5. 年金生活者支援給付金を受け取ると何が変わる?「非課税」のメリットを確認

年金生活者支援給付金は、年金に上乗せして受け取れるだけでなく、税金や社会保険料の面でも特徴があります。

2026年度の老齢年金生活者支援給付金は先述のように月額5620円が基準額です。

保険料の納付済期間などによって実際の給付額は異なりますが、基準額どおりなら1年間で約6万7000円となります。

ここでは、単に「いくらもらえるか」だけでなく、受け取った後の家計への影響についても確認しておきましょう。

5.1 給付金は所得税・住民税がかからない

年金生活者支援給付金は、所得税や住民税が課税されない「非課税所得」です。

そのため、給付金を受け取ったからといって、その金額に対して所得税や住民税がかかるわけではありません。

年金生活者支援給付金は、そもそも公的年金等の収入やその他の所得が一定基準以下の方を対象として、生活を支えるために年金へ上乗せして支給される制度です。

月々の金額だけを見ると、それほど大きく感じないかもしれません。しかし、毎月の生活費が限られる世帯にとって、税負担を増やさずに年間数万円の収入が加わることには意味があります。

5.2 翌年度の税金や社会保険料にも影響しない

もう一つ覚えておきたいのが、年金生活者支援給付金が所得税や住民税の課税対象となる所得に含まれないことです。

年金を受け取っていると、所得税や住民税だけでなく、国民健康保険料や後期高齢者医療保険料、介護保険料なども気になるところでしょう。

年金生活者支援給付金は、これらの算定の基礎となる所得には含まれないため、給付金を受け取ったことで翌年度の税金や社会保険料の負担が増える、という心配はありません。

つまり、「給付金を受け取ったら別の負担が増えてしまうのでは」と過度に心配する必要はない制度です。

5.3 年間約6万7000円の上乗せを家計にどう活かす?

2026年度の基準額5620円を1年間受け取ると、約6万7000円になります。夫婦ともに支給要件を満たす場合は、年間約13万5000円の上乗せです。

もちろん、実際の給付額は個人によって異なりますが、年間数万円の違いでも、年金生活が長くなれば家計への影響は無視できません。

例えば、毎月の食費や光熱費などの生活費に充てるほか、医療費や介護費用など、将来的に発生する可能性がある支出に備えて残しておく方法もあります。

重要なのは、対象となる可能性があるにもかかわらず、「少額だから」と手続きを後回しにしないことです。給付金は自動的に振り込まれるものではなく、原則として請求手続きが必要です。

6. 封筒が届いたら次に確認したい「ねんきん」の情報

前半では、年金生活者支援給付金の対象となる方に届く封筒について紹介しました。年金生活者支援給付金の請求書が届いたら、まずは必要事項を確認して手続きを進めることが大切です。

ただし、ここで終わりではありません。

年金を受け取る時期が近づいたら、「自分はいくら年金を受け取れるのか」「これまでの加入記録に間違いはないか」「実際に振り込まれる金額はいくらなのか」まで確認しておきたいところです。

その際に役立つのが、「ねんきん定期便」「ねんきんネット」「年金振込通知書」です。

6.1 「年金請求書」と「年金生活者支援給付金請求書」を確認

これから65歳になり、老齢年金を受け取り始める方にとって、まず重要なのが「年金請求書」です。

老齢年金は、受給資格を満たせば自動的に振り込まれるわけではなく、請求手続きを行う必要があります。日本年金機構から送付される「年金請求書」を確認し、必要事項を記入して提出します。

さらに、年金生活者支援給付金の支給要件を満たす可能性がある場合は、「年金生活者支援給付金請求書」も確認しましょう。

65歳を迎える方の中には、年金請求書と年金生活者支援給付金請求書が一体になった書類が送付されるケースもあります。

前半で紹介した「緑色」「うす緑色」「うすだいだい色」などの封筒が届いたら、「何かのお知らせだろう」と放置せず、まず中身を確認する習慣をつけておくと安心です。

なお、年金生活者支援給付金の請求書は、すでに年金を受給している方で新たに対象となった場合、毎年9月の第1営業日から順次送付されます。請求書には、請求した場合に支給される見込額(月額)も記載されています。

6.2 「ねんきん定期便」で受給見込額を見る

「自分の年金はいくらくらいになるのか」を確認する際に、まずチェックしたいのが毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」です。

ねんきん定期便には、これまでの年金加入記録などが記載されており、年金記録に「もれ」や「誤り」がないかを確認するためにも活用できます。

ここで注意したいのが、年齢によって「年金見込額」の表示方法が異なることです。

50歳未満の場合は、これまでの加入実績をもとにした老齢年金の額が表示されます。一方、50歳以上の場合は、現在の年金制度に60歳まで同じ条件で加入し続けると仮定した年金見込額が表示されます。

