夏の賞与の支給が一巡し、下半期に向けて家計の組み立てを見直しやすい時期。
転職や働き方の変更を控えている方にとっては、収入が変わる前に積立の金額をどう扱うかが気になるところではないでしょうか。いまの金額をそのまま続けるのか、いったん下げて様子を見るのか、判断の手がかりがほしいという声を耳にします。
その手がかりのひとつになるのが、老後の土台となる公的年金です。この記事では、公的年金が1階と2階に分かれて組み上がる仕組みと、厚生年金の平均年金月額15万289円が何を含んだ金額なのか、そして実際に受け取っている人の年金月額が月10万円未満と月20万円以上でどのような割合になっているのかを確認していきます。
なお、公的年金の仕組みや平均受給額に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。
1. 積立額を見直す前に|国民年金と厚生年金では金額の決まり方が異なる
公的年金の全体像については、下記の記事でくわしく解説されています。ここではその要点を引用して確かめます。
【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説
公的年金制度は、しばしば「2階建て構造」に例えられます。これは、日本の年金制度が「1階」の国民年金(基礎年金)と、「2階」の厚生年金という2つの制度で構成されているためです。
1階部分の国民年金は、原則として日本国内に居住する20歳以上60歳未満のすべての人が加入対象で、保険料は所得にかかわらず一律(2026年度は月額1万7920円)。保険料を40年間(480カ月)すべて納付すると、満額(2026年度は月額7万608円)を受け取ることができます。
2階部分の厚生年金は、会社員や公務員のほか、パートタイマーなどで特定適用事業所に勤務し一定の要件を満たす人が国民年金に上乗せして加入します。保険料は収入に応じて変動し、受給額は加入していた期間や納付した保険料額によって個人差が生じます。
収入の変化という視点で読み直すと、この2つの層は性格がずいぶん違います。1階の国民年金は保険料が所得にかかわらず一律で、納めた月数の積み重ねで金額が決まります。年収が上がっても下がっても、この部分の高さはほとんど動きません。
一方、2階の厚生年金は、加入していた期間とその間の報酬の記録で金額が積み上がります。転職や働き方の変更で報酬が変われば、変わったあとの期間についてはその水準で記録が残っていきます。収入が変わる前と後で、2階部分の積み上がるペースが変わるということです。
積み立てる金額を考えるときも、この土台の高さがどのくらいになりそうかで、上乗せの意味合いは変わってきます。1階部分が中心になりそうな方と、2階部分がしっかり積み上がりそうな方とでは、同じ金額を積み立てていても位置づけが同じにはなりません。
2. 厚生年金と国民年金の平均年金月額|男女全体では月15万289円という水準
では、実際に年金を受け取っている人は、いくらくらいを手にしているのでしょうか。同じ記事から、平均年金月額の部分を引用します。
厚生年金の平均年金月額は〈全体〉15万289円、〈男性〉16万9967円、〈女性〉11万1413円(いずれも国民年金の金額を含む)。国民年金は〈全体〉5万9310円、〈男性〉6万1595円、〈女性〉5万7582円です。
年金の受給額はこれまでの加入状況によって決まるため、人によって大きな差が生じる点には注意が必要です。
ここで気をつけたいのは、厚生年金の15万289円が2階部分だけを取り出した金額ではないという点です。1階の国民年金(老齢基礎年金)を含んだ合計として集計されているため、「厚生年金だけで15万円ほど受け取れる」と読み取ってしまうと、土台の見積もりが実際より大きくなります。
また、国民年金の全体平均は5万9310円です。1階部分だけで暮らしを組み立てるとなると、生活費との差はかなり大きくなります。会社員や公務員として働いた期間が長い方ほど2階部分が積み上がるため、同じ年代でも受け取る金額には幅が出ます。
平均という1つの数字は、目安としてはわかりやすいものの、そこに何人くらいが集まっているのかまでは教えてくれません。そこで次に、実際に受け取っている金額の分かれ方を見ていきます。
3. 厚生年金の受給額分布|月10万円未満は19.0%、月20万円以上は18.8%
厚生年金の金額は、加入していた期間の長さと、その間の報酬によって開きが出ます。ここからは、厚生年金(1階部分を含む)を受け取っている人の年金月額が、どのように散らばっているのかを確かめます。
3.1 【厚生年金】1万円刻みで見る受給権者数の内訳
- 1万円未満:4万3399人
- 1万円以上~2万円未満:1万4137人
- 2万円以上~3万円未満:3万5397人
- 3万円以上~4万円未満:6万8210人
- 4万円以上~5万円未満:7万6692人
- 5万円以上~6万円未満:10万8447人
- 6万円以上~7万円未満:31万5106人
- 7万円以上~8万円未満:57万8950人
- 8万円以上~9万円未満:80万2179人
- 9万円以上~10万円未満:101万1457人
- 10万円以上~11万円未満:111万2828人
- 11万円以上~12万円未満:107万1485人
