3. 貯蓄と「必要額」ギャップを埋める資産形成のポイント
老後に必要な金額と現在の貯蓄にギャップがある世帯も多いでしょう。
このギャップを埋めるには、給与振込口座から別口座へ自動で資金を移す「先取り貯蓄」と、税制優遇のある制度を組み合わせて対策するのがおすすめです。
3.1 新NISAで非課税運用を続ける
2024年に始まった新NISAは、つみたて投資枠が年120万円、成長投資枠が年240万円で、合計年360万円まで非課税で投資できる制度です。
生涯投資枠は1800万円で、うち成長投資枠の上限は1200万円です。
つみたて投資枠を毎月一定額で使えば、値動きの影響を抑えながら非課税で資産運用をおこなえます。ギャップが大きい人ほど、早い段階での積立開始が有効です。
なお、投資信託などで運用する資産には価格変動リスクがあり、購入時の金額を下回る場合もあります。無理のない金額で続けられるかどうかを基準にしてください。
3.2 iDeCoで所得控除も味方にする
iDeCoも資産形成の制度ですが、掛金の全額が所得控除となります。そのため、節税をしながら資産運用が可能です。
2024年12月の改正では、確定給付企業年金などに加入する会社員のiDeCo拠出上限が月1万2000円から月2万円に引き上げられました。企業型DCの事業主掛金などと合算し、月5万5000円を超えない範囲で拠出できる仕組みです。
ただし、iDeCoの資産は原則60歳まで引き出せません。近い時期に使う予定のある資金は、先取り貯蓄の側に置いておくほうが安全です。
4. 平均や必要額を目安に、先取り貯蓄と非課税制度を今すぐ始めましょう
2025年の平均貯蓄は二人以上世帯で2059万円、中央値は1264万円でした。J-FLECの調査では、二人以上世帯が考える老後に必要な額は全国平均2267万円です。
40歳代・50歳代で特にギャップが大きく、60歳代以降は平均が必要額を上回る家計が増えます。まずご自身の年代の平均・中央値・必要額を確認し、不足があれば先取り貯蓄の仕組みを整えてください。
そのうえで、新NISAのつみたて投資枠やiDeCoを無理のない金額で活用してください。今日から一歩ずつ、老後に向けた資産形成を始めましょう。
ファイナンシャル・プランナーとしてライフプランのご相談をお受けする際も、最初に確認するのは金額そのものではなく、順番のほうです。年金の見込み額と退職金で土台を固め、そのうえで足りない分をどう用意するかという順に進めると、数字が具体的になります。
先取り貯蓄が効くのは、意思の力に頼らずに済むからです。給与が振り込まれた時点で別の口座に移してしまえば、残った分で暮らす形になります。金額の大小より、仕組みとして自動になっているかどうかが続くかどうかを分けます。
新NISAとiDeCoは、性格が違います。新NISAはいつでも引き出せる一方、iDeCoは原則60歳まで引き出せません。そのぶんiDeCoには掛金の全額が所得控除になるという強みがあります。どちらか一方ではなく、使う時期で分けて考えてみてください。
なお、制度の内容や拠出できる上限は改正されることがあり、税の取り扱いはお勤め先の年金制度によっても変わります。ご自身に当てはまる条件は、公的機関の情報や勤務先の担当部署でご確認ください。
参考資料
- 総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)2025年(令和7年)平均結果」
- J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査2025年」
- 金融庁「新しいNISA」
- iDeCo公式サイト(国民年金基金連合会)「制度改正について(2024年12月1日からの改正)」
- LIMO「【全世代(20~70歳代)比較】貯蓄額の平均・中央値はいくら?単身・二人以上世帯で比較すると見えた「お金がある人・ない人の差」」
苛原 寛
