SUMCO(3436)という社名から、どんな会社を思い浮かべるだろうか。私は長いあいだ、半導体材料の専業メーカー、それ以上でもそれ以下でもないと思っていた。だが有価証券報告書の沿革をたどると、日本を代表する2つの企業グループの名前が並ぶ。そこで生まれた構造は、いまの決算のあちこちに残っている。

※本記事中の株価は、過去の株式分割の影響を調整した値を使用しています。

ココがポイント
  • SUMCOは1999年に住友金属工業と三菱マテリアル側の共同出資で設立され、2002年に両社のシリコンウエハー事業を完全統合して専業メーカーになった
  • 事業は「高純度シリコン」の単一セグメント。2025年12月期は営業利益率0.3%、ROE▲2.0%まで沈み、株価は1カ月で2割上げた水準にあって当日は横ばいだった
  • 2026年12月期上期は売上高2,150億円で営業損失▲63億円。統合後に積み上げた設備の重さが、いま損益を押し下げている

1. 社名の由来は沿革に書いてある。合弁として始まった会社

シリコンウエハーの世界で名前の挙がるメーカーは多くない。SUMCOはその一角である。だが、この会社がいつ、どうやってできたのかを知っている人は、そう多くないのではないだろうか。

有価証券報告書の沿革に、答えがそのまま書かれている。

1999年7月、住友金属工業(現 日本製鉄)、三菱マテリアル、およびその子会社である三菱マテリアルシリコンの共同出資により、300mm口径のシリコンウエハーの開発と製造を目的として設立された。出資比率は住友金属工業と三菱マテリアルグループがそれぞれ50%である。

設立時の商号は、株式会社シリコン ユナイテッド マニュファクチュアリングといった。

2002年2月、住友金属工業からシリコン事業の営業を譲り受けると同時に三菱マテリアルシリコンと合併し、両社のシリコンウエハー事業を完全に統合した。このとき商号は三菱住友シリコン株式会社に変わっている。

そして2005年8月、商号は株式会社SUMCOになった。三菱住友シリコンからSUMCOへ。この並びを見れば、社名がどこから来たのかはおおよそ見当がつく。

鉄と非鉄。日本の重厚長大産業を代表する2つのグループが、半導体の材料という一点で手を組んだ。SUMCOという会社は、その合弁から始まっている。

2. 出自はどこに残ったのか。事業と販売先と、株主名簿

では、その出自はいまの会社のどこに残っているのか。3つの場所を見ていきたい。

1つ目は事業の形である。有価証券報告書によれば、この会社の事業は「高純度シリコン」のみの単一セグメントだ。セグメント情報の記載が省略されるほど、事業は一点に絞られている。

2社のシリコンウエハー事業を統合して専業メーカーになる。1999年の設立目的が、そのまま四半世紀後の事業構成として残っている形だ。

2つ目は販売先である。2025年12月期の主要な販売先として、住友商事が1,106億円、総販売実績の27.0%を占めると開示されている。前期は981億円で24.8%だったから、比率はむしろ上がっている。

資本の出自としての住友は形を変えたが、商流としての住友は売上の4分の1超を通す位置に残っている。

3つ目は、逆に残っていないものだ。2025年12月期の大株主上位10社を見ると、首位は日本マスタートラスト信託銀行の信託口で16.67%、次いで日本カストディ銀行の信託口が10.66%と続く。3位以下は海外の機関投資家の名義が並ぶ。

設立に関わった2社の名前は、上位10社のどこにもない。

資本関係の痕跡は消え、商流の痕跡は残った。この非対称が、いまのSUMCOの立ち位置をよく表している。親会社に守られる会社ではなく、単一事業で市況に向き合う独立した専業メーカーだ。

その独立が何を意味するかは、過去5期の損益にはっきり出ている。

2021年12月期の売上高は3,356億円、営業利益は515億円で、営業利益率は15.4%だった。2022年12月期は売上高4,410億円、営業利益1,096億円まで伸び、利益率は24.9%に達している。

そこからが逆方向だ。2023年12月期は営業利益730億円で利益率17.2%、2024年12月期は369億円で9.3%、そして2025年12月期は13億円、利益率0.3%まで落ちた。

売上高はこの5期、4,000億円前後のレンジからほとんど出ていない。にもかかわらず営業利益は1,096億円から13億円まで動いた。単一事業に絞った会社の損益は、市況の振れをそのまま受ける。

統合が生んだのは、強い専業メーカーであると同時に、逃げ場のない収益構造でもあった。

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出所:株式会社SUMCO 有価証券報告書をもとに筆者作成

出所:株式会社SUMCO 有価証券報告書をもとに筆者作成

3. 1カ月で2割上げた株価と、直近時点のPBR2.11倍

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出所:各種資料をもとに筆者作成

出所:各種資料をもとに筆者作成

株価はこの構造をどう見ているのか。

2026年8月28日の終値は3,434円で、前日と同じ水準だった。当日はほとんど動いていない。

1カ月前の7月30日の終値は2,857円である。そこから8月17日には4,061円まで切り上がり、直近1カ月ではここが最も高い水準になった。その後は下げに転じ、当日は3,400円台での小動きに落ち着いている。

起点からの上げ幅は2割程度だ。もっとも、途中で4,000円台に乗せてから1割半ほど押し戻されていることを踏まえれば、この1カ月は方向感を探る動きだったという見方もできる。

バリュエーションはどうか。直近時点のPBR(株価純資産倍率)は2.11倍である。

一方、PERはここでは物差しにならない。利益が出ていない局面で株価を利益で割っても、意味のある数字にはならないからだ。

純資産の2倍を超える値が付いているということは、市場が足元の損益ではなく、その先の回復を見ているということになる。会社が説明するAI用データセンター向けの先端品需要が、その根拠として意識されている可能性は高い。

ただ、株価がなぜこの水準にあるのかを単一の材料で断定することはできない。半導体材料は最終需要の見通しが少し変わるだけで期待が動く。1カ月のうちに高い水準から押し戻された値動きも、その揺れの表れとみるのが自然だろう。

4. 筆者コメント

出自と株主名簿と販売先。この3つを同時に見ると、この会社の性格が浮かび上がってくる。

生まれは2つの大企業の合弁だ。だが四半世紀を経て、資本の側の痕跡は上位株主から消えた。いまこの会社を保有しているのは信託口と海外の機関投資家である。

一方、販売の側には出自が濃く残った。総販売実績の4分の1超を1社が通しているという構造は、統合前から続く商流の延長線上にあるとみるのが自然だろう。

親会社の傘を外れ、単一事業で市況と向き合う。それは自立であると同時に、業績の振れをすべて自分で引き受けるということでもある。本文で並べた5期の営業利益の振れ幅が、その代償を示している。

株価が純資産を大きく上回る水準で取引されているのは、この振れの先に回復があると市場が見ているからだろう。合弁として生まれた会社が、いまや純粋な市況銘柄として値付けされている。私にはそこが面白い。