5. 見落としがちな注意点も。親の年金を家族が確認するときに見るべき「3つのお金」
親の老後生活を考えるとき、「年金はいくらもらっているの?」だけを確認すれば十分というわけではありません。
実際の生活を支えているお金がどのくらいあるのか、そして利用できる公的制度がないかまで含めて確認することが大切です。
5.1 毎月の年金はいくら?「振込額」を確認する
まず確認したいのが、実際に銀行口座へ振り込まれている年金額です。年金の「額面」と、実際に受け取る「手取り額」は同じとは限りません。
税金や社会保険料などが差し引かれる場合があるため、親の生活費を考えるときには、年金額そのものだけでなく、実際に口座へ入ってくる金額を見ることが大切です。
また、年金は原則として偶数月に前2カ月分がまとめて支払われるため、通帳の入金額だけを見て「毎月これだけもらっている」と判断すると、計算を間違える可能性があります。
家族が確認するなら、「年金はいくら?」と聞くだけでなく、年金振込通知書なども一緒に確認すると、より正確に把握できます。
5.2 「年金生活者支援給付金」を受け取っているか確認する
次に確認したいのが、今回ご紹介している「年金生活者支援給付金」です。
厚生労働省によると、この制度は公的年金等の収入や所得が一定基準以下の年金受給者を対象に、年金に上乗せして支給するものです。受給には請求手続きが必要です。
前半で紹介したように、2026年度の老齢年金生活者支援給付金は、月額5620円が基準額となっています。年間にすると約6万7000円ですから、家計にとって決して小さな金額ではありません。
親の年金について確認する際には、「年金はいくらもらっているか」だけでなく、「年金生活者支援給付金は受け取っている?」と確認してみるのも一つの方法です。
ただし、子どもが親に代わって勝手に請求するのではなく、本人が対象となるかを確認し、必要な手続きは本人の意思に沿って行うことが基本です。
5.3 年金以外の「公的な支援」も確認する
老後の家計を考えるとき、年金だけでなく医療や介護にかかる費用も無視できません。
親が病院に通うことが増えたり、介護サービスを利用するようになったりすれば、年金以外の公的制度が関係してくることがあります。
そのため、年金はいくらあるかだけでなく、「医療費や介護費用について利用できる制度はないか」という視点も持っておきたいところです。
特に介護については、厚生労働省が全国の市町村に「地域包括支援センター」を設置しています。地域包括支援センターは、高齢者の総合相談や権利擁護、介護予防などを行う窓口です。2025年4月末時点で全国に5487か所が設置されています。
「介護が必要になったけれど、どこに相談すればいいか分からない」という場合も、家族だけで抱え込まず、こうした公的な相談窓口を利用できます。
6. 親に「緑の封筒」が届いたら?家族が確認しておきたい年金手続き
親が年金を受け取っている場合、子ども世代がすべての手続きを把握しておく必要はありません。ただ、年金や給付金に関する書類が届いたときに、「これは何の通知なのか」「手続きが必要なのか」を一緒に確認できるだけでも、受け取り漏れを防ぐきっかけになります。
特に離れて暮らす親の場合は、重要な書類が届いていることを子どもが知らないケースもあるでしょう。
厚生労働省のデータが示すように、子ども世代が65歳以上と同居している世帯は、減少傾向にあります。
今や高齢者の暮らしは、夫婦や単身、子世代との同居などさまざまな形になっていることがわかります。だからこそ、「親のお金のことは親本人に任せておけばいい」と一律に考えるのではなく、必要に応じて家族が確認できる環境を作っておくことも大切です。
6.1 高齢の親と「お金の情報」を共有しておく
親が元気なうちは、年金のことを子どもが詳しく知らなくても、それほど問題を感じないかもしれません。
しかし、年金関係の通知や給付金の案内、医療・介護に関する書類などは、年齢を重ねるほど増えていきます。
そこで、すべての資産を家族が管理するという意味ではなく、少なくとも、
- どの銀行口座に年金が振り込まれているのか
- 年金関係の書類をどこに保管しているのか
- 給付金などの案内が届いたとき、どこへ相談するのか
といった基本的な情報だけでも、親子で共有しておくと安心です。
大切なのは、親の財産を子どもが勝手に管理することではありません。本人の意思を尊重しながら、「分からない書類が届いたら一緒に確認する」という関係を作っておくことです。
6.2 まず確認したいのは「何の書類なのか」
