10月には、公的年金の定期支払日があります。公的年金は偶数月の15日に2カ月分がまとめて振り込まれる仕組みで、通帳に記載された金額を見て「思っていたより少ない」と感じる方は少なくありません。

会社員や公務員として働いた期間がある人は、国民年金に厚生年金が上乗せされるため、受給額は大きくなります。ただし、実際に月20万円以上を受け取っている人がどれくらいいるのかは、あまり知られていません。

本記事では、公的年金の仕組みと平均受給額を確認したうえで、厚生年金の受給額分布から「月20万円以上」に届いている人の割合を見ていきます。

神田 翔平
年金のご相談では、平均額だけを見て安心したり落ち込んだりする方が多いのですが、確認していただきたいのは分布のほうです。平均はあくまで真ん中あたりの目安であり、実際の受給額は加入期間と収入によって大きく開きます。まずは平均と分布の両方を見て、ご自身がどのあたりの層に入るのかを把握するところから始めてみてください。

なお、公的年金の仕組みや平均受給額に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。

【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説
【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説
【国民年金+厚生年金】月15万円(年180万円)以上もらう人は何%?平均受給額を一覧で確認!私的年金の見直しで押さえておきたいポイント
【国民年金+厚生年金】月15万円(年180万円)以上もらう人は何%?平均受給額を一覧で確認!私的年金の見直しで押さえておきたいポイント
ココがポイント
  • 厚生年金(国民年金部分を含む)の平均年金月額は全体で15万289円、男女差は5万8554円ある
  • 月20万円以上を受け取っているのは厚生年金受給権者の18.8%で、8割以上は20万円未満
  • 平均額の人が繰下げ受給で月20万円台に乗るのは、69歳まで待った場合という試算結果に

1. 公的年金は「1階の国民年金」と「2階の厚生年金」で組み立てられている

受給額の話に入る前に、金額の差がどこから生まれるのかを押さえておきます。公的年金の基本的な仕組みについては、LIMOの記事「【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説」から要点を引用して確認しましょう。

公的年金制度は、しばしば「2階建て構造」に例えられます。これは、日本の年金制度が「1階」の国民年金(基礎年金)と、「2階」の厚生年金という2つの制度で構成されているためです。

1階部分にあたる国民年金は、次のような制度です。

  • 加入対象:原則として日本国内に居住する20歳以上60歳未満のすべての人
  • 保険料:国民年金保険料は所得にかかわらず一律ですが、年度ごとに見直されます(2026年度は月額1万7920円)
  • 受給額:保険料を40年間(480カ月)すべて納付すると、満額を受け取ることができます(2026年度は月額7万608円)

これに上乗せされるのが、2階部分の厚生年金です。

  • 加入対象:会社員や公務員のほか、パートタイマーなどで特定適用事業所に勤務し、一定の要件を満たす人が国民年金に上乗せして加入
  • 保険料:収入に応じて厚生年金保険料が変動します。ただし、保険料計算の基となる収入には上限が設けられています
  • 受給額:加入していた期間や納付した保険料額によって個人差が生じます

出所:【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説

1階の国民年金は、納付月数が同じであれば受給額もほぼ同じになります。一方、2階の厚生年金は「いくらの給与で、何年加入したか」で決まるため、同じ会社員経験がある人どうしでも金額に開きが出ます。年金額の個人差は、そのほとんどが2階部分から生じていると考えてよいでしょう。

2. 厚生年金と国民年金、平均受給額はいくらか

では、実際に受け取っている金額はどの程度なのでしょうか。国民年金・厚生年金の平均受給額についても、LIMOの記事「【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説」から要点を引用して確認します。

まず、厚生年金の平均年金月額です。

  • 〈全体〉平均年金月額:15万289円
  • 〈男性〉平均年金月額:16万9967円
  • 〈女性〉平均年金月額:11万1413円

※国民年金の金額を含みます。

続いて、国民年金の平均年金月額です。

  • 〈全体〉平均年金月額:5万9310円
  • 〈男性〉平均年金月額:6万1595円
  • 〈女性〉平均年金月額:5万7582円

出所:【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説(厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとに作成)

厚生年金は男女で5万8554円の差があります。厚生年金の受給額は現役時代の収入と加入期間で決まるため、勤務期間や働き方の違いが、そのまま受給額の差として表れます。年金額は個人差が大きく、平均額はあくまで目安として見る必要があります。

