ひとり暮らしの高齢者が増えています。自分の親のこの先を考える人もいますし、いずれ自分がその立場になると感じている人もいるでしょう。

厚生労働省の「2025年 国民生活基礎調査の概況」によると、65歳以上の者のいる世帯のうち単独世帯は933万5000世帯で、構成割合は「33.8%」と最も多くなっています。1986年は13.1%でしたので、40年で約2.6倍に増えた形です。

この記事では、ひとり暮らしの高齢者が使える給付や支援を15個取り上げ、住んでいる場所にかかわらず使えるものと、自治体ごとに違うものに分けて見ていきます。

ココがポイント
  • 65歳以上の者のいる世帯のうち単独世帯は33.8%で最も多く、「ひとり暮らしであること」が対象要件になっている支援制度がある
  • 老齢年金生活者支援給付金は令和8年度で月5620円。世帯全員が住民税非課税であることが要件のひとつになる
  • 家賃の一部を助成する自治体もあり、目黒区は65歳以上のひとり暮らし世帯に月1万5000円まで助成している

1. ひとり暮らしの高齢者は65歳以上の世帯の「33.8%」。使える支援を15個に分けて紹介

ひとり暮らしの高齢者向けの支援について、大きく4つのグループに分けてみていきましょう。

  • 全国共通の給付と負担軽減
  • 自治体独自の現金の助成
  • 身寄りがない場合の費用の助成
  • ひとり暮らしであること自体が条件になる見守りの支援

ひとり暮らしの高齢者が使える支援制度15選1/3

ひとり暮らしの高齢者が使える支援制度15選を4つのグループに分けた一覧図

出所:LIMO編集部作成

まず、ひとり暮らしの高齢者がどれくらい増えたのかを確認しておきます。

65歳以上の者のいる世帯の世帯構造の推移(1986年から2025年)2/3

65歳以上の者のいる世帯における単独世帯の割合が13.1%から33.8%に増えた推移グラフ

出所:厚生労働省「2025年 国民生活基礎調査の概況」をもとにLIMO編集部作成

三世代世帯が44.8%から5.8%まで減る一方で、単独世帯と夫婦のみの世帯を合わせると65.8%を占めるようになりました。ひとり暮らしを前提にした支援が用意されてきたのには、こうした変化も背景にあると考えられます。

2. ひとり暮らしの高齢者が受け取れる全国共通の給付と負担軽減の4制度

最初に、住んでいる場所にかかわらず使える制度を見ていきます。

国で決まっていることと、お住まいで変わること3/3

判定基準は国が決め、保険料額や段階数は自治体が決めるという切り分けを示した図

出所:LIMO編集部作成

2.1 老齢年金生活者支援給付金

老齢基礎年金を受け取っている人のうち、所得が一定額以下の人に上乗せして支給されるお金です。令和8年度の給付基準額は月「5620円」で、令和7年度の5450円から3.2%引き上げられました。

支給の要件は3つあります。65歳以上で老齢基礎年金を受け取っていること、同じ世帯の全員が市町村民税非課税であること、前年の年金収入額とその他の所得の合計が80万9000円以下であることです。

2つめの要件が、ひとり暮らしの人にとっては通りやすい部分になります。世帯の全員が非課税かどうかを見るため、同居している家族に課税されている人がいると対象から外れますが、ひとり暮らしなら本人だけの判定になるからです。

なお、保険料の免除期間がある人は、納付済期間だけの人より単価が高く計算されることがあります。免除を受けていた期間があると給付金が減ると思われがちですが、実際には押し上げる方向に働く仕組みです。

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2.2 後期高齢者医療制度と国民健康保険の保険料の軽減

所得が低い世帯は、保険料のうち加入者全員が同額を負担する均等割の部分が軽くなります。軽減の割合は7割、5割、2割と分かれていて、この判定に使う所得の考え方は全国共通です。