そのため、50歳未満の方が定期便を見て「この金額が将来の年金額」と考えるのは早計です。

まずは「これまでどのくらい加入してきたのか」を確認し、50歳以上になったら「現在の働き方を続けた場合、将来いくらくらいになるのか」という視点で確認するとよいでしょう。

また、35歳、45歳、59歳の方には、通常のハガキとは異なる封書の「ねんきん定期便」が送付されます。2026年度についても、日本年金機構がそれぞれの様式と見方を公開しています。

6.3 「ねんきんネット」で年金記録を確認する

さらに一歩踏み込んで確認したい場合は、「ねんきんネット」が便利です。

ねんきんネットでは、パソコンやスマートフォンから24時間いつでも年金記録を確認できるほか、将来の年金見込額を試算したり、通知書を確認したりすることもできます。

特に便利なのが、将来の働き方などを変えて試算できる機能です。

例えば、現在と同じ条件で60歳まで働き続けた場合だけでなく、今後の働き方や年金を受け取り始める年齢、国民年金保険料の未納分を追納した場合など、条件を設定して年金見込額を試算できます。

「65歳から受け取るといくらなのか」「働き続けたらどう変わるのか」などを具体的な数字で比較できるため、老後の生活設計を考えるうえでも役立ちます。

ただし、ねんきんネットの年金見込額試算には注意点もあります。原則として本人の年金記録をもとにした試算であり、加給年金など配偶者や扶養者に関する情報が反映されない場合があります。

つまり、「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」に表示された金額だけを見て、実際の受給額を完全に判断するのではなく、気になる点があれば年金事務所などで確認することも大切です。

6.4 年金の振込額は「年金振込通知書」で確認

実際に年金を受け取り始めた後は、「年金振込通知書」を確認しましょう。

ここで確認したいのは、単なる年金額ではなく「実際に口座へ振り込まれる金額」です。

年金振込通知書には、1回に支払われる年金支払額に加えて、介護保険料、国民健康保険料・後期高齢者医療保険料、所得税、住民税などの控除額、そして最終的な「控除後振込額」が記載されています。

例えば、「年金月額は15万円と聞いていたのに、口座にはそれより少ない金額しか入っていない」と感じた場合も、通知書を見れば、どのような控除が行われているのかを確認できます。

また、年金は原則として2カ月分がまとめて支払われるため、家計管理では「月額」だけでなく、「実際に1回の支給日にいくら振り込まれるのか」を把握しておくことも重要です。

なお、年金振込通知書は「ねんきんネット」から確認することもできます。郵送された書類を紛失した場合などにも活用できます。

7. まとめ:封筒を開けるだけで年間約6万7000円、夫婦なら13万5000円の差に

2026年度の老齢年金生活者支援給付金は、基準額で見ると1人あたり年間約6万7000円、夫婦そろって要件を満たせば年間約13万5000円が年金に上乗せされます。しかも非課税所得のため、受け取った分だけ純粋に家計の助けになります。

ただし、この上乗せは「請求してはじめて受け取れる」制度です。日本年金機構から届く封筒を開けずに置いたままにしている限り、対象者であっても給付金は1円も振り込まれません。

うす緑色、緑色、うすだいだい色――封筒の色は年金の受給状況によって異なりますが、共通しているのは「開けて、記入して、送り返す」というシンプルな手続きで完了する点です。難しい書類だと構えず、まずは中身を確認してみてください。

そのうえで、ねんきん定期便やねんきんネットで加入記録や見込額を確認しておけば、実際にいくら振り込まれるのかもあらかじめ把握できます。物価の上昇が続くいまだからこそ、受け取れるはずの給付金を取りこぼさない工夫が、老後の家計を守る一歩になるはずです。

8. 【筆者コメント】

熊谷 良子

物価が上がり続けるいま、年間数万円の違いは決して小さくありません。とはいえ、この給付金は「制度を知っているだけ」では意味がなく、自分の手で請求してはじめて受け取れるものです。

もし今、うす緑色や緑色、うすだいだい色の封筒に心当たりがあるなら、後回しにせず、まずは封を開けて中身を確認してみてください。記入して投函するだけの数分の作業が、これからの年金生活を少し楽にしてくれるはずです。あわせて、ねんきん定期便やねんきんネットで自分の年金見込額や加入記録を確認しておけば、実際にいくら振り込まれるのかもあらかじめ把握できます。年金生活が長くなるほど、この差は積み重なっていきます。「あとで確認しよう」ではなく、できることから、今日ひとつずつ始めてみましょう。もし身近に対象となりそうな家族がいれば、一声かけてあげるのも良いかもしれません。小さな一歩が、これからの安心につながるはずです。

 

参考資料

池上 翠