3. 厚生年金「月20万円以上」の人は全体の何%か

ここからは、厚生年金(国民年金部分を含む)の受給額分布を見ていきます。平均額の前後にどれだけの人が集まっているのかがわかります。

厚生年金の受給額ごとの受給権者数1/1

厚生年金の受給額ごとの受給権者数

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

3.1 厚生年金:受給額ごとの人数

  • 1万円未満:4万3399人
  • 1万円以上~2万円未満:1万4137人
  • 2万円以上~3万円未満:3万5397人
  • 3万円以上~4万円未満:6万8210人
  • 4万円以上~5万円未満:7万6692人
  • 5万円以上~6万円未満:10万8447人
  • 6万円以上~7万円未満:31万5106人
  • 7万円以上~8万円未満:57万8950人
  • 8万円以上~9万円未満:80万2179人
  • 9万円以上~10万円未満:101万1457人
  • 10万円以上~11万円未満:111万2828人
  • 11万円以上~12万円未満:107万1485人
  • 12万円以上~13万円未満:97万9155人
  • 13万円以上~14万円未満:92万3506人
  • 14万円以上~15万円未満:92万9264人
  • 15万円以上~16万円未満:96万5035人
  • 16万円以上~17万円未満:100万1322人
  • 17万円以上~18万円未満:103万1951人
  • 18万円以上~19万円未満:102万6888人
  • 19万円以上~20万円未満:96万2615人
  • 20万円以上~21万円未満:85万3591人
  • 21万円以上~22万円未満:70万4633人
  • 22万円以上~23万円未満:52万3958人
  • 23万円以上~24万円未満:35万4人
  • 24万円以上~25万円未満:23万211人
  • 25万円以上~26万円未満:15万796人
  • 26万円以上~27万円未満:9万4667人
  • 27万円以上~28万円未満:5万5083人
  • 28万円以上~29万円未満:3万289人
  • 29万円以上~30万円未満:1万5158人
  • 30万円以上~:1万9283人

出所:【国民年金+厚生年金】月15万円(年180万円)以上もらう人は何%?平均受給額を一覧で確認!私的年金の見直しで押さえておきたいポイント

公的年金の受給額が「月額20万円以上」に達しているのは、厚生年金受給権者のうち18.8%にとどまります。逆に見れば、8割以上の人がひと月20万円未満です。もっとも人数が多いのは10万円以上11万円未満の層で、平均額の15万289円は、この分布のなかではやや上のほうに位置します。

年金収入は世帯単位で考える必要もありますが、公的年金だけで生活費をまかなうことを前提にすると、多くの世帯で自助努力による備えが必要になります。

なお、この割合はあくまで厚生年金を受給している人のなかでの数字です。国民年金のみを受給している方々も含めて全体を見渡すと、年金月額が「月額20万円以上」となる人の割合は、さらに低くなると考えられます。

3.2 【試算】平均額の人が「月20万円」に届くのは何歳から?繰下げ受給で計算

では、平均的な受給額の人が「月20万円」に乗せるには何が必要なのでしょうか。ここでは、公的年金の繰下げ受給を使った場合を試算します。前提は、厚生年金(国民年金部分を含む)の全体平均である月15万289円を65歳時点の年金額と仮定し、日本年金機構が示す増額率「0.7%×65歳に達した月から繰下げ申出月の前月までの月数」で計算したものです。

  • 66歳まで繰下げ(12カ月・増額率8.4%):約16万2913円
  • 67歳まで繰下げ(24カ月・増額率16.8%):約17万5537円
  • 68歳まで繰下げ(36カ月・増額率25.2%):約18万8161円
  • 69歳まで繰下げ(48カ月・増額率33.6%):約20万786円
  • 70歳まで繰下げ(60カ月・増額率42.0%):約21万3410円

平均額の人が月20万円台に乗るのは、69歳まで繰り下げた場合という結果になりました。ただし、繰下げの待機期間中は年金を受け取れません。加給年金額や振替加算は増額の対象外で、待機期間中は受け取れない点にも注意が必要です。また、増えた年金額に応じて税金や社会保険料の負担も増えるため、手取りベースでは20万円に届かない場合があります。この試算は一定の前提を置いた目安であり、受給額を保証するものではありません。

神田 翔平

先に要点をお伝えすると、「月20万円以上は18.8%」という数字は、悲観するためのものではなく、自分の位置を確認するための材料です。分布を見ると、10万円台に人数が集中しています。ご自身の見込額がその範囲にあるなら、それは特殊な状況ではなく、多数派の側にいるということです。

そのうえでお伝えしたいのが、年金は世帯単位で見るという視点です。おひとりの金額では20万円に届かなくても、ご夫婦の合計では届くご家庭もあります。逆に、合計で届いていても、生活費や住まいの状況によっては足りないこともあります。65歳以上の世帯が実際にどれくらいの年金と貯蓄で暮らしているかは「老後の「ふつう」が分かる!65歳以上の平均貯蓄額・年金月額・1カ月の生活費をデータで見る」にまとまっていますので、ご自身の家計と並べて確認してみてください。

私自身、23歳で投資を始めたころ、わずか数%の利益で個別株を手放し、買い直した銘柄で数十%の損を出した経験があります。金額を短期間で挽回しようとするほど、判断は雑になります。年金の不足分を埋める準備は、時間をかけられるうちに少額から始めるほうが、結果的に無理がありません。