公的年金の支払いは偶数月です。8月の定期支払日を終え、次は10月——2カ月ごとに支給される金額は、夫婦であっても同じとは限りません。むしろ、現役時代の働き方の違いがそのまま金額の差として表れます。

厚生年金の平均は月15万289円ですが、これを男女別に見ると5万円以上の開きがあります。この差は、たまたま生まれたものではありません。年金の加入区分、出産後の働き方、そして家庭内の家事・育児の分担といった構造が積み上がった結果です。

本記事では、厚生年金の平均受給額と男女差、月30万円以上を受け取る人の割合、そして「第3号被保険者」の人数の変化と第1子出産後の就業状況を、公的なデータで確認していきます。

長井 祐人
年金額の話は「平均いくら」で終わってしまいがちですが、その平均がどう分かれているのかを見ないと、自分の世帯に当てはめられません。特に夫婦世帯では、二人の合計額と、それぞれの内訳の両方を押さえておくことが大切です。まずは公表されているデータで全体像を確認していきましょう。

なお、2026年度の年金額や平均受給額に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。

【厚生年金】2026年6月支給分から「標準的な夫婦世帯」の年金額が4495円アップ!支給日に「60万円(月30万円)以上」受給する人は全体の何%?遺族・離婚時のルールも解説
【厚生年金】2026年6月支給分から「標準的な夫婦世帯」の年金額が4495円アップ!支給日に「60万円(月30万円)以上」受給する人は全体の何%?遺族・離婚時のルールも解説
【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説
【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説
ココがポイント
  • 厚生年金の平均月額は〈全体〉15万289円だが、〈男性〉16万9967円・〈女性〉11万1413円で5万8554円の差。月30万円以上を受け取る人は全体の約0.12%にとどまる
  • 第3号被保険者は令和6年度末で約641万人。うち女性が約628万人を占め、5年連続で減少している(▲6.7%)
  • 第1子出産後も53.8%が仕事を継続する一方、6歳未満の子がいる家庭の家事・育児時間は妻7時間28分・夫1時間54分と約4倍の差がある

1. 厚生年金の平均は月15万289円、男女差は5万8554円——月30万円以上は約0.12%

まず年金額の全体像を、「【厚生年金】2026年6月支給分から「標準的な夫婦世帯」の年金額が4495円アップ!支給日に「60万円(月30万円)以上」受給する人は全体の何%?遺族・離婚時のルールも解説」から要点を引用して確認してみます。

夫婦2人分の標準的な年金額は月額23万7279円となり、年金は2カ月ごとに支給されるため、1回あたりの振込額は47万4558円です。

  • 〈全体〉平均年金月額:15万289円
  • 〈男性〉平均年金月額:16万9967円
  • 〈女性〉平均年金月額:11万1413円

厚生年金受給者のうち、月額30万円以上を受け取っている人は全体の約0.12%にとどまります。

出所:【厚生年金】2026年6月支給分から「標準的な夫婦世帯」の年金額が4495円アップ!支給日に「60万円(月30万円)以上」受給する人は全体の何%?遺族・離婚時のルールも解説

ここから読み取れることは2つあります。

1つは、月30万円以上という高額受給者が全体の約0.12%、つまり1000人に1人程度しかいないということ。もう1つは、平均額そのものに男女で5万8554円の開きがあるということです。

厚生年金は加入期間の長さと、その間の報酬額で決まります。したがってこの男女差は、年金制度が男女で異なる計算をしているという話ではなく、現役時代の働き方の違いがそのまま反映された結果です。

1.1 【試算】男女の平均額の差5万8554円は、20年間でいくらになるか

平均額の差を受給期間で積み上げると、どの程度の金額になるのか計算してみます。前提は「男女それぞれの平均年金月額をそのまま20年間受け取り続ける」というもので、額面ベース・年金額の改定は考慮していません。あくまで一定の前提を置いた試算です。

  • 1カ月あたりの差:5万8554円(16万9967円 − 11万1413円)
  • 1年あたりの差:約70万2648円
  • 20年間の差:約1405万円

月5万8554円という差は、日々の家計では「少し違う」程度に感じられるかもしれません。しかし65歳から85歳までの20年間で積み上げると、約1405万円という規模になります。老後資金の目標額としてよく挙げられる金額と比べても、決して小さくありません。そして、この差の大部分は受給が始まってからではなく、現役時代のうちに決まってしまいます。

2. 【第3号被保険者】5年連続で減少、女性は約628万人——加入区分が映す共働き化

国民年金にはいくつかの加入区分があります。その一つである「第3号被保険者」は、厚生年金(公務員などが加入していた旧共済年金を含む)に加入している第2号被保険者の配偶者で、一定の収入条件を満たす人が対象です。

令和6年度末時点では約641万人が該当しています。厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をみると、女性の第3号被保険者の人数は5年連続で減少していることがわかります。

第3号被保険者の総数:約641万人

  • 男性:約13万人(+3.1%)
  • 女性:約628万人(▲6.7%)

第3号被保険者の大きな特徴は、本人が保険料を負担しなくても国民年金に加入した扱いになる点です。これは厚生年金制度全体でその費用を負担する仕組みになっているため、配偶者個人の保険料が増えるわけではありません。加入手続きも本人ではなく、配偶者の勤務先を通じて行われます。

ただし、保険料を負担しないということは、その期間に厚生年金の上乗せが積み上がらないということでもあります。女性が約628万人と全体の98%を占める構造が、そのまま前章で見た平均額の男女差につながっています。

厚生年金・国民年金の平均受給額を年齢別・男女別にまとめた一覧はこちらの記事でくわしく解説しています。あわせてご参考ください。
【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説

2.1 「出産退職」から「継続就業」へ——第1子出産後も53.8%が仕事を継続

厚生労働省が公表する「令和7年版厚生労働白書」をみると、第1子出産をめぐる女性の就業変化が見えてきます。

かつては第1子出産を機に離職する「出産退職」が一般的でしたが、2015〜19年のデータでは53.8%が仕事を継続しており、過半数を超えました。

しかし、仕事を辞めずに済んでも、育児との両立のために「パート・派遣」といった非正規雇用を選択するケースが依然として多いのが実情です。これが結果として、将来受け取る厚生年金額の低迷や、第3号被保険者にとどまる要因の一つとなっています。

長井 祐人
私自身、20歳で個別株や暗号資産に手を出したとき、下調べをせずに買ってしまい損失を出した経験があります。年金についても同じで、制度の形を知らないまま働き方を決めると、あとから「そういう仕組みだったのか」と気づくことになります。第3号被保険者でいる期間、厚生年金に加入して働く期間、それぞれが将来の金額にどう効くのかは、選ぶ前に知っておく価値があります。次のページでは、その働き方を左右している家庭内の時間の使い方を見ていきます。