2026年4月には年金額の改定が行われ、物価や賃金の変動に伴い年金額が引き上げられました。しかし、いざ支給日を迎えると「年金額が増えたはずなのに、10月の振込額が前回よりも減っている」と戸惑う声が少なくありません。

西岡 秀泰
筆者も社会保険労務士として年金事務所の窓口に立っておりますが、秋口になると年金の手取り額に関するご相談を多数お受けします。手取り額が減ってしまうと家計への影響を心配してしまいますが、仕組みを知っていれば慌てることはありません。

今回は、10月から年金の手取り額が変動する理由と、ご自身で確認できる3つのポイントを解説します。

1. 10月の年金振込額が「減る人・増える人」の分かれ道。手取り額が変わる3つのポイント

10月振込だけでなく、年金支給日になると手取り額(振込額)に関する照会が急増します。

手取り額が増減して慌てたり、不安を感じる受給者も少なくありませんが、年金手取り額に関する基本を理解していれば、手取り額の増減理由を冷静に考えることができます。

1つ目のポイントは、手取り額(振込額)は年金額から特別徴収額を差し引いて算出するということです。

特別徴収額とは、年金から天引きされる所得税と住民税、国民健康保険料(または後期高齢者医療保険料)、介護保険料の金額のことです。

手取り額が増えた場合、原因の大半は年金額が増えたか、特別徴収額が減ったかのどちらかです。

相談者に対しては、前回と今回の振込時の年金額と特別徴収額、手取り額を提示して見比べてもらい、手取り額の増減理由を確認してもらっています。

2つ目のポイントは、日本年金機構から送付される「年金振込通知書」を見れば、特別徴収される税金や社会保険料の金額がわかることです。わざわざ年金事務所に出向かなくても、自分で手取り額が変わった理由を確認できます。

3つ目のポイントは、年金額の改定タイミングと手取り額に反映するタイミングが違うことです。

毎年4月に年金額は改定されますが、4月・5月の年金が振り込まれるのは6月になります。年金額の改定は、「年金額改定通知書」で確認できます。

2. 10月から手取りが増えるのは特別徴収額の減る人

10月15日に振り込まれる年金は8月分・9月分の年金です。原則8月や9月に年金額の改定はなく、10月振込分の手取りが増えたり減ったりするのは、年金から特別徴収(天引き)される税金や社会保険料が増減するからです。

2.1 特別徴収額が変動するのは10月振込の年金から

年金額の改定がないにも関わらず10月振込の年金手取り額が変動しやすいのは、住民税と社会保険料(国民健康保険料、後期高齢者医療保険料、介護保険料)の特別徴収額が見直される時期にあたるからです。

住民税と社会保険料が確定するのは6月から7月頃です。8月振込分までは前年度の実績を基に住民税などが徴収(仮徴収)され、10月振込分から確定した新年度分の徴収(本徴収)が始まります。

特別徴収・本徴収・仮徴収のタイミング1/2

新たに特別徴収となる場合

出所:横浜市:「国民健康保険料の年金からの特別徴収について」

相談が多いのは、前年度の収入が大きく変動した人です。住民税と社会保険料は前年の所得を基に計算されるため、所得の増減が大きい人ほど、特別徴収額も大きく増減します。

また、65歳になって国民健康保険料や介護保険料の特別徴収が始まった人や、75歳になって後期高齢者医療保険料の特別徴収が始まった人も同様です。

65歳や75歳になった直後ではなく、4月や10月の年金振込タイミングで特別徴収を始める自治体が多いからです。