という目標には、それを支える設備と、それを買う相手が必要になる。両方に注目したい数字がある。

まず販売先だ。会社開示によると、2026年3月期の主要な販売先である株式会社SCIへの売上は1,232億円で、総販売実績の13.2%を占めた。前期は1,038億円・11.7%で、金額も比率も上がっている。

1社で1割を超える売上を持つ関係は、需要の安定という意味では強みだが、取引条件の変化に対する感度も上げる。チルド事業の好調と裏表の関係にある構造だと読み取れる。

次に投資である。2026年3月期の営業活動によるキャッシュ・フローは532億円の収入で、前期から129億円増えた。一方、投資活動によるキャッシュ・フローは614億円の支出で、前期から310億円も支出が膨らんでいる。

会社の説明では、この支出の中身は国内外の新工場建設を含む生産能力増強に向けた有形固定資産の取得431億円と、PESQUERA YADRAN S.A.等に係る子会社株式の取得190億円が主な要因だという。営業で稼いだ資金を上回る額を、工場と買収に投じた期だった。

足りない分は調達で埋めている。財務活動によるキャッシュ・フローは131億円の収入で、社債の発行による収入100億円と長期借入れによる収入408億円が入り、長期借入金の返済252億円と配当金の支払い92億円が出ていった。棚卸資産も2,243億円へ293億円増えている。

それでも還元は続いている。2026年3月期の年間配当は32円で7期連続の増配となり、配当性向は35.5%。水産・農林業の中央値31.0%を上回る水準だ。

ここに評価の難しさがある。工場を建て、養殖会社を買い、在庫を積み、そのうえで増配する。資金の使い道としては前向きだが、自己資本比率が43.64%から40.04%へ下がったこともまた事実だ。負債を使って成長を買う局面にあるのは明らかで、その投資が売上1兆円のあとにどれだけの利益率で戻ってくるかが、次の数期の焦点になる。

筆者コメント

売上1兆円という節目に、この会社はどんな姿で到達するのだろうか。

5期を並べると、売上高は3割強増えた。だがROEは9.62%、10.44%、10.24%、9.65%、9.54%と、ほぼ同じ帯のなかで動いている。規模は伸びたが、資本の効率は横ばいだ。

これは悪い話ではない。増えた資本を同じ効率で回せているなら、利益の絶対額は増える。実際、当期純利益は173億円から275億円へ伸びた。ただ、資本効率の水準そのものを引き上げる何かは、まだ数字に現れていない。

その何かが、いま建てている工場と買った養殖会社なのか、それとも規模の小さいファイン事業のような高収益領域なのか。中期経営計画で会社が掲げるのは「海外事業の成長」「養殖事業の高度化」「不採算事業のターンアラウンド」の3つだという。

決算資料を開くときは、売上高の大台よりも、セグメント別の営業利益率がどう動いたかを先に確かめてほしい。規模の話は数字が大きくてわかりやすいが、株主が受け取る価値は効率のほうに宿る。

参考資料

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石津 大希