6. 【元自治体職員の話】ひとり暮らしの高齢者が支援を取りこぼしていた場面

役場で後期高齢担当をしていた頃、保険料の軽減について窓口で相談を受けることがよくありました。そのなかで印象に残っているのは、制度を知らなかったというより、自分が対象だと思っていなかったという相談です。

たとえば、保険料の軽減の判定は世帯の総所得金額等を合計した額で行います。ひとり暮らしの方は本人だけの判定になるため対象になりやすいのですが、「収入が少ないから逆に何も使えないのだろう」と考えて相談に来ない方もいました。

また、見守りや配食といった事業は高齢福祉の担当課が所管しています。保険料の相談で来られた方に「そういう事業もありますので担当課で聞いてみてください」とお伝えしても、別の窓口へ回ることに気が引けて、そのまま帰られることもありました。

制度が縦割りになっているのは事実です。その分、最初の相談先をひとつに絞っておくと動きやすくなると実感することが多かったものです。

7. 【探し方】ひとり暮らしの高齢者向けの支援を自分の自治体で調べる3つのルート

ここまで挙げた制度は、名称も要件も自治体ごとに違います。自分の住んでいる場所で何が使えるのかを調べる方法を3つ挙げておきます。

7.1 地域包括支援センターに相談する

制度名がわからなくても相談できるのが、地域包括支援センターの強みです。「ひとり暮らしで、緊急時の連絡が心配」「家賃の負担が重い」といった用件で伝えると、担当課につないでもらえます。

高齢福祉、介護保険、住宅、社会福祉協議会と所管が分かれている事業を横断して見てもらえるため、最初の一歩としてはここが確実です。

7.2 自治体サイトで「ひとり暮らし」と検索する

自治体のサイトには、ひとり暮らしの高齢者向けの事業をまとめたページが置かれていることがあります。世田谷区の場合は「ひとりぐらし・高齢者のみ世帯の方へのサービス」という一覧が用意されています。

検索するときは「ひとり暮らし」ではなく「ひとりぐらし」とひらいた表記も試してみてください。行政の事業名はひらいた表記が使われていることが多く、漢字だけで探すと出てこないこともあります。

7.3 社会福祉協議会に直接あたる

お金の管理や書類の預かり、家事の手伝いといった支援は、自治体ではなく社会福祉協議会が窓口になります。日常生活自立支援事業もこちらが担当です。

役所で見つからなかった支援が社会福祉協議会にあることは珍しくありません。役所と社会福祉協議会は別の組織だと覚えておくと、探す範囲が広がります。

8. 【落とし穴】ひとり暮らしの高齢者が申請前に確認したい3点

対象になりそうだと思っても、要件の細かい部分で外れることがあります。相談を受けていて多かったつまずきを3つ挙げます。

8.1 「ひとり暮らし」の定義が思ったより狭い

住民票が単身であればひとり暮らしと認められる、とは限りません。世田谷区の定義では、ひとりぐらしとは「一緒に生活している家族などがいない65歳以上の方で、近隣(徒歩5分以内)に、いつもその方の様子を知ることができる18歳以上65歳未満の親族等のいない方」とされています。

つまり、近所に子どもが住んでいる場合は対象から外れることもあるのです。この考え方は他の自治体でも用いられていますので、申請の前に定義を読んでおくと行き違いを防げます。

8.2 募集の期間が決まっている制度がある

家賃の助成のように、年に1回の募集期間だけ受け付ける制度があります。目黒区の高齢者世帯等居住継続家賃助成は令和8年度が6月10日から7月10日まででした。

思い出したときに申請できるものと、時期を待つ必要があるものが混在しています。年度の初めに募集予定を確認しておくと取りこぼしが減ります。

8.3 自己負担がある事業もある

支援と聞くと無料の印象を持ちやすいのですが、利用者負担が設定されている事業もあります。世田谷区の救急通報システムは設置時に8000円の負担があり、前年度に住民税が非課税だった人は免除される形です。

負担の有無と減免の条件はあわせて確認してください。非課税であることが減免の条件になっている事業は多く、課税状況の証明が必要になることもあります。

9. ひとり暮らしの高齢者は、まず今の状況の確認から

ひとり暮らしの高齢者が使える支援を15個見てきました。全国共通の制度は判定の考え方が決まっている一方で、金額や段階は保険者ごとに違い、自治体独自の事業は名称すら異なります。

そのため、制度名から探すより、自分の状況を整えてから相談するほうが早く進みます。世帯の課税状況、前年の年金収入額、住まいが賃貸か持ち家か、近くに頼れる親族がいるかどうかを確認しておくと、窓口での話が具体的になります。

今回挙げた金額や要件は令和8年度時点のもので、年度が変わると改定されることもあります。気になる制度があれば、お住まいの市区町村の担当課や地域包括支援センターに問い合わせて、最新の内容を確かめてください。

参考資料

太田 彩子