公的年金は偶数月の15日に振り込まれます。来月10月15日もその支給日にあたり、通帳の数字を見ながら、自分の年金がどのくらいの水準なのかを考える機会が増える時期です。
老後の生活費をまかなえるかどうかを考えるとき、ひとつの目安として置かれるのが「月額20万円」という金額です。では、公的年金だけでこの水準に届いている人は、どのくらいいるのでしょうか。
この記事では、公的年金の2階建てのしくみを確認したうえで、厚生年金と国民年金の平均月額、そして月額20万円以上を受け取っている人の割合を見ていきます。
なお、厚生年金・国民年金の平均月額と受給額の分布に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。
1. 公的年金は2階建て|1階は全員共通、2階は収入と加入期間で変わる
金額の話に入る前に、公的年金がどう組み立てられているのかを押さえておきます。
公的年金は、「国民年金(基礎年金)」を土台として、会社員や公務員などがその上に「厚生年金」を重ねる2階建ての構造になっています。
1.1 1階部分:国民年金(基礎年金)
- 誰が加入する?:原則として「国内在住の20歳以上60歳未満」の全員
- 保険料はいくら?:全員一律(2026年度は月額1万7920円)
- 老後の受給額はいくら?:全期間(480カ月)納付すれば満額(2026年度は月額7万608円)
- 被保険者区分は?:第1号から第3号までの3区分
国民年金の被保険者区分
- 第1号被保険者:農業者・自営業者・学生・無職の人など
- 第2号被保険者:厚生年金の加入者
- 第3号被保険者:第2号被保険者に扶養されている配偶者
1.2 2階部分:厚生年金
- 誰が加入する?:会社員や公務員、またパート・アルバイトで特定適用事業所に働き一定の要件を満たした方が、国民年金に上乗せして加入
- 保険料はいくら?:収入に応じて決まり、給与からの天引きで納付(標準報酬月額(上限65万円)と標準賞与額(上限150万円)に保険料率をかけて計算)
- 老後の受給額はいくら?:加入期間や納めた保険料によって個人差がある
- 被保険者区分は?:第1号から第4号までの4区分
厚生年金の被保険者区分
- 第1号:第2号から第4号以外の、民間の事業所に使用される人
- 第2号:国家公務員共済組合の組合員
- 第3号:地方公務員共済組合の組合員
- 第4号:私立学校教職員共済制度の加入者
1階は保険料が一律なので、受け取る額も納めた月数でほぼ決まります。個人差が大きく出るのは2階のほうです。
2. 厚生年金と国民年金の平均月額|厚生年金15万289円、国民年金5万9310円
厚生労働省年金局の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から、平均年金月額を確認します。
2.1 厚生年金の平均年金月額
男女別の内訳は次のとおりです。
【平均年金月額】
- 全体 15万289円
- 男性 16万9967円
- 女性 11万1413円
※国民年金部分を含む
出所:【国民年金+厚生年金】月15万円(年180万円)以上もらう人は何%?平均受給額を一覧で確認!