判定は世帯の総所得金額等を合計した額で行うため、ここでもひとり暮らしの人は対象になりやすくなります。一方で、均等割額そのものや所得割の率は保険者ごとに違いますので、いくら軽くなるかは住んでいる場所によって変わります。

東京都後期高齢者医療広域連合の場合は、所得割額についても独自の軽減を設けています。同じ所得でも他の都道府県とは負担額が異なることがあるため、金額は加入している広域連合の資料で確認してください。

負担が増える方向の変化もあります。令和8年度から、医療保険の保険料に子ども・子育て支援金分が加算されました。国民健康保険では従来の3区分に子ども・子育て支援金分が加わって4区分となり、賦課限度額の合計も109万円から113万円に引き上げられています。後期高齢者医療制度では、従来の医療分にこの支援金分を合わせて納めることになります。

あわせて、令和8年度と令和9年度に限り、均等割額の7割軽減が「医療分」について7.2割に拡大される措置がとられています。年度限りの措置ですので、来年度以降は取り扱いが変わることもあります。

2.3 介護保険料の第1段階

介護保険料は所得に応じた段階に分かれており、最も低い第1段階に当てはまると負担がかなり軽くなります。生活保護を受けている人、または本人と世帯全員が住民税非課税で、前年の課税年金収入額と合計所得金額の合計が80万9000円以下の人が対象です。

この80万9000円という金額は、国の指針にもとづいて令和7年度から改定されたものです。それまでは80万円でした。

段階の数そのものは自治体が条例で決めています。国の標準は第9期にあたる令和6年度から令和8年度で9段階から13段階に細分化されましたが、宮崎県延岡市のように13段階を15段階に広げて上げ幅をゆるやかにした自治体もあります。

そのため、第1段階の保険料額も自治体ごとに異なります。基準額と乗率の両方が住んでいる市区町村の条例で決まる仕組みだと理解しておくとよいでしょう。

2.4 高額療養費制度の低所得者の区分

医療費の自己負担が高くなったときに、上限を超えた分が戻ってくる制度です。住民税非課税の世帯にはさらに低い上限が設けられていて、ここでも世帯単位の判定がひとり暮らしの人に有利に働きます。

この制度は令和8年8月診療分から見直されました。東京都後期高齢者医療広域連合が示す限度額では、住民税非課税世帯で世帯全員の所得が0円となる区分Ⅰの場合、外来は個人ごとに月8000円、外来と入院を合わせた世帯ごとの上限は月1万5700円です。

今回の見直しで新たに設けられたのが、外来と入院を合わせた世帯ごとの年間の上限額です。8月から翌年7月までの1年間で、区分Ⅰは18万円が上限になります。月ごとの負担が積み上がっても、年間の上限を超えた分は還付を受けられる仕組みです。

なお、区分Ⅰには外来だけを対象とした年間の上限は設けられていません。還付の手続きの進め方は、お住まいの市区町村の後期高齢者医療の担当窓口で確認してください。

ただし、負担が重くなる部分もあります。住民税非課税世帯のうち区分Ⅰに当てはまらない区分Ⅱは、外来が月1万1000円、外来と入院を合わせた世帯ごとが月2万5700円と、区分Ⅰより高く設定されています。

同じ非課税世帯でも区分がひとつ違うと上限が変わりますので、自分がどちらに当てはまるのかを確認しておくと安心です。

ここまでの4制度は判定の考え方が全国共通ですが、金額は保険者ごとに違います。実際の負担額は、お住まいの市区町村や加入している広域連合の窓口で確認してください。

3. ひとり暮らしの高齢者に現金を助成する自治体独自の4制度

次に、自治体が独自に行っている現金の助成を見ていきます。ここでは東京都内の例を挙げますが、同じような制度を持つ自治体は各地にありますので、名称を手がかりに探してみてください。

3.1 高齢者世帯等居住継続家賃助成(目黒区)

