非鉄金属という業種の名前から真っ先に思い浮かぶのは、銅の相場や景気の波ではないだろうか。ところが古河電気工業(5801)の株価は、この1カ月で下値と上値の差が5割を超える動きになり、8月25日は前営業日から1割上昇し4,000円で引けた。景気循環株の物差しだけでは追いきれない値動きが続いている。
※本記事中の株価は、過去の株式分割の影響を調整した値を使用しています。
- 株価は8月25日に前営業日比1割上昇の4,000円。直近1カ月では2,773円から4,368円までの幅で振れた
- 2027年3月期1Qの営業利益は254億円で前年同期の3.0倍。通期予想も営業利益1,230億円へ引き上げられた
- 中期経営計画のROE目標11%に対し実績は19.1%。ただし営業利益率4.9%は非鉄金属の中央値を下回る
1. 1カ月で振れ幅5割超。8月25日に4,000円まで戻した株価
直近1カ月の値動きは、素直に荒い。7月27日の終値3,277円から下値を探る展開が続き、7月29日には2,773円まで沈んだ。
そこから流れが変わる。8月4日に3,566円、翌8月5日に3,919円と水準を切り上げ、8月18日には4,368円をつけた。ここが直近1カ月でもっとも高い終値である。
もっとも、上げは長続きしなかった。8月19日は3,770円まで下押しし、8月24日には3,625円まで押し戻された。高値からの下げ幅は1割を超える。
そして8月25日、終値は4,000円。前営業日から375円、率にして1割の上昇となった。1カ月前の3,277円と比べれば2割強の上昇である。
下値2,773円と高値4,368円の差は5割を超える。ボラティリティ(株価の日々の値動きの激しさ)がここまで大きい銘柄では、1日の上下だけで会社の姿を判断するのは無理がある。
株価より会社を見る、という順番に戻したい。ここからは、この振れ幅の下で何が起きているのかを決算の数字で確かめていく。
2. PER26.8倍・PBR6.44倍。景気循環株の物差しから外れた水準
直近時点のPER(株価収益率)は26.8倍、PBR(株価純資産倍率)は6.44倍である。
非鉄金属という業種に貼られやすいイメージは、銅価格に振られる景気循環株で、PBRは1倍前後というものだろう。実際の水準はそこから明確に離れている。
理屈がないわけではない。2026年3月期のROE(自己資本利益率)は19.1%で、非鉄金属27社の中央値9.0%の2倍を超える。資本を使って稼ぐ力という一点では、業種の平均像とは別のグループに入っている。
ただしPBR6.44倍は、その稼ぐ力が今後も続くという前提を置いて初めて成り立つ水準だ。株価は目先の実績ではなく、データセンタ関連の需要がどこまで伸びるかという見通しを織り込んで動いている可能性が高い。
見えにくいものほど株価に効く、という言い方がここでは当てはまる。銅価格という見えやすい変数だけを追っていると、この水準の説明はつかない。
3. 1Qの営業利益は3.0倍。通期見通しは950億円から1,230億円へ
2027年3月期1Qは、売上高3,652億円、営業利益254億円、経常利益309億円、純利益222億円だった。
前年同期は売上高2,937億円、営業利益84億円である。売上の増加は2割強にとどまるのに、営業利益は3.0倍に膨らんだ。
営業利益率で見ると7.0%。2026年3月期通期の4.9%から一段の改善である。増収の効果が利益側に強く出ている局面だ。
この数字を受けて、会社は通期見通しを引き上げた。売上高1兆5,300億円(前期比17.0%増)、営業利益1,230億円(同92.6%増)、経常利益1,430億円(同88.5%増)、当期純利益1,050億円(同44.8%増)。期初に示していた営業利益950億円から、大きく上振れる水準だ。
では何が効いているのか。会社の説明によると、2026年3月期は光ファイバケーブル等のデータセンタ関連製品の増収、ワイヤハーネス等の自動車部品の増収、そして銅地金価格の高騰が売上を押し上げた。損益面では生産性の改善と販売価格の適正化が増益に働いたとしている。
見通しについても、データセンタ市場は活況が続くとみており、関連製品が収益の伸びに貢献すると見込む。一方で中東情勢の影響は現時点で合理的に予想しがたく、予想数値には織り込んでいないという。つまり、上振れの余地も下振れの余地も外部要因に残されている。
地域構成も押さえておきたい。2026年3月期の海外売上高は6,620億円で前期比3.8%増、海外比率は50.6%と前期から2.4ポイント下がった。海外が伸び悩んだのではなく、国内側の伸びがそれを上回ったと読むのが自然だろう。
4. 筆者コメント
なぜ、これほど値動きが荒くなるのか。
1カ月で下値と上値に5割の差がつく株は、決算の良し悪しだけでは説明できない。買っている側の時間軸が、人によってまるで違うからだ。
目先の四半期を見て買う投資家と、データセンタ向けの需要が何年も続くと踏んで買う投資家が、同じ市場で売買している。前者は少しの変化で降りるし、後者は下がったところで拾う。だからこそ振れる。
私が気をつけたいのは、この振れ幅を「材料の強さ」と読み替えないことだ。株価が大きく動いた事実は、需要の確かさを証明しない。証明するのは、そのあとに続く四半期の数字だけである。
1Qの営業利益率7.0%は、通期の4.9%から確かに前進した。ただし1四半期は1四半期でしかない。この水準が2四半期、3四半期と積み上がるのかどうか。そこを確かめる姿勢で次の開示を待ちたい。
