4. なぜシニアはネット広告を信じ込んでしまうのか

「新聞やテレビと同じように、ネット上の広告も厳しい審査を通過した正しい情報である」と思い込んでしまう傾向が、シニア世代には根強くあります。特に、「残り時間あとわずか!」「通常1万円が今だけ500円」といった煽り文句(カウントダウンタイマーなど)を見ると、冷静な判断力を失い、規約をよく読まずに購入ボタンを押してしまうケースが後を絶ちません。

  • 「スマホを使いこなせていない」と感じている:56.6%
  • 「詐欺メールやフィッシングサイトが心配」:32.6%
  • 「個人情報の管理が不安」:26.6%
  • 「パスワード管理が難しい」:25.8%

株式会社ネオマーケティングが2026年7月22日に発表した「シニアのスマートフォン利用に関する調査(2026年)」(全国60~75歳のスマートフォン所有者500人が対象)では、操作そのものよりも、詐欺や不正利用への漠然とした不安を抱えたままネットを使っている層が多いことが明らかになりました。

こうした不安は、通販の利用場面にも表れています。コスモヘルス株式会社が2026年6月17日に発表した「シニアの意識調査」(50歳以上1071人が対象)では、ネット通販で「途中まではできるが、最後は不安でやめることが多い」と回答した人が16.8%、「入力を間違えたらどうなるか不安」と回答した人が58.5%にのぼりました。この「最後まで自信を持って読み切れない」という不安が、逆に「よくわからないまま急いで確定ボタンを押してしまう」という行動につながりやすい面もあります。

5. 年金家計を守るために。家族ができる「見守り」

シニアが通販トラブルに巻き込まれた際、最も厄介なのは「恥ずかしくて家族に言えない」「怒られるから隠しておこう」として被害が拡大することです。前述の調査でも見えてきたように、シニアの多くは「詐欺やフィッシングが心配」「入力ミスが不安」という漠然とした不安を抱えながらネットを使い続けています。その不安をひとりで抱え込ませないことが何より大切です。子世代は、親の年金と生活を守るために以下の点に気を配りましょう。

決して親を責めない。

「なんでこんな怪しいもの買ったの!」と頭ごなしに怒るのではなく、「最近はスマホの広告が巧妙だから、誰でも間違えちゃうよ」と寄り添う姿勢が早期解決への第一歩です。

注文前の「一呼吸」をルール化する。

「初回無料や500円の広告を見つけたら、注文ボタンを押す前に一度LINEでリンクを送ってね」とルールを決めておくことで、トラブルの多くは未然に防ぐことができます。

クレジットカードの明細を一緒に確認する。

親がスマホでの明細確認に不慣れな場合、見覚えのない引き落としがあっても気づけません。定期的に一緒に確認する時間を作りましょう。

6. まとめにかえて|「疑うこと」と「頼ること」が年金家計を守る

インターネット通販は、買い物に行くのが大変になるシニアにとって、本来は非常に便利なツールです。一部の悪質な「定期購入商法」のせいで、その利便性を手放してしまうのはもったいないことです。

「極端な値引きには必ず定期購入の条件が隠れている」と疑うこと。そして、もし巻き込まれてしまっても「改正特定商取引法という武器がある」「一人で悩まず消費者ホットライン『188』に相談する」という知識を持っていれば、大切な年金家計を守り抜くことができます。

ご両親をトラブルから守るため、ぜひ今日からこの知識をご家族で共有してください。

7. 【筆者コメント】

熊谷 良子

国民生活センターが2026年8月5日に公表した「2025年度 全国の消費生活相談の状況」(PIO-NETより)によれば、2025年度に寄せられた消費生活相談のうち、70歳以上からの相談が全体の25.6%を占めています(国民生活センター「2025年度 全国の消費生活相談の状況-PIO-NETより-」)。

「自分は用心深いから大丈夫」と考えている方ほど、実はこの数字の内側にいることが多いというのが実感です。定期購入トラブルは、判断力の問題というより「画面設計の巧妙さ」に起因するケースが大半だからです。

「引っかかったら恥ずかしい」ではなく、「引っかかって当然の設計になっている」という前提に立ち、家族間で気軽に相談できる空気を日頃から作っておくことをおすすめします。

特に、月々の引き落とし額が数千円程度だと「まあいいか」とそのままにしてしまう方が多いのですが、それこそが業者側の狙いです。金額の大小にかかわらず、身に覚えのない請求は放置せず、早めに手を打つ習慣をつけておきましょう。

参考資料