5. 増収でも利益が消えた2025年12月期。二極化と償却負担
直近の決算を見ていきたい。
2026年12月期上期は、売上高2,150億円、営業損失▲63億円、経常損失▲121億円、中間純損失▲128億円だった。上期の段階で損益は赤字である。
その前の2025年12月期通期は、売上高4,096億円で前期比+3.3%の増収だった一方、営業利益は13億円で▲96.4%の大幅減益、経常損失▲38億円、当期純損失▲117億円となっている。会社は営業利益率0.3%、ROE(自己資本利益率)▲2.0%と自ら記している。
増収なのに利益が消えた。何が起きたのか。
会社の説明によれば、半導体市場ではAI用データセンター向けの需要が大きく伸びた一方、民生・産業・自動車向けの需要は伸び悩み、市場の二極化が続いた。300mmウエハーは先端品への強い需要が持続したものの、先端品以外は顧客の在庫調整の影響を受け、回復は緩やかにとどまったという。200mm以下は年間を通じて低調な出荷が続いた。
もう1つ、会社が明記している要因がある。先端300mmウエハーの生産能力増強のために実行した設備投資に伴い、減価償却費の負担が増加したことだ。
需要が二極化するなかで、伸びる側に備えた設備の費用だけが先に立った。これが2025年12月期の損益の姿である。
ここで単一セグメントという構造が効いてくる。事業の柱が複数あれば、どこかの落ち込みを別の事業が補える。SUMCOにはその逃げ場がない。1999年の統合が専業メーカーを生んだという事実は、こういう局面で最も鮮明に表れる。
会社は200mm以下について生産体制の見直しを進め、事業構造改革に着手したとしている。
6. 稼いだ現金をそのまま設備へ。分類と実態が離れた資本配分
損益が沈む一方で、現金の流れは違う姿を見せている。
2025年12月期の営業キャッシュフローは1,000億円の収入だった。最終損益が▲117億円であることを踏まえると、ちぐはぐに見えるかもしれない。
からくりは減価償却費にある。同期の減価償却費は1,156億円で、会社もこれが営業キャッシュフローの主因だと説明している。現金が出ていかない費用が損益を押し下げ、その分だけ営業キャッシュフローが厚く残る構図だ。
参考までに、2021年12月期の減価償却費は513億円だった。4年で2倍以上に膨らんでいる。
投資キャッシュフローは▲1,114億円で、うち有形及び無形固定資産の取得による支出が1,110億円を占める。稼いだ現金をほぼそのまま設備に戻している。財務キャッシュフローは▲87億円だった。
この資本配分は、統合で生まれた専業メーカーの宿命に近い。単一事業で戦う以上、先端品の生産能力で後れを取った瞬間に居場所がなくなる。だから償却負担が損益を潰していても、投資を止めるという選択肢は取りにくい。
業種分類の上では金属製品に括られる会社だ。しかし資本の使い方は、完全に先端半導体の設備競争そのものである。分類と実態がこれほど離れている会社も珍しい。
7. 筆者コメント
見逃せないのは、償却負担と営業利益の桁の違いではないだろうか。
本文で触れた減価償却費の水準は、同じ期の営業利益の80倍を超える。この会社の損益は、いま製品を売って稼いだ額より、過去に投じた設備をいくら費用化するかで決まっている。
こういう会社の決算を見るとき、私は最終利益より先に、償却費と設備投資の関係を見るようにしている。償却費を上回る投資を続けているうちは、生産能力は増え続けている。逆に投資が償却費を下回れば、能力は維持か縮小へ向かう。
直近期はこの2つがほぼ拮抗した。積み増しの局面から、維持の局面へ移ろうとしている数字と読める。
出自をたどれば2社の合弁、事業は単一、資本は市場、投資は先端。この4つを並べると、SUMCOという会社の輪郭がはっきりしてくる。決算を追うときは、そういう順番で眺めてみることをおすすめしたい。
参考資料
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石津 大希