厚生労働省の国民生活基礎調査(2025年)によると、生活が「苦しい」と答えた高齢者世帯は52.1%にのぼりました。年金と蓄えで暮らすおひとりさまにとって、物価高の影響は小さくありません。

60〜70歳代の単身世帯は、年金を土台に貯蓄を取り崩していく年代です。まずは同世代がどれくらい蓄えているのか、平均と中央値で確かめておきましょう。

この記事では、60〜70歳代・単身世帯の貯蓄事情をデータで確認し、同世代の「中央値」をひとつの目安として、年金と蓄えで無理なく暮らすための考え方を解説します。

村岸 理美
私自身、ファイナンシャルプランナー(FP)として日々の相談業務に携わってきましたがシニア世代の単身者から「この先の生活費が足りるか不安」という声をよく伺います。自分ひとりの年金と蓄えの全体像を正しくつかむことが、暮らしの安心につながる第一歩です。
ココがポイント
  • 60〜70歳代・単身世帯の平均貯蓄額と中央値はいくらか
  • 年金と蓄えで暮らす、取り崩しの考え方
  • 「ひとり」を前提にした備え

1. 60〜70歳代・単身世帯の平均貯蓄額と中央値はいくらか?

金融経済教育推進機構(J-FLEC)が2025年に公表した「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」によると、単身世帯の金融資産保有額は次のとおりです。

※金融資産保有額とは、預貯金だけでなく株式、投資信託、生命保険などを含んだ金額です。ただし、日常的に使う普通預金の残高は含まれていません。

1.1 60歳代単身世帯の貯蓄額(平均・中央値)

60歳代(単身世帯)の貯蓄額の円グラフ1/2

おひとりさま60歳代の貯蓄額

出所:金融経済教育推進機構(J-FLEC)「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)〔単身世帯〕」をもとにLIMO編集部作成

  • 60歳代単身世帯:平均1364万円/中央値300万円

平均1364万円、中央値300万円。2000万円以上が21.1%いる一方、貯蓄のない人も30.4%と、老後の入り口で差がはっきりします。

1.2 70歳代単身世帯の貯蓄額(平均・中央値)

70歳代(単身世帯)の貯蓄額の円グラフ2/2

おひとりさま70歳代の貯蓄額

出所:金融経済教育推進機構(J-FLEC)「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)〔単身世帯〕」をもとにLIMO編集部作成

  • 70歳代単身世帯:平均1489万円/中央値500万円

平均1489万円、中央値500万円。中央値は60代の300万円から上がりますが、貯蓄のない人も20.4%と、およそ5人に1人みられます。

60代から70代にかけて中央値は上がるものの、平均との差は大きいままです。年金と蓄えで暮らす年代だけに、平均でなく中央値を目安に、取り崩しの計画を立てておきたいところです。

1.3 金額帯でみる、シニアおひとりさまの蓄え

金額帯ごとの割合をみると、60〜70歳代の単身世帯の蓄えは、想像以上に幅が大きいことがわかります。

「700万円未満」(貯蓄なしを含む)の人は、60歳代で59.8%、70歳代で53.9%と、いずれも半数を超えています。年金を補う蓄えをこれから増やしたい層も、なお多いのが実情です。

その一方で、「2000万円以上」を持つ人も、60歳代21.1%、70歳代25.4%と、およそ4〜5人に1人います。同じシニアでも、蓄えの差は大きいのです。

だからこそ、平均ではなく自分の金額帯を起点に考えることが欠かせません。年金の手取りと蓄えを一覧にし、無理のない取り崩しのペースを決めておきましょう。

村岸 理美
シニアのおひとりさまは、年金を土台に貯蓄を取り崩して暮らします。次のページで、取り崩しのペースと「ひとり」を前提にした備えの考え方をみていきます。