- 12万円以上~13万円未満:97万9155人
- 13万円以上~14万円未満:92万3506人
- 14万円以上~15万円未満:92万9264人
- 15万円以上~16万円未満:96万5035人
- 16万円以上~17万円未満:100万1322人
- 17万円以上~18万円未満:103万1951人
- 18万円以上~19万円未満:102万6888人
- 19万円以上~20万円未満:96万2615人
- 20万円以上~21万円未満:85万3591人
- 21万円以上~22万円未満:70万4633人
- 22万円以上~23万円未満:52万3958人
- 23万円以上~24万円未満:35万4人
- 24万円以上~25万円未満:23万211人
- 25万円以上~26万円未満:15万796人
- 26万円以上~27万円未満:9万4667人
- 27万円以上~28万円未満:5万5083人
- 28万円以上~29万円未満:3万289人
- 29万円以上~30万円未満:1万5158人
- 30万円以上~:1万9283人
男女全体で見ると、厚生年金(国民年金を含む)を受け取っている人の年金月額の分かれ方は、次のようになります。
- 月額10万円未満:19.0%
- 月額20万円以上:18.8%
金額の多い側にあたる「月20万円以上」よりも、「月10万円未満」に位置する人のほうがわずかに多いという結果です。差は0.2ポイントとごくわずかですが、平均が15万289円という水準であることを思い出すと、平均を大きく下回る側にも同じくらいの人数が並んでいることがわかります。
公的年金だけで暮らすとなると、現役時代と比べて入ってくるお金は大きく減るのが一般的です。収入が変わる時期をはさんで積立の金額を考えるときも、この幅のどのあたりに自分がいそうかを見当づけておくと、判断の材料が増えます。
【割合で見る】厚生年金(男女全体)の年金月額の広がり
- 10万円未満の割合:19.0%
- 10万円以上の割合:81.0%
- 15万円以上の割合:49.8%
- 20万円以上の割合:18.8%
- 20万円未満の割合:81.2%
- 30万円以上の割合:0.12%
ここで挙げた割合は、厚生年金(国民年金を含む)を受け取っている人に限ったデータです。
国民年金だけを受け取っている人まで含めて受給権者全体で考えると、「月10万円未満」の割合はさらに増え、「月20万円以上」の割合はさらに小さくなると見込まれます。1階部分だけの平均が5万9310円であることからも、その方向は想像しやすいところです。
年金を受け取り始めたあとの暮らしで、実際にどのくらいのお金が出入りしているのかを知っておくと、積み立てる金額の目安も置きやすくなります。シニア世帯の年金月額と家計収支についてはこちらの記事でくわしく解説しています。あわせてご参考ください。
「ふつう」のシニアは年金を月いくらもらってる?60歳代以上の平均額と、無職世帯のリアルな家計収支を公開
4. 【試算】収入が変わる前に積立額を見直した場合と、そのまま続けた場合で20年後はどう違うか
ここからは、収入が変わる時期をはさんで積立額を見直した場合と、見直さずに同じ金額で続けた場合で、20年後に届く金額の目安がどう変わるのかを確かめます。一定の条件を置いた計算であり、将来の運用成果を示すものではありません。
4.1 置いた前提
- 積み立てる期間は20年間(240カ月)、はじめの積立額は月3万円
- 収入が変わる時期は積立を始めてから5年後と仮定する
- 想定利回りは年3%。月あたりの利率は(1+年利)の12乗根から1を引いて求める
- 税金・手数料は考慮せず、積み立てたお金は各月のはじめに投じたものとして計算する
4.2 20年後に届く金額の目安
- 見直さずに月3万円のまま20年続けた場合:元本720万円に対して約983万円
- 5年後に月1万5000円へ減らし、その金額のまま残り15年続けた場合:元本450万円に対して約643万円
- 5年後に月1万5000円へ減らし、さらに5年後に月3万円へ戻して残り10年続けた場合:元本630万円に対して約852万円
同じ金額のまま続けた場合と、減らしたまま続けた場合の差は、20年で約340万円という目安になりました。減らした金額そのものの差(元本で270万円)よりも開きが大きいのは、投じた資金が動く期間の長さが結果に効いてくるためです。
一方、いったん減らしたあとに元の金額へ戻した場合は約852万円となり、減らしたまま続けた場合との差は約209万円、減らさずに続けた場合との差は約131万円にとどまりました。5年間だけ金額を下げたことによる差は、20年という期間で見ると、思ったほど大きくならないという見え方もできます。
この計算は、利回りが毎月一定という前提を置いたものです。実際に値動きのある資産では価格が上下しますので、投じた時期によって結果は変わり、元本割れとなる可能性もあります。ここで示した金額は保証されたものではなく、あくまで前提を置いた目安として受け取っていただくものです。
どちらの進め方がよいかは、この数字だけでは決まりません。金額を保ったまま生活が苦しくなるより、いったん下げて続けるほうが結果的に長く積み立てられることもありますし、下げた金額を戻す時期をあらかじめ決めておくという整理の仕方もあります。



