外食業界にとって、原材料費や人件費の上昇分を販売価格に転嫁する「価格転嫁」は簡単な経営判断ではありません。帝国データバンクが28日に発表した「価格転嫁に関する実態調査(2026年7月)」によると、飲食店の価格転嫁率は28.7%にとどまり、「価格転嫁すると集客できなくなるのではないかという不安から、値上げに踏み出せない」という声も紹介されています(出所:株式会社帝国データバンク「価格転嫁に関する実態調査(2026年7月)」2026年8月28日発表)。
そうした厳しい環境のなか、サンマルクホールディングス<3395>は、喫茶事業(サンマルクカフェなど)で価格転嫁による収益力向上と既存店の客数維持に取り組んでいる企業の一つです。もっとも、レストラン事業を含めた全社ベースでは、原材料・人件費コストの上昇ペースに価格転嫁が追いついておらず、直近の第1四半期は大幅な減益となりました。
同社の2027年3月期第1四半期決算は、5日の取引時間終了後(15時30分)に、株主優待制度の拡充・対象条件変更と同時に発表されました。翌6日、株価は前日比114円安(▲4.64%)の2,344円まで下落し、年初来安値2,290円をつけています。その後は切り返しが続き、28日終値は2,518円(前日比+18円、+0.72%)まで戻しています。
- 2027年3月期第1四半期は増収を確保したものの、営業利益42.2%減など大幅減益
- 決算発表翌営業日に株価は前日比▲4.64%の年初来安値2,290円まで下落も、その後は切り返し基調
- 株主優待は牛カツ京都勝牛など10業態を新たに追加する一方、2027年3月の受け取りには「半年以上の継続保有」の条件が新設
1. 2027年3月期第1四半期決算:増収も大幅減益
2026年8月5日に発表された2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)の連結決算は、次の内容でした。
- 売上高:220億6,100万円(前年同期比2.9%増)
- 営業利益:5億8,900万円(同42.2%減)
- 経常利益:5億6,300万円(同41.8%減)
- 最終利益:2億2,700万円(同45.6%減)
売上高は増収を確保した一方、営業利益・経常利益・純利益はいずれも4割超の減益となりました。同社は、外食業界について「仕入れコストの上昇や中東情勢緊迫化を背景とした先行き不透明感からの生活防衛意識の高まりに加え、人件費の高騰などを背景に、引き続き厳しい経営環境が続いている」としています。
通期の会社予想(売上高930億円、営業利益53億円、経常利益51億円、純利益29億円)は据え置かれていますが、第1四半期時点の進捗率は売上高が23.7%である一方、営業利益11.1%、経常利益11.0%、純利益7.8%と、単純な四半期ペース(25%)を大きく下回っています。上半期・下半期でどこまで利益面を挽回できるかが、今後の決算を見るうえでのポイントになりそうです。
2. 最も稼ぐ「レストラン事業」、牛カツ業態が牽引役に
同社は「レストラン事業」と「喫茶事業」の2つのセグメントで構成されており、2026年3月期通期の実績では、レストラン事業が売上高599億6,900万円(前年比35.9%増)、営業利益44億6,800万円(前年比17.3%増)と、連結売上高の67.8%を占める最大の稼ぎ頭になっています。
このレストラン事業の急成長を支えているのが、「牛カツ京都勝牛」「牛かつもと村」といった牛カツ定食業態です。訪日外国人需要を取り込んだ出店拡大とM&A後の統合効果が、レストラン事業の成長ドライバーになっています。第1四半期中には牛カツ京都勝牛の直営店・フランチャイズ店を各1店舗、牛かつもと村の直営店を1店舗、それぞれ新規出店しています。
もう一つの柱である喫茶事業(「サンマルクカフェ」など)は、2026年3月期通期で売上高284億6,200万円(前年比6.3%増)、営業利益30億2,700万円(前年比35.3%増)でした。価格転嫁による収益力向上と、リニューアルしたセットメニューの全国展開によって既存店の競争力強化を図っているとしています。
2027年3月期第1四半期は、牛カツ業態を中心とするレストラン事業が牽引して増収は確保したものの、原材料費・人件費の上昇圧力を受けて営業利益・経常利益・純利益はいずれも4割超の減益となりました。通期の会社予想は据え置かれているものの、利益面の進捗率は1割前後にとどまっており、収益性の改善ペースが今後の焦点です。
この決算発表と同じタイミングで、同社は株主優待制度の拡充と対象条件の変更も発表しました。