年収・資産の多い人ほど投資をしている
投資をする人は、「年収の高い人」、「資産を多く持っている人」というイメージが一般的ではないでしょうか。
実際、フィデリティ退職・投資教育研究所のサラリーマン1万人アンケートで分析してみると、投資をしていると回答した人の比率は、年収300万円未満層では21.5%でしたが、500-700万円層になると47.3%に高まります。さらに1,000-1,500万円層では65.2%、そして2,000万円層では74.3%となっています。
一方、保有資産規模別でみると、投資をしていると回答した人の比率は100万円未満層で19.0%、500-1,000万円層では50.8%、2,000-3,000万円層で64.9%、5,000万円以上層では80.8%となります。
ここで興味深いのが、年収でも保有資産規模でも500万円を超えると、約半数の人が投資をしていると回答していることでしょう。言い換えると、年収でも保有資産規模でも500万円を超えるかどうかが投資をする際のカギといえますので、私はこれを「500万円の壁」と呼んでいます。
500万円未満の投資家が増加中
そうしたことを前提として、セグメント別の投資をしている人の比率を2016年の調査と比べてみます。その中で特徴的なのが、この「500万円の壁」の下セグメント、年収帯でいえば300-500万円層、資産額でいえば100-500万円層の変化幅が大きいことです。
年収300-500万円層の変化幅は2016年の29.9%から2019年の37.0%へと7.1ポイント上昇しました。300万円未満層(3.8ポイント上昇)、500-700万円層(5.4ポイント上昇)と比べて、大きな変化幅だということがわかります。
資産額でも100-500万円層は2016年の30.6%から2019年には39.8%へと9.2ポイントも上昇しました。500-1000万円層の10.1ポイント上昇には及びませんが、他のセグメントと比べると大きな変化であることがわかります。
積立投資の拡大が「500万円の壁」を取り払いつつあるのかもしれない
こうした変化はこれまで意識してきた「500万円の壁」が取り払われ始めたのではないかと感じさせるものです。その背景には、NISA(少額投資非課税制度)やDC(確定拠出年金)等が登場したことで、少額でできる積立投資が広がり始めているからではないでしょうか。
投資は「年収の高い人のもの」、「資産の多い人のもの」といった通念がやっと変わり始めたようです。
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合同会社フィンウェル研究所代表 野尻 哲史