「年金だけで生活していくのは正直不安…」「物価高で毎月のやりくりが大変」。そう感じている年金生活者の方は少なくないはずです。
実は、知っているかどうかだけで、年間で数万円単位の差が生まれる制度がいくつも存在します。国が全国一律で行っている給付や負担軽減の仕組みに加えて、住んでいる市区町村が独自に用意している優遇・助成制度もあります。
この記事では、年金生活者を支える国の基本制度と、自治体独自の制度を調べる方法、そして制度を使いこなすうえで押さえておきたい注意点を整理していきます。
- 年金生活者支援給付金は月額5,620円が基準額(令和8年度)。65歳以上・世帯全員非課税などの要件を満たす必要がある
- 高額療養費・高額介護サービス費は住民税非課税世帯だと自己負担の上限がぐっと下がる仕組み
- 多くの制度は「申請しないともらえない」。住民税非課税かどうかがカギになり、基準は毎年見直される
1. 年金生活者を支える「国の基本制度」
まずは、全国どこに住んでいても対象になりうる代表的な制度を確認していきましょう。
1.1 ①年金生活者支援給付金
年金生活者支援給付金は、年金収入等が一定基準以下の方に、年金に上乗せして支給される給付金です。老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の場合、対象となるのは(1)65歳以上で老齢基礎年金を受けている、(2)請求する方の世帯全員の市町村民税が非課税である、(3)前年の年金収入とその他所得の合計が一定額以下である、という3つの要件をすべて満たす方です。
令和8年度の基準額は月額5,620円です。実際の支給額は保険料納付済期間や免除期間に応じて按分計算されるため、40年間保険料を納めていれば満額に近づき、納付期間が短いと按分された金額になります。前年の年金収入等が基準額(昭和31年4月2日以後生まれの方で80万9,000円)を超えて90万9,000円以下の方には、減額された「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給されます。障害年金・遺族年金の受給者にも、それぞれ障害年金生活者支援給付金・遺族年金生活者支援給付金があります。
1.2 ②医療費・介護費の負担軽減制度
医療費が高額になった月は「高額療養費制度」で自己負担に上限が設けられます。
上限額は年齢と所得区分によって細かく分かれており、住民税非課税世帯であれば、課税世帯よりも大幅に低い上限額が設定されています。令和8年8月からは所得区分の細分化などの制度見直しが段階的に行われていますが、住民税非課税世帯への配慮は維持される設計です。
介護サービスの利用料についても、同様の仕組みが「高額介護サービス費」です。1か月の利用者負担が一定額を超えると、超えた分が払い戻されます。目安として、一般的な課税世帯は月4万4,400円、住民税非課税世帯は月2万4,600円、年金収入とその他の所得の合計が80万円以下などの方は月1万5,000円が上限です。どちらの制度も、上限額を超えた分の払い戻しは自動的には行われず、申請が必要になる点に注意してください。
1.3 ③税金・保険料の控除・減免
公的年金には「公的年金等控除」があります。65歳以上の方は、公的年金等の収入金額が330万円以下であれば控除額は110万円で、税金の計算上、その分所得が圧縮されます。
国民健康保険料や介護保険料にも、世帯の前年所得が一定基準以下の場合の軽減措置があります。国民健康保険料(税)の均等割は、所得水準に応じて7割・5割・2割軽減される仕組みが全国共通で設けられており、軽減の判定基準となる所得額は毎年度見直されます。介護保険料についても、市町村民税非課税世帯を対象とした独自の軽減段階を設けている自治体が多くあります。いずれも基準額は年度や自治体で異なるため、詳しくは加入先の窓口で確認するのが確実です。
相談の場でも、「高額療養費や年金生活者支援給付金の存在は知っていても、自分が対象かどうかまでは調べていない」という方が多い印象です。とくに住民税が非課税かどうかは、複数の制度で条件になっている重要なポイントです。ねんきん定期便や市区町村からの通知を受け取ったら、まず自分の世帯が非課税かどうかを確認する習慣をつけておくと、制度の見落としを防ぎやすくなります。