目黒区は、区内の民間賃貸住宅に住み続けられるように家賃の一部を助成しています。対象には「65歳以上の一人暮らし世帯」が明記されており、単身であることが不利にならない制度です。

助成額は月額家賃の20%で、1人世帯は月「1万5000円」が上限です。所得の要件は、1人世帯で前年の年間総所得が266万8000円以下となっています。

注意したいのは募集の時期です。令和8年度は6月10日から7月10日までの募集で、すでに終了しています。毎年この時期に募集がありますので、来年度に向けて今から要件を確認しておくとよいでしょう。

3.2 家賃等債務保証料助成(新宿区)

賃貸住宅を借りるときの保証会社の保証料を助成する制度です。新宿区では60歳以上の人のみで構成される世帯が対象で、単身世帯は「3万6000円」が上限になっています。

保証人を頼める相手がいないという相談は、ひとり暮らしの高齢者から多く寄せられる話です。保証会社を使う前提で助成が用意されているのは、実務的にありがたい仕組みだと感じます。

前年度の住民税を滞納していないことが要件になっており、生活保護などの公的給付を受給中の世帯は対象外です。申請できる期間は保証委託契約を結んだ日の翌日から1年間です。

3.3 高齢者世帯住み替え支援助成(北区)

北区は、満65歳以上の高齢者のみの世帯が区内で転居する際に、1世帯5万円を1回限りで助成しています。ひとり暮らしの人も高齢者のみの世帯に含まれます。

建物の取り壊しなどで立ち退きを求められた場合は、礼金と仲介手数料の合算額について上限15万円の助成もあります。所得の要件は1人世帯で総所得584万4000円以下と、比較的ゆるやかです。

申請は住民基本台帳上の転居日から1年以内と決まっています。引っ越しが済んでから思い出しても間に合うことがあるため、心当たりのある人は確認してみてください。

3.4 東京都シルバーパス

都営交通や都内の民営バスなどを利用できるパスです。現金が支給される制度ではありませんが、外出の頻度によっては年間の負担軽減額が最も大きくなる可能性があります。

令和7年度の住民税が非課税の人は1000円で購入できます。住民税が課税されていても、前年の合計所得金額が135万円以下の人は経過措置として同じ1000円になります。

満70歳になる月の初日から購入できますが、令和8年度の更新手続きは郵送で行われ、申請期限は8月16日でした。更新の時期を逃さないよう、案内が届いたら早めに手続きを進めるのが安心です。

これらは自治体ごとの制度ですので、同じ名称の助成があるとは限りません。

4. 身寄りがないひとり暮らしの高齢者の費用を助成する3制度

頼れる親族がいない場合に備えた制度も用意されています。判断能力やお金の管理、住まいの確保といった、ひとり暮らしで不安になりやすい部分を支えるものです。

4.1 成年後見制度利用支援事業

判断能力が十分でなく、しかも身寄りがないなどの理由で親族が後見開始の申立てをできない場合に、市区町村長が代わって申立てを行う仕組みです。あわせて、申立てにかかる費用や後見人などへの報酬について助成を受けられることがあります。

厚生労働省が利用促進を進めている事業で、多くの市区町村で実施されています。資力の状況に応じて助成を行うことを明記している自治体もあります。

助成の額や要件は自治体ごとに異なります。まずは地域包括支援センターか自治体の福祉担当課に相談するのが早い進め方です。

4.2 日常生活自立支援事業

社会福祉協議会が行っている事業で、福祉サービスの利用手続きの支援に加えて、日常的なお金の管理や大切な書類の預かりを頼めます。年金証書や預貯金の通帳、保険証書などを預かってもらえるのは、ひとり暮らしの人にとって現実的な安心につながります。

