老後の暮らしを支えるのは、公的年金と手元の貯蓄です。
ただ、その貯蓄が預けている金融機関の破綻という場面でどこまで守られるのかは、意外と知られていません。
預金保険で保護される範囲は、預金の種類によって3つに分かれます。全額守られるものと、元本1000万円までのもの、そもそも対象にならないものです。
この記事では、預金保険の保護の範囲と、70歳代・二人以上世帯の貯蓄額、公的年金の平均月額、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の家計収支について解説します。
1. 預金保険で守られる範囲は、預金の種類で3つに分かれる
手元の貯蓄がどこまで守られるのかは、預けている商品の種類で変わります。
預金保険機構によると、預金保険制度は、金融機関が預金保険料を機構に支払い、万が一その金融機関が破綻した場合に一定額の預金等を保護するための保険制度です。
保険料を負担するのは金融機関で、預金者が支払うわけではありません。対象金融機関に預金をすると、預金者・金融機関・預金保険機構の間で自動的に保険関係が成立するため、預金者が手続きをする必要はないとされています。
1.1 全額保護される決済用預金と、元本1000万円までの一般預金等
保護の範囲は、大きく3つに分かれます。
まず「当座預金」「利息のつかない普通預金」などの決済用預金は全額保護です。決済用預金とは、無利息、要求払い、決済サービスを提供できることという3要件を満たす預金をいいます。
次に、利息のつく普通預金、定期預金、通知預金、貯蓄預金、納税準備預金、定期積金、掛金、元本補てん契約のある金銭信託などは「一般預金等」です。こちらは1金融機関ごとに合算して、預金者1人当たり元本1000万円までと破綻日までの利息等が保護されます。
1.2 そもそも対象にならない預金もある
3つ目は、預金保険の対象外となるものです。
外貨預金、譲渡性預金、金融債のうち募集債および保護預り契約が終了したものなどが対象外にあたります。無記名預金や他人・架空名義の預金も、保護の対象から除かれます。
一般預金等のうち元本1000万円を超える部分と、この対象外の預金等については、破綻した金融機関の財産の状況に応じて支払われるため、一部カットされることがあると案内されています。
利息がつくかどうかという普段あまり意識しない違いが、いざというときの保護の範囲を分けています。まずは自分の預金がどの区分に入るのかを確かめておくとよいでしょう。
2. 70歳代・二人以上世帯の貯蓄はいくらか。平均と中央値
まずは貯蓄額です。J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」から、「70歳代・二人以上世帯の金融資産保有額(金融資産を保有していない世帯を含む)」を図とともに見ていきましょう。
※金融資産保有額には、預貯金以外に株式や投資信託、生命保険なども含まれます。また、日常的な出し入れ・引落しに備えている普通預金残高は含まれません。
「70歳代・二人以上世帯」の平均貯蓄額は2416万円です。ただし平均は資産の多い一部の世帯に引っ張られるため、そのまま実感に重ねると差が出ることがあります。
実態に近い目安とされる中央値は1178万円です。平均と中央値で1000万円以上の差があることになります。
世帯ごとの内訳は次のようになっています。
- 金融資産非保有:10.9%
- 100万円未満:4.5%
- 100~200万円未満:5.1%
- 200~300万円未満:3.7%
- 300~400万円未満:3.9%
- 400~500万円未満:2.9%
- 500~700万円未満:6.4%
- 700~1000万円未満:6.7%
- 1000~1500万円未満:11.1%
- 1500~2000万円未満:6.7%
- 2000~3000万円未満:12.3%
- 3000万円以上:25.2%
- 無回答:0.6%
金融資産を保有していない、いわゆる「貯蓄0円」の世帯が10.9%あります。その一方で、3000万円以上を持つ世帯が25.2%と4分の1を占めています。
