「厚生年金と国民年金では、実際にどれくらい受給額が違うのだろうか」と気になったことはありませんか。老後の家計設計を考えるとき、加入していた制度による受給額差を数字で押さえておくと視界が開けます。
厚生労働省が公表した「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、令和6年度末時点の老齢年金平均月額は、厚生年金(基礎年金込み)で15万289円、国民年金のみで5万9310円でした。差額は月9万979円で、年換算では約109万円の開きになります。
この記事では、厚生年金と国民年金の受給額の差と、差が生まれる3つの要因を、公表データと銀行窓口で見てきた相談実感から整理していきます。
- 老齢年金平均月額は厚生年金15万289円/国民年金5万9310円で、差は月9万979円。年換算では約109万円の開き
- 厚生年金は男性16万9967円・女性11万1413円と男女差が大きい。国民年金は男女差が比較的小さい
- 差の主な要因は「保険料計算のしくみ」「加入期間の長さ」「現役時の平均給与水準」の3点
1. 厚生年金と国民年金の平均月額
公表データから、老齢年金の平均月額を確認していきましょう。それぞれの平均額と、その背景を確認していきます。
1.1 老齢年金の全体平均
厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、令和6年度末の老齢年金受給者の平均月額は、厚生年金(基礎年金込み)で15万289円、国民年金のみで5万9310円でした。単純な差額は月9万979円で、年換算では約109万円の開きがあります。
この数字は現在受給中の人全体の平均であり、これから受給する世代が同じ水準になるとは限らない点には注意が必要です。加入履歴の傾向によっては、平均から大きく上下する可能性があります。
1.2 男女別の差
厚生年金の平均月額は男性が16万9967円、女性が11万1413円と男女で大きな差があります。一方、国民年金は加入期間に応じて満額が決まる制度のため、男女差は厚生年金ほど大きくありません。
厚生年金の男女差の背景には、現役時代の平均給与水準と加入期間の違いがあると考えられます。銀行窓口では「厚生年金の男女差は制度上の差ではなく、加入履歴の差だ」と説明する場面が多くありました。
厚生年金と国民年金の平均月額を、それぞれ総数と男女別で並べています/0
出所:厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」よりLIMO編集部作成
2. 差が生まれる3つの理由
受給額の差は、制度の設計と個人の加入履歴の両方から生まれています。主な3つの要因を整理していきます。
2.1 保険料計算のしくみが違う
国民年金は、加入者全員が同じ月額保険料を納めるしくみで、40年間全期間納付した場合の満額は令和8年度で月7万608円(昭和31年4月1日以前生まれは7万408円)です。給与水準に関係なく上限が決まっています。
厚生年金は、報酬に比例して保険料が決まる制度です。給与が高いほど保険料も高く、その分将来の年金額も上乗せされていくため、現役時の給与水準がそのまま受給額に反映されます。この構造の違いが、平均額の差の第一の要因です。
2.2 加入期間の長さ
厚生年金の加入期間が長いほど、老齢厚生年金(報酬比例部分)が積み上がります。会社員や公務員として長く働いた人は厚生年金の受給額が高くなりやすく、自営業やフリーランスの期間が長い人は国民年金のみになる期間が生じます。
2.3 現役時の平均給与水準
厚生年金の年金額計算では「平均標準報酬月額」が使われます。現役時代の給与が高いほど、この平均も高くなり、報酬比例部分の金額に直結します。この点も男女差の背景にある要因です。
厚生年金の年金月額が、男女でどのゾーンに集まっているかを整理しています/0
出所:厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」より算出しLIMO編集部作成
3. 分布から見る受給実態
平均値だけでは見えにくい実態を、分布のかたちから確認しておきましょう。
3.1 厚生年金 男性の分布
男性の老齢厚生年金は、月額15万〜20万円が全体の41.3%と最も多いゾーンです。次いで20万〜25万円が24.1%となり、両者を合わせると6割半がこの範囲に入ります。25万円以上は全体の3.4%にとどまり、高額層はごく限られています。
3.2 厚生年金 女性の分布
女性は月額10万〜15万円が全体の49.5%で最も多く、15万円以上は12.3%にとどまります。10万円未満が38.2%を占めており、男性より低い側に分布の中心が寄っている構造です。
3.3 国民年金の分布
国民年金は満額(令和8年度で7万608円)の80%以上を受給している人が中心層で、加入期間の抜けによって満額に届かないケースも一定数見られます。厚生年金より水準は低いものの、加入者全員に共通する土台として機能しています。
4. 受給額を確認する方法
実際の見込額は個人ごとに異なるため、公表データの平均だけで判断せず、自分自身の記録を確認するのが確実です。
4.1 ねんきん定期便で年金加入記録を確認
毎年誕生月に届くねんきん定期便には、これまでの厚生年金・国民年金の加入記録と、標準報酬月額の推移が記載されています。50歳未満は「これまでの加入実績に応じた年金額」、50歳以上は「60歳まで加入した場合の年金見込額」が確認できます。
4.2 ねんきんネットのシミュレーション
ねんきんネットでは、退職時期や今後の働き方を入力して将来の年金見込額を試算できる機能もあります。同じ加入履歴でも受給開始年齢を変えるだけで年金額がどう動くかを比較できるため、資金計画の材料として使いやすい機能です。
平均だけを見て「自分もこれくらい」と判断するのは避けたいところです。必ずご自身のねんきん定期便やねんきんネットで加入履歴を確認してください。