利用料は実施主体ごとに設定されており、訪問1回あたりの平均は1200円です。生活保護を受給している世帯は無料になります。

対象は、認知症や障害などによって日常生活に必要な判断を自分だけで行うのが難しい人です。窓口は市区町村の社会福祉協議会などになります。

4.3 家賃債務保証と居住サポート住宅

一般財団法人高齢者住宅財団は、高齢者世帯などが賃貸住宅に入居する際の家賃債務を保証し、連帯保証人の役割を担っています。滞納した家賃は12か月分まで、原状回復費用や訴訟費用は家賃9か月分を限度に保証する仕組みです。

保証料は保証期間が2年の場合で月額家賃の35%となり、契約時に支払います。前に触れた新宿区の家賃等債務保証料助成のような制度と組み合わせられることもありますので、自治体の窓口で確認するとよいでしょう。

また、住宅セーフティネット法の改正により、居住支援法人が大家と連携して提供する居住サポート住宅の仕組みが整えられました。単身高齢者の入居の不安を解消することが目的として挙げられています。

いずれも制度の運用は地域の居住支援協議会や居住支援法人が担っています。自治体の住宅担当課で、地元の相談先を教えてもらってください。

5. ひとり暮らしであることが条件になる見守りと在宅生活の4制度

最後に、ひとり暮らしであること自体が対象要件になっている事業を見ていきます。金額の大きさよりも、日々の安心に直結する部分を支えるものだと考えるとわかりやすいでしょう。ここでは世田谷区を例に挙げます。

5.1 救急通報システム「愛のペンダント」

自宅で急に具合が悪くなったときに、ペンダント型のボタンを押すと民間の受信センターへ通報される仕組みです。必要に応じて救急車の出動や警備会社の現場派遣が行われます。

対象は65歳以上で、ひとりぐらし、高齢者のみ世帯、または日中独居世帯の人のうち、慢性疾患があるなど日常生活を営むうえで常時注意を要する人です。設置時の利用者負担は8000円ですが、申請年度の前年度に住民税が非課税だった人は免除されます。

5.2 ひとりぐらし高齢者見守り機器サービスの利用料の補助

民間の見守り機器サービスを使う際の月額利用料について、1人あたり月最大1000円が補助されます。対象は70歳以上でひとりぐらしの人で、所得の制限は設けられていません。

緊急通報型、センサー型、生活リズム型の3種類から選べる形になっています。申し込みは区ではなく登録事業者に直接行う点が、他の制度と違うところです。

5.3 入浴券の支給と福祉電話訪問

区内に住民登録のある満65歳以上の人へ、公衆浴場で使える入浴券を支給する事業です。ここで注目したいのは、ひとり暮らしかどうかで支給される枚数が変わる点です。

自宅に風呂のないひとりぐらしの人は年間60枚、風呂のあるひとり暮らしの人は年間30枚が限度になります。高齢者のみ世帯で風呂がある場合は年間12枚ですので、ひとり暮らしであることが枚数に反映される仕組みです。

あわせて福祉電話訪問という事業もあり、65歳以上のひとり暮らしの人や高齢者のみ世帯へ協力員が定期的に電話をかけています。利用料は無料で、必要に応じて緊急連絡先への通報も行われます。

5.4 火災安全システムの給付

防火の配慮が必要な人に電磁調理器などを給付する事業です。要支援や要介護の認定を受けている人、またはひとり暮らしの人が対象で、低所得の人には免除があります。

ただし、自動消火装置とガス安全システムの給付は令和8年3月で終了しています。以前の案内を見て問い合わせると、すでに扱いが変わっていることもあります。

この分野の事業は特に自治体差が大きく、名称もそれぞれ違います。お住まいの市区町村の高齢福祉担当課か地域包括支援センターで、何が用意されているか聞いてみてください。

太田 彩子

後期高齢担当だった頃、保険料の軽減は世帯の状況で判定が変わるため、ひとり暮らしの方には「まず今の世帯の状況を確認しましょう」とお伝えしていました。制度の名称は自治体ごとに違いますので、名称で探すより担当課に用件を伝えるほうが早く見つかりやすいです。