8月の株主優待・配当の権利確定シーズンを通過し、個人投資家の視線は早くも9月の権利確定銘柄に移っています。
インナーウエアなど衣料品で知られるグンゼ<3002>もその一つで、9月30日を基準日とする中間期の株主優待の権利取り時期が近づいています。
株価は4日、前日比20円安(▲0.49%)の4,095円で取引を終えました。
同社が8月5日に発表した2027年3月期第1四半期決算では、営業利益が前年同期比87.6%増、四半期純利益は前年同期の赤字から黒字転換するなど、数字だけを見れば大幅な改善となりました。もっとも、その中身を見ると一過性要因の影響も小さくありません。
1. 営業利益87.6%増で黒字転換した2027年3月期1Q決算、ただし内訳には注意
グンゼが8月5日に発表した2027年3月期第1四半期(2026年4月1日〜6月30日)の連結決算は、次の内容でした。
- 売上高:313億6,700万円(前年同期比2.7%減)
- 営業利益:33億8,700万円(前年同期比87.6%増、営業利益率10.8%)
- 経常利益:34億1,900万円(前年同期比86.0%増、利益率10.9%)
- 四半期純利益:26億4,000万円(前年同期は14億7,300万円の四半期純損失から黒字転換)
営業利益・経常利益の増益(いずれも15億8,100万円)は、プラスチックフィルムにおける販売価格と原料価格の変動タイムラグによる利益の押し上げに加え、海外事業の収益改善、アパレル事業の構造改革の進捗によるものです。一方、四半期純利益の増益幅は41億1,300万円と、経常利益の増益幅を25億3,200万円ほど上回っています。
この差は、前期(2026年3月期1Q)に一時計上したアパレル事業の構造改善費用34億3,400万円という特別損失が今期は発生しなかった反動が大きいとみられます。純利益が黒字転換した背景には、本業の増益(営業利益ベースで87.6%増)に加えて、前期の特殊要因が剥落した効果が大きい点には注意が必要です。
なお、通期の業績予想(売上高1,320億円、営業利益88億円、経常利益84億円、純利益52億円)は期初予想のまま据え置かれています。
2. 稼ぎ頭「機能ソリューション事業」が支える収益構造、ただし一過性要因にも留意
グンゼは、機能ソリューション事業・メディカル事業・アパレル事業・ライフクリエイト事業の4セグメントを持ちますが、2027年3月期1Qの利益面で最も稼いでいるのは機能ソリューション事業です。
同事業は、飲料・食品向けのシュリンクフィルムやナイロンフィルム、半導体製造・EV電池向けの工業用品フィルムなどを手掛ける「プラスチック」と、OA機器向けのフッ素薄膜チューブ・ベルトや、半導体・医療分野向けの機能部品を手掛ける「エンジニアリングプラスチックス」の2本柱で構成されています。
2027年3月期1Qは売上高123億5,400万円(前年同期比7.3%増)、営業利益25億2,600万円(前年同期比59.7%増)、営業利益率20.4%となりました。売上高では全社の39%を占めるにとどまりますが、営業利益では58%を稼ぎ出しており、利益面での存在感は際立っています。
もっとも、この増益には販売価格と原料価格の変動タイムラグによる押し上げ効果が含まれており、原材料価格の動向次第で今後の利益水準は変動する可能性があります。
中東情勢の緊迫化を受けた原材料の駆け込み発注についても、大きな偏りが生じないよう受注量を調整したとしているものの、前倒しでの受注が一定程度発生しました。今回の増益の一部には、今後複数四半期にわたって同じペースで続くとは限らない一時的な要因が含まれている点には留意が必要です。
2.1 売上高で最大のセグメントはアパレル事業
売上高で最大のセグメントはアパレル事業(133億2,100万円、前年同期比9.8%減)で、営業利益は11億8,500万円と前年同期比226.7%増となりました。ブランド集約や価格改定などの集中特化戦略により販売数量は減少したものの、生産・物流拠点の集約化や間接部門合理化などにより収益性は改善しました。
前期の評価減在庫の販売が順調に進捗したことも、利益の押し上げにつながっています。この点も、在庫評価減の販売という一時的な要因を含んでいることを示しています。
残る2セグメントについては、メディカル事業が売上高29億2,500万円(前年同期比7.0%減)・営業利益3億1,500万円(同41.7%減)で、中国における高額医療規制や日中関係の悪化に伴う購入抑制の影響が続いています。ライフクリエイト事業は売上高30億5,600万円(前年同期比1.3%増)・営業利益3億2,100万円(同30.4%増)で、商業施設のリニューアル効果やスポーツクラブの不採算店舗削減が寄与しました。
3. 高い進捗率でも据え置かれた通期計画
1Qの実績を通期計画に対する進捗率でみると、営業利益は38.5%(33億8,700万円/88億円)、経常利益は40.7%、純利益は50.8%と、四半期の単純なペース(25%)を大きく上回っています。それにもかかわらず、通期計画は修正されていません。
アパレル事業は構造改革の進展に伴い、収益性が徐々に平準化していく見込みとしています。プラスチック事業も、原材料価格の動向次第で今後の利益水準が変動する可能性があります。
中期経営計画で掲げる利益目標についても、まずは今期の営業利益目標88億円の確実な達成を図る方針としています。1Qの高い進捗率をそのまま通期に当てはめられるかどうかは、これらの点を踏まえて判断する必要がありそうです。