厚生労働省年金局の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、国民年金の第3号被保険者は令和6年度末時点で約641万人。うち女性は約628万人で、前年度から6.7%減り、5年連続の減少となりました。
共働き世帯が増えるなかで、女性の働き方は確実に変わってきています。ただし、働き続けることと、将来受け取る年金額が増えることは、必ずしも同じではありません。
厚生年金の受給額はいまどのように分布しているのか。そして、第3号被保険者をめぐる変化の裏側で、家庭内の時間はどう使われているのか。公表データをもとに順に確認していきます。
なお、厚生年金の受給額の分布や、働き方の違いが年金に与える影響については、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。
- 厚生年金の平均受給額は月額15万289円。男性約17万円に対し、女性は約11万1000円
- 月額30万円以上を受け取る人は全体の0.12%。約8割は月20万円未満で生活をやりくりしている
- 第3号被保険者の女性は約628万人で5年連続の減少。一方、6歳未満の子がいる家庭の家事・育児時間は妻が夫の約4倍
1. 厚生年金のリアルな受給額、月額30万円(年間360万円)超えは「わずか0.1%」
1人で月30万円以上を受け取る人がどれくらいいるかについては標準的な夫婦世帯の年金額とあわせて整理した記事でも取り上げられていますが、ここではまず全体の分布から確認します。
「老後は現役時代の年収に応じた年金がもらえる」と楽観視するのは危険かもしれません。厚生労働省年金局の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金(国民年金分を含む)の平均受給額は月額15万289円。男女別では男性が約17万円、女性が約11万1000円と、大きな開きがあるのが現状です。
1.1 厚生年金の受給額ごとの受給権者数
さらに詳しく受給額の分布を見てみると、驚きの実態が浮かび上がります。
- 20万円以上:全体の18.8%(5人に1人以下)
- 30万円以上(年間360万円超):わずか0.12%
厚生年金受給者のうち、月額30万円以上を受け取っている人は全体の約0.12%にとどまります。
つまり、月額30万円以上の年金を受け取れるのは「選ばれたほんの一握り」に過ぎません。全体の約8割は月20万円未満で生活をやりくりしており、iDeCoや積立投資といった自助努力がいかに不可欠であるかを物語っています。
積立でどのくらい資産を育てられるのかを具体的な金額で確認したい方は、以下の記事もあわせてご参考ください。
【新NISAシミュレーション】月10万円×15年積立+放置で資産はどう化ける?月3万円の少額戦略も公開
2. 岐路に立つ「第3号被保険者」5年連続で減少「共働き世帯の増加」
国民年金にはいくつかの加入区分があります。その一つである「第3号被保険者」は、厚生年金(公務員などが加入していた旧共済年金を含む)に加入している第2号被保険者の配偶者で、一定の収入条件を満たす人が対象です。
令和6年度末時点では約641万人が該当しています。
厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をみると、女性の第3号被保険者の人数は5年連続で減少していることがわかります。
第3号被保険者の総数:約641万人
- 男性:約13万人(+3.1%)
- 女性:約628万人(▲6.7%)
大きな特徴は、本人が保険料を負担しなくても国民年金に加入扱いとなる点です。これは、厚生年金制度全体でその費用を負担する仕組みになっているため、配偶者個人の保険料が増えるわけではありません。加入手続きは本人ではなく、配偶者の勤務先を通じて行われます。
働き方の違いは、老後に受け取る年金額だけでなく、配偶者を亡くしたときの遺族年金の水準にも及びます。
単純に「夫の遺族厚生年金(報酬比例部分の3/4)」がそのまま上乗せされるわけではありません。妻自身の収入や厚生年金の加入期間・給与水準が高いほど、支給される遺族厚生年金が圧縮(またはゼロに)されるため、専業主婦世帯と共働き世帯では実質的な受給額に差が生じることになります。
離婚した場合の扱いにも、第3号被保険者であった期間ならではの仕組みがあります。
離婚時に厚生年金の加入記録を夫婦で分割できる「年金分割」には2種類あります。なお、分割の対象となるのは「婚姻期間中の厚生年金記録」のみであり、基礎年金(国民年金)は分割対象外です。
また、第3号被保険者の多くが女性である背景には、日本の就業構造が影響しています。
2.1 「出産退職」から「継続就業」へ。第1子出産をめぐる女性の就業変化
厚生労働省が公表する「令和7年版厚生労働白書」をみると、第1子出産をめぐる女性の就業変化が見えてきます。
かつては第1子出産を機に離職する「出産退職」が一般的でしたが、2015〜19年のデータでは53.8%が仕事を継続しており、過半数を超えました。
しかし、仕事を辞めずに済んでも、育児との両立のために「パート・派遣」といった非正規雇用を選択するケースが依然として多いのが実情です。これが結果として、将来受け取る厚生年金額の低迷や、第3号被保険者にとどまる要因の一つとなっています。
3. 育児・家事負担は妻が夫の「4倍」。共働きの理想と現実のギャップ
働き方が変わっても、家庭内の時間の使われ方はどこまで変わったのでしょうか。
共働き世帯が増えたとはいえ、家庭内のタスク分担には依然として大きな偏りがあります。令和7年版「厚生労働白書・日本の1日」の調査では、6歳未満の子どもがいる家庭において、夫の家事・育児時間が1日平均「1時間54分」であるのに対し、妻は「7時間28分」。
妻が夫の約4倍もの時間を家庭に割いているという現実は、女性がキャリアを維持し、将来の年金額を増やす(=厚生年金に長く加入する)上での大きな障壁となっています。年金制度の議論だけでなく、こうした「家庭内の働き方改革」が進まない限り、女性の老後資金格差を埋めるのは容易ではないでしょう。