ここで紹介しているのは、会社員など民間の事業所で雇用されていた人が受け取る「厚生年金保険(第1号)」の年金月額です。
2.2 国民年金の平均年金月額
- 男女全体:5万9310円
- 男性:6万1595円
- 女性:5万7582円
国民年金は男性が6万円台、女性が5万円台にとどまります。保険料が全員一律という仕組み上、受給額に大きな差が出にくいためです。
2026年度の国民年金の満額(1人分)は月額7万608円です。国民年金だけで月額20万円という水準に届くことは、制度上ありえません。
一方の厚生年金は、加入した月数とその期間の収入に応じて保険料と受給額が変わります。平均は男女全体で15万289円ですが、男性16万9967円、女性11万1413円と、男女の間でも5万円台の開きがあります。
3. 月額20万円以上を受け取っているのは、厚生年金受給者の18.8%
では、平均ではなく分布を見るとどうなるのか。厚生年金(国民年金部分を含む)の受給額ごとの人数を確認します。
3.1 厚生年金:受給額ごとの人数
- 1万円未満:4万3399人
- 1万円以上~2万円未満:1万4137人
- 2万円以上~3万円未満:3万5397人
- 3万円以上~4万円未満:6万8210人
- 4万円以上~5万円未満:7万6692人
- 5万円以上~6万円未満:10万8447人
- 6万円以上~7万円未満:31万5106人
- 7万円以上~8万円未満:57万8950人
- 8万円以上~9万円未満:80万2179人
- 9万円以上~10万円未満:101万1457人
- 10万円以上~11万円未満:111万2828人
- 11万円以上~12万円未満:107万1485人
- 12万円以上~13万円未満:97万9155人
- 13万円以上~14万円未満:92万3506人
- 14万円以上~15万円未満:92万9264人
- 15万円以上~16万円未満:96万5035人
- 16万円以上~17万円未満:100万1322人
- 17万円以上~18万円未満:103万1951人
- 18万円以上~19万円未満:102万6888人
- 19万円以上~20万円未満:96万2615人
- 20万円以上~21万円未満:85万3591人
- 21万円以上~22万円未満:70万4633人
- 22万円以上~23万円未満:52万3958人
- 23万円以上~24万円未満:35万4人
- 24万円以上~25万円未満:23万211人
- 25万円以上~26万円未満:15万796人
- 26万円以上~27万円未満:9万4667人
- 27万円以上~28万円未満:3万289人
- 28万円以上~29万円未満:3万289人
- 29万円以上~30万円未満:1万5158人
- 30万円以上~:1万9283人
月額20万円以上を受け取っているのは、厚生年金受給権者1608万5696人のうち302万7673人です。割合にすると18.8%にとどまります。
裏を返せば、8割以上の人が月額20万円未満ということになります。年金収入は世帯単位で考える必要もありますが、公的年金だけで生活費を賄う前提を置くのは、多くの方にとって現実的ではないということです。
なお、この数字は厚生年金を受給している人のなかでの割合です。国民年金だけを受け取っている方まで含めて全体を見渡せば、月額20万円以上に届く人の割合はさらに低くなります。
4. 【独自試算】月額20万円に届くには、どのくらいの報酬で何年働く必要があるか
18.8%という数字の背景を、必要な条件のほうから確かめてみます。老齢基礎年金と老齢厚生年金を合わせて月額20万円に届くには、現役時代にどの程度の報酬が必要になるのかを逆算します。前提は次のとおりです。
- 老齢基礎年金は満額(2026年度の月額7万608円、年84万7296円)を受け取れるものとする
- 老齢厚生年金の報酬比例部分は「平均標準報酬額×5.481/1000×加入月数」で計算する
- 加給年金・経過的加算・繰上げ繰下げは考えない。税金や社会保険料も差し引かない
- 平均標準報酬額は、賞与を含めた月あたりの平均額を指す
月額20万円は年240万円です。ここから基礎年金の満額84万7296円を差し引くと、報酬比例部分で年155万2704円が必要になります。これを加入期間別に見ると、必要な平均標準報酬額は次のとおりです。
4.1 加入期間別にみた、必要な平均標準報酬額の目安
- 38年(456カ月)加入:約62万円
- 40年(480カ月)加入:約59万円
- 45年(540カ月)加入:約52万円
40年働いた場合でも、賞与を含めた月あたりの平均で約59万円が必要という計算になります。標準報酬月額の上限が65万円であることを踏まえると、これはかなり高い水準です。
45年に延ばしても約52万円で、大きく下がるわけではありません。基礎年金が満額で固定されているぶん、20万円との差を埋めるのは2階部分だけになるためです。
分布で見たときに月額20万円以上が18.8%にとどまるのは、この必要水準の高さと符合します。平均が15万289円であることを考えれば、20万円という目安は平均より上の層が届く金額だということです。
なお、これは一定の前提を置いた試算です。実際の年金額は加入記録や2003年3月以前の期間の扱いによって変わりますので、ご自身の見込み額は「ねんきんネット」や年金事務所でご確認ください。