今回の「年金生活者支援給付金請求書」のように、年金受給者に届く書類のなかには、手続きが必要なものがあります。
そのため、親から「何か年金の封筒が届いた」と相談された場合は、いきなり内容を判断するのではなく、まず書類のタイトルを確認しましょう。
確認したいのは、次の4点です。
- 何の制度に関する書類なのか
- 手続きは必要なのか
- 提出期限はあるのか
- どこへ提出・問い合わせをすればよいのか
今回の年金生活者支援給付金については、厚生労働省も「支給要件を満たし、認定請求の手続きを行う必要がある」と案内しています。つまり、対象になる可能性があっても、請求手続きをしなければ受け取れない点には注意が必要です。
前半で紹介したように、2026年度の老齢年金生活者支援給付金は月額5620円を基準として、保険料の納付済期間などに応じて支給額が計算されます。
「親のところに届いたけれど、よく分からないから放置している」という場合は、まず書類を一緒に確認してみるとよいでしょう。
6.3 「親に任せきり」にしないほうがいい場面も
もちろん、年金の手続きは基本的に本人が行うものです。しかし、年齢を重ねるにつれて、年金だけでなく医療や介護など、暮らしに関する手続きも増えていきます。
厚生労働省の「2025(令和7)年 国民生活基礎調査」では、介護が必要となった主な原因についても調査されています。
介護が必要となった主な原因について、「要支援者」では「高齢による衰弱」が 17.7%で最も多く、次いで「関節疾患」が 14.8%、「要介護者」では「認知症」が 23.6%で最も多く、次いで「骨折・転倒」が 14.8%となっています。
こうしたことを考えると、「今は一人で手続きできているから大丈夫」と考えるだけでなく、元気なうちから親子でお金や公的制度について話しておくことが重要です。
7. まとめにかえて:「年金の通知」は放置せずに必ず確認
2026年度の「年金生活者支援給付金」は、物価高に合わせた+3.2%の増額改定により、老齢給付金で月額5620円(夫婦で年間約13.5万円)と、年金生活のやりくりを支える貴重な収入源となります。
しかし、どれほど手厚い制度であっても、自ら請求書を提出しなければ「支給額はゼロ」のままになってしまいます。
今月(9月)は、新たに対象となった世帯へ「うす緑色の封筒」が届く真っ最中です。ご自宅のポストや未開封の郵便物の中に案内が眠っていないか、今すぐ確認してみましょう。また、離れて暮らすご両親がいる方は、「緑色の封筒届いていない?」と一声かけてあげることも大切です。
なお、万が一申請が遅れても2027年1月4日までに日本年金機構に届くように手続きを行えば前年10月分まで遡って支給される特例がありますが、放置せず気づいた時点で早めに投函するのが安心です。(※この時期は給付金をかたった偽SMSや詐欺電話も増えるため、公的機関が口座暗証番号やマイナンバーカードの写真を求めることは絶対にない点にもご注意ください。)
「申請漏れ」を防ぎ、もらえるはずのお金をしっかり受け取って、これからの秋・冬の生活設計に役立てていきましょう。
年金や給付金の制度は複雑に見えるため、「よく分からないから」と後回しにしてしまう気持ちもよく分かります。
ただ、今回ご紹介した年金生活者支援給付金のように、書類が届いたタイミングを逃すと、申請の機会そのものを逃しやすい制度もあります。まずはご自宅に届いている郵便物を確認するところから始めてみてください。
そして、離れて暮らすご家族がいる方は、電話やメールで「緑の封筒、届いていない?」とひとこと聞いてみるだけでも、大きな安心につながります。使える制度は漏れなく活用しながら、これからの季節を穏やかに過ごしていただければと思います。
参考資料
- 厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」
- 日本年金機構「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)が届いた方へ」
- 日本年金機構「老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の概要」
- 厚生労働省「年金生活者支援給付金制度について」
- J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」
- 厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況」
池上 翠