少ない側では100万円未満が4.5%、100~200万円未満が5.1%、200~300万円未満が3.7%です。多い側では1000~1500万円未満が11.1%、1500~2000万円未満が6.7%、2000~3000万円未満が12.3%となっており、分布は両側に広がっています。
貯蓄額は退職金の有無や現役時代の収入、相続、健康状態などで変わります。公的年金の受給額も加入状況によって人それぞれです。
だからこそ、世帯の事情に合わせた設計が必要になります。健康なうちに短時間の仕事を続ける、支出の見直しを先に済ませるなど、早めに手を打っておくと選択肢が残ります。
3. 厚生年金の平均月額と、受給者ごとの開き
続いて年金です。厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から、厚生年金と国民年金の平均年金月額を見ていきます。
厚生年金の被保険者は第1号から第4号に分かれています。ここでは民間企業などに勤めていた人が対象となる「厚生年金保険(第1号)」を取り上げ、記事内では「厚生年金」と表記します。
※記事内で紹介する厚生年金保険(第1号)の年金月額には国民年金の月額部分も含まれています。
3.1 厚生年金の平均年金月額(全体・男女別)
- 〈全体〉平均年金月額:15万289円
- 〈男性〉平均年金月額:16万9967円
- 〈女性〉平均年金月額:11万1413円
3.2 厚生年金の受給権者数を月額階級別に見る
- ~1万円:4万3399人
- 1万円以上~2万円未満:1万4137人
- 2万円以上~3万円未満:3万5397人
- 3万円以上~4万円未満:6万8210人
- 4万円以上~5万円未満:7万6692人
- 5万円以上~6万円未満:10万8447人
- 6万円以上~7万円未満:31万5106人
- 7万円以上~8万円未満:57万8950人
- 8万円以上~9万円未満:80万2179人
- 9万円以上~10万円未満:101万1457人
- 10万円以上~11万円未満:111万2828人
- 11万円以上~12万円未満:107万1485人
- 12万円以上~13万円未満:97万9155人
- 13万円以上~14万円未満:92万3506人
- 14万円以上~15万円未満:92万9264人
- 15万円以上~16万円未満:96万5035人
- 16万円以上~17万円未満:100万1322人
- 17万円以上~18万円未満:103万1951人
- 18万円以上~19万円未満:102万6888人
- 19万円以上~20万円未満:96万2615人
- 20万円以上~21万円未満:85万3591人
- 21万円以上~22万円未満:70万4633人
- 22万円以上~23万円未満:52万3958人
- 23万円以上~24万円未満:35万4人
- 24万円以上~25万円未満:23万211人
- 25万円以上~26万円未満:15万796人
- 26万円以上~27万円未満:9万4667人
- 27万円以上~28万円未満:5万5083人
- 28万円以上~29万円未満:3万289人
- 29万円以上~30万円未満:1万5158人
- 30万円以上~:1万9283人
4. 国民年金の平均月額と、受給者ごとの開き
次に、厚生年金の加入期間がなかった人が受け取る国民年金(老齢基礎年金)の月額です。
4.1 国民年金の平均年金月額(全体・男女別)
- 〈全体〉平均年金月額:5万9310円
- 〈男性〉平均年金月額:6万1595円
- 〈女性〉平均年金月額:5万7582円
4.2 国民年金の受給権者数を月額階級別に見る
- 1万円未満:5万1828人
- 1万円以上~2万円未満:21万3583人
- 2万円以上~3万円未満:68万4559人
- 3万円以上~4万円未満:206万1539人
- 4万円以上~5万円未満:388万83人
- 5万円以上~6万円未満:641万228人
- 6万円以上~7万円未満:1715万5059人
- 7万円以上~:299万7738人
仮に「厚生年金の男性平均月額を受け取る夫」と「国民年金の女性平均月額を受け取る妻」という夫婦であれば、二人分の年金は月額22万7549円になります。
この水準で日々の生活費をまかなえるのかどうか、気になるところです。
