有効求人倍率は、雇用の状況を示す指標としてよく引用されます。1倍を超えていれば求人のほうが多い、という読み方をされることが多い数字です。

厚生労働省の「一般職業紹介状況」は、ハローワークにおける求人、求職、就職の状況を毎月とりまとめたものです。令和8年6月分の結果から、全体の数字とその中身を見ていきます。

全体では1.18倍。ただし職業別に分けると、この数字だけでは見えないものが出てきます。

この記事の3つのポイント
  • 令和8年6月の有効求人倍率は1.18倍で、前月から0.01ポイント上昇しました。
  • 職業別では建設・採掘従事者5.49倍に対し、事務従事者は0.36倍でした。
  • 都道府県別の最高・最低は、就業地別と受理地別で顔ぶれが変わります。

1. 令和8年6月の有効求人倍率は1.18倍

厚生労働省の「一般職業紹介状況(令和8年6月分)」によると、令和8年6月の有効求人倍率(季節調整値)は1.18倍で、前月を0.01ポイント上回りました。

新規求人倍率(季節調整値)は2.16倍で前月を0.05ポイント上回り、正社員有効求人倍率(季節調整値)は1.00倍で0.01ポイント上回っています。

6月の有効求人(季節調整値)は前月に比べ0.9%増、有効求職者(同)は0.1%減でした。

2. 有効求人倍率とは、求職者1人あたりの求人件数

有効求人倍率は、ハローワークが受け付けている月間有効求人数を、月間有効求職者数で割った値です。1倍であれば求職者1人に対して求人が1件、1倍を超えれば求人のほうが多いことを示します。

なお正社員有効求人倍率については、厚生労働省が注記を付けています。分母となるパートタイムを除く常用の月間有効求職者には、派遣労働者や契約社員を希望する人も含まれるため、厳密な意味での正社員有効求人倍率より低い値になる、という説明です。

3. 職業によって、15倍を超える差が

【図表1】職業(大分類)別にみた有効求人倍率(令和8年6月)1/2

【図表1】職業(大分類)別にみた有効求人倍率(令和8年6月)

各種資料をもとにLIMO編集部作成

常用(パートタイムを除く)の有効求人倍率を職業の大分類別に見ると、最も高いのは保安職業従事者の6.05倍、次いで建設・採掘従事者の5.49倍です。職業計は1.13倍でした。

一方、最も低いのは事務従事者の0.36倍です。次いで運搬・清掃・包装等従事者が0.67倍、管理的職業従事者が0.89倍と続きます。

建設・採掘従事者の5.49倍を事務従事者の0.36倍で割ると15倍を超えます。同じ月の同じ統計でも、職業を分けると水準はまったく違います。

なお、冒頭の1.18倍はパートタイムを含む常用の季節調整値で、この職業別の数字はパートタイムを除く常用の原数値です。集計の範囲が違うため、1.18倍と職業計の1.13倍は同じものではありません。

建設・採掘従事者が5.49倍、事務従事者が0.36倍。割ると15倍を超える開きになります。同じ有効求人倍率という言葉でも、職業を分けると景色がまったく変わります。

0.36倍というのは、求職者1人に対して求人が0.36件という意味です。裏返すと、求職者およそ3人に対して求人が1件という計算になります。あくまで単純計算ですが、事務の仕事を探す難しさは、この数字にそのまま表れているように思います。

ただし、これはハローワークが受け付けた求人と、ハローワークに申し込んだ求職者を数えた数字です。転職サイトや企業への直接応募は含まれていません。職業によって使われる採用経路が違うとすれば、その偏りもこの数字に乗っていることになります。

では、地域ではどうなっているのでしょうか。
中沢 新

4. 都道府県別には、就業地別と受理地別の2つがあります

【図表2】都道府県別有効求人倍率の2つの集計(令和8年6月)2/2

【図表2】都道府県別有効求人倍率の2つの集計(令和8年6月)

