国税庁は毎年9月ごろ、民間企業に勤める人の平均給与を公表しています。直近の「令和6年分 民間給与実態統計調査」では、1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与は478万円でした。
この数字を見て「投資に回す余裕があるのは、もっと稼いでいる人だろう」と感じた方もいるかもしれません。ただ、実際に新NISAを使っている人の年収を調べると、そのイメージとは違う結果が出ています。
この記事では、新NISA利用者の年収分布と、新NISAで買える金融商品の種類を、日本証券業協会の最新調査をもとに確認していきます。
なお、新NISA利用者の年収分布と購入銘柄の傾向に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。
- 新NISA利用者のうち、年収700万円以上は16.7%にとどまる
- 最も多いのは「300万円未満」で39.3%。利用者の平均年収は467万7000円
- 買える商品は大きく5タイプ。値動きの幅とコストで性格が分かれる
1. 新NISAは高年収の人のものか。利用者の年収を確認する
先に答えを出します。データ上、新NISAは高年収層に偏った制度ではありません。
日本証券業協会が公表した調査から、利用者の年収がどう分かれているかを見ていきます。
1.1 新NISA利用者の年収分布
回答した利用者の個人年収は、次のように分布しています。
- 300万円未満:39.3%
- 300万円~500万円未満:26.5%
- 500万円~700万円未満:17.4%
- 700万円~1000万円未満:10.4%
- 1000万円~1200万円未満:2.9%
- 1200万円~1500万円未満:1.6%
- 1500万円~2000万円未満:0.6%
- 2000万円以上:1.2%
読み取れる点を3つに整理します。
1つ目。年収700万円以上の層をすべて足しても16.7%です。10.4%、2.9%、1.6%、0.6%、1.2%の合計で、6人に1人ほどしかいません。
2つ目。最も多いのは「300万円未満」で39.3%です。回答した利用者7926人のうち3118人がこの層でした。「300万円~500万円未満」の26.5%と合わせると65.8%になります。
3つ目。利用者の平均年収は467万7000円でした。前回2025年1月の調査では454万6000円でしたので、1年ほどで13万円あまり上がっています。
そして、この467万7000円は、冒頭で触れた国税庁の平均給与478万円とほぼ同じ水準です。母集団も対象も違うため単純比較はできませんが、新NISAを使っている人の年収は、日本の平均的な給与所得者と大きく変わらないということになります。
なお、この調査が聞いているのは個人年収であり、世帯年収ではありません。「300万円未満」には、扶養の範囲で働いている人や年金生活の人も含まれる点は押さえておく必要があります。
年収と並んで気になる貯蓄額の実態については、こちらの記事でくわしく解説しています。あわせてご参考ください。
【全世代(20~70歳代)比較】貯蓄額の平均・中央値はいくら?単身・二人以上世帯で比較すると見えた「お金がある人・ない人の差」 差が生まれる3つの要因を確認
1.2 【試算】積立を5年止めると、20年後にどれだけ差がつくか
年収の水準よりも結果を左右するのは、続けられるかどうかです。途中で止めた場合にどれだけ差がつくのか、数字で確認します。
前提は、毎月3万円を年利3%で20年間積み立てるケースと、そのうち6年目から10年目までの5年間だけ積立を止めるケースの比較です。止めている間も、それまでに積み立てた分の運用は続くものとします。税金や手数料は考慮しません。
- 20年間続けた場合:元本720万円、20年後は約980万6000円
- 5年間止めた場合:元本540万円、20年後は約720万2000円
- 評価額の差:約260万4000円
- うち積み立てなかった元本の差:180万円
- 元本の差を超えて目減りした分:約80万4000円
【試算】積立を5年止めると、20年後にどれだけ差がつくか2/4
出所:LIMO編集部作成
止めた5年間で積み立てなかったのは180万円です。ところが20年後の差は約260万4000円まで広がります。差額の約80万4000円は、その180万円が残りの期間に働かなかった分です。
相場が下がった局面ほど積立を止めたくなりますが、止めるとこの構造が効いてきます。金額を減らして続けるほうが、いったん止めるより結果は安定しやすくなります。
なお、この試算は1年で3%増える前提(実効年利3%)で計算しています。年利3%は前提として置いた数値であり、運用成果を保証するものではありません。運用期間中には元本を下回る局面もあります。
2. 新NISAで買えるのはどんな商品か。5つのタイプに分けて整理する
制度は理解できても、商品選びで止まる人は多いです。専門的な話になりますが、まずは大きな分類だけ押さえれば十分です。