各種資料をもとにLIMO編集部作成

都道府県別の有効求人倍率(季節調整値)には、就業地別と受理地別の2つの集計があります。令和8年6月は、就業地別で最高が福井県の1.72倍、最低が大阪府の0.96倍、受理地別で最高が東京都の1.70倍、最低が神奈川県の0.84倍でした。

就業地別は実際に働く場所で、受理地別は求人を受け付けたハローワークの所在地で集計したものです。本社が支店の求人をまとめて出すような場合、この2つは一致しません。

どちらの集計を見ているかによって、最高と最低の顔ぶれが変わります。都道府県別の数字を引用するときは、就業地別か受理地別かを確かめておく必要があります。

5. 新規求人は前年同月比で3.1%増

6月の新規求人(原数値)は、前年同月と比較すると3.1%の増加でした。産業別の内訳は次のとおりです。

  • 増加:サービス業(他に分類されないもの)11.5%増、製造業10.4%増、宿泊業,飲食サービス業5.4%増
  • 減少:情報通信業6.4%減、卸売業,小売業2.6%減、教育,学習支援業2.2%減

増えている産業と減っている産業が同時に存在しており、全体の3.1%増はその差し引きの結果です。

6. この統計はハローワークの求人・求職を数えたもの

数字を読むうえで、押さえておきたい点がいくつかあります。

  • 集計の対象は公共職業安定所(ハローワーク)における求人・求職・就職で、労働市場の全体ではありません
  • 月別の数値は季節調整値です。令和7年12月以前の数値は、令和8年1月分公表時に新季節指数により改定されています
  • 文中の産業分類は令和5年7月改定の日本標準産業分類にもとづきます
  • 令和3年9月以降の数値には、ハローワークに来所せずオンライン上で求職登録した人や、インターネットサービスの求人に直接応募した就職件数などが含まれています

民間の求人サービスを経由した採用は含まれないため、この倍率がそのまま労働市場全体の需給を表すわけではない点には注意が必要です。

7. まとめにかえて

有効求人倍率の中身を、一般職業紹介状況から見てきました。

  • 令和8年6月の有効求人倍率は1.18倍、新規求人倍率は2.16倍、正社員有効求人倍率は1.00倍でした
  • 職業別では保安職業6.05倍、建設・採掘5.49倍に対し、事務は0.36倍と差が大きく開きます
  • 都道府県別は就業地別で福井県1.72倍・大阪府0.96倍、受理地別で東京都1.70倍・神奈川県0.84倍です
  • 新規求人は前年同月比3.1%増で、産業によって増減が分かれています

有効求人倍率は、職業や地域による大きな幅をならした平均像です。雇用の状況を語るときに1つの数字だけで済ませてしまうと、実際に仕事を探している人の感覚とはずれることになります。

求職や採用の具体的な相談は、お住まいの地域のハローワークで受け付けています。統計の詳細は厚生労働省が毎月公表している資料で確認できます。

8. 【執筆者コメント】全体の数字より、自分の欄を見る

有効求人倍率が1.18倍、と聞くと、求人のほうが多いのだから探せば見つかる、という印象を受けます。ただ職業別の表を開くと、その印象はかなり修正されます。

事務従事者は0.36倍でした。一般事務従事者に絞ると0.28倍です。一方で建設躯体工事従事者は8.55倍、保安職業従事者は6.05倍。職業計の1.13倍という数字は、この幅をならした結果として出てきています。

私も、雇用の統計を扱うときに全体の数字だけを見て済ませていたことがあります。ただ、実際に仕事を探す人にとって意味があるのは、自分が就きたい職業の行のほうです。

この参考統計表は毎月公表されていて、職業ごとの有効求人数と有効求職者数まで載っています。倍率の背景にある実数も確かめられるので、全体の数字を引用する前に、関心のある職業の行を見ておきたいところです。

そのうえで、実際の求人の状況は地域のハローワークで直接聞くのが早いと思います。統計は全国の平均像であって、目の前の仕事の話とは別のものです。

参考資料

中沢 新