2.1 全世界株式(オール・カントリー 通称「オルカン」等)
日本を含む、または日本を除く世界中の先進国と新興国に、1本で分散投資できるタイプです。世界経済全体の成長を取りにいく考え方になります。
2.2 先進国株式・米国株式(S&P500等)
米国を中心とした、経済基盤の固い先進国企業に投資するタイプです。成長性は期待できますが、為替の変動を受けます。
2.3 新興国株式
インドやブラジルなど、人口増加や経済発展が見込まれる地域に投資するタイプです。リターンは期待できる一方、値動きの幅は大きめです。
2.4 日本国内株式(個別株・日本株投信)
国内企業に直接投資できるタイプです。値上がり益のほか、配当金や株主優待を目的とした運用にも使えます。
2.5 バランス型・債券・REIT(不動産投資信託)
株式に債券や不動産を組み合わせ、値動きを抑えたタイプです。大きく増やすより、振れ幅を小さくしたい場合の選択肢になります。
3. 最初の1本をどう決めるか。判断の順番を決めておく
分類がわかっても、最初の1本は迷います。順番を決めておくと決めやすくなります。
仕組みがわかりやすい商品として、インデックス投資信託があります。東証株価指数やS&P500といった指標と、同じような値動きをするよう設計された商品です。
1本のなかですでに多くの企業へ分散されているため、個別株式に比べると値動きは穏やかになりやすいとされています。
同じインデックス投資信託どうしで比べるときは、信託報酬を見てください。保有している間ずっとかかる費用ですので、長く持つほど差が結果に効いてきます。
投資先の地域は、先進国のほうが新興国より値動きが穏やかだといわれます。振れ幅を受け入れたうえでリターンを狙うなら、両方を組み合わせて持つ方法もあります。
4. つみたて投資枠と成長投資枠、買われているものはどう違うか
実際の利用者がどのタイプを買っているかも見ておきます。同じ調査から、2つの枠それぞれの購入傾向を確認します。
以下の割合は購入銘柄ベースです。1人が複数の銘柄を保有するため、利用者に占める割合ではありません。
4.1 つみたて投資枠は分散型が中心
長期の積立と分散に向いた投資信託が対象の枠です。買われている銘柄のタイプは次のとおりです。
- 投資信託(インデックス型)全世界株式(日本を含む):34.2%
- 投資信託(インデックス型)米国株式:24.0%
- その他の銘柄タイプ:17.0%
- 投資信託(インデックス型)全世界株式(日本を除く):15.6%
- 投資信託 日本国内株式・債券・REIT:5.5%
- 投資信託(アクティブ型)全世界株式(日本を含む):2.4%
- 投資信託(わからない)全世界株式(日本を含む):1.3%
全世界株式(日本を含む)が34.2パーセントで最多です。全世界株式(日本を除く)15.6パーセントと合わせると、1本で世界中に分散するタイプで5割近くを占めます。
米国株式24.0パーセントを加えると、海外株式のインデックス型で7割を超えます。なお「その他の銘柄タイプ」は残余の区分ですので、個別の商品タイプとは性格が違います。
4.2 成長投資枠では国内株式が半数近く
上場株式や幅広い投資信託を買える枠では、傾向が変わります。
- 日本国内株式:48.2%
- その他の銘柄タイプ:32.2%
- 投資信託(インデックス型)全世界株式(日本を含む):14.7%
- 投資信託 日本国内株式・債券・REIT:2.5%
- 投資信託(アクティブ型)全世界株式(日本を含む):2.0%
- 投資信託(わからない)全世界株式(日本を含む):0.5%
日本国内株式が48.2パーセントで、買われている銘柄の半数近くを占めます。応援したい企業に直接投資する使い方や、配当金を狙う使い方が中心になっているとみられます。
2つの枠は役割が違います。つみたて投資枠で土台をつくり、成長投資枠で目的の異なる投資を重ねるという整理ができます。
4.3 【試算】非課税だと、税金はいくら分うくのか
新NISAの最大の特徴は運用益が非課税になる点です。金額にするとどのくらいか確認します。
前提は、先ほどと同じく毎月3万円を年利3パーセントで20年間積み立てたケースです。課税口座で運用した場合の税率は20.315パーセント(所得税15パーセント、復興特別所得税0.315パーセント、住民税5パーセント)で計算します。
- 20年後の評価額:約980万6000円
- 元本:720万円
- 運用益:約260万6000円
- 課税口座なら差し引かれる税額:約52万9000円
同じ運用をしても、課税口座なら約52万9000円が差し引かれます。NISA口座ならこれがかかりません。
ただし、非課税になるのは利益が出た場合の話です。損失が出たときには、課税口座で使える損益通算や繰越控除がNISA口座では使えません。制度のメリットとデメリットは対で押さえておいてください。
この試算も一定の前提を置いた目安であり、将来の運用成果を保証するものではありません。

