「NISAを始めましょう」「固定費を見直しましょう」――老後資金づくりのアドバイスは、書店にもネットにもあふれています。

しかし、長く不安定な雇用環境の中で日々を繋いできた就職氷河期世代にとって、そうした助言はどこか他人事のように響くこともあるのではないでしょうか。

「投資に回せるお金なんてない」「固定費はもう削れるところがない」というのが、正直な実感かもしれません。

老後まで残された時間が10年、20年という段階で、無理な投資や小手先の節約術を語ってもあまり意味はありません。

ここでは、十分な貯蓄がなくても老後を乗り切るための、現実的な選択肢を整理していきます。

※本記事では一部以下のデータを引用しております。

【最新データ】日本の富裕層の割合は?年代別の平均貯蓄額と年収別データから見る資産形成の最適解
【最新データ】日本の富裕層の割合は?年代別の平均貯蓄額と年収別データから見る資産形成の最適解
ココがポイント
  • 単身世帯50代の35.2%が金融資産ゼロ、珍しいことではない
  • 「老後2000万円」は平均世帯の一例、自分の数字を持つことが大切
  • 貯蓄より「月5万円を細く長く稼ぐ」仕組みづくりが現実的

1. 世帯年収別に見る、金融資産の内訳のリアル

まずは、世帯の年収によって金融資産の中身がどう違うのか、客観的なデータで確認しておきましょう。

金融経済教育推進機構(J-FLEC)の「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和7年)」から、年間収入別の金融資産保有額を見ていきます。

ここでの金融資産保有額には、株式や投資信託、生命保険などが含まれますが、日常的に使う普通預金や不動産、金などは含まれていません。

種類別金融商品保有額(金融資産を保有していない世帯を含む)1/3

種類別金融商品保有額(金融資産を保有していない世帯を含む)

出所:金融経済教育推進機構「家計の金融行動に関する世論調査(令和7年)」

《年間収入別》金融資産保有額

全国:1940万円

  • 収入はない:634万円
  • 300万円未満:858万円
  • 300~500万円未満:1431万円
  • 500~750万円未満:1755万円
  • 750~1000万円未満:2222万円
  • 1000~1200万円未満:2725万円
  • 1200万円以上:5635万円

《年間収入別》預貯金(運用または将来の備え)

全国:745万円

  • 収入はない:385万円
  • 300万円未満:368万円
  • 300~500万円未満:631万円
  • 500~750万円未満:693万円
  • 750~1000万円未満:908万円
  • 1000~1200万円未満:1028万円
  • 1200万円以上:1649万円

《年間収入別》債券

全国:78万円

  • 収入はない:7万円
  • 300万円未満:36万円
  • 300~500万円未満:54万円
  • 500~750万円未満:58万円
  • 750~1000万円未満:67万円
  • 1000~1200万円未満:91万円
  • 1200万円以上:343万円

《年間収入別》株式

全国:433万円

  • 収入はない:33万円
  • 300万円未満:191万円
  • 300~500万円未満:235万円
  • 500~750万円未満:365万円
  • 750~1000万円未満:434万円
  • 1000~1200万円未満:572万円
  • 1200万円以上:1792万円

《年間収入別》投資信託

全国:216万円

  • 収入はない:153万円
  • 300万円未満:79万円
  • 300~500万円未満:167万円
  • 500~750万円未満:189万円
  • 750~1000万円未満:238万円
  • 1000~1200万円未満:292万円
  • 1200万円以上:682万円

《年間収入別》「債券・株式・投資信託の合計額」と「金融資産保有額全体に占める割合」

全国:727万円(24.79%)

  • 収入はない:193万円(8.99%)
  • 300万円未満:306万円(22.14%)
  • 300~500万円未満:456万円(26.21%)
  • 500~750万円未満:612万円(23.42%)
  • 750~1000万円未満:739万円(34.29%)
  • 1000~1200万円未満:955万円(26.68%)
  • 1200万円以上:2817万円(26.69%)

年収が上がるほど金融資産全体も膨らんでおり、収入と資産額に明確な関係があることがわかります。

とりわけ株式・投資信託・債券といった有価証券は、年収が高い層ほど保有額が大きくなる傾向がはっきり出ています。

一方で、資産全体のうち有価証券が占める比率を見ると、750万〜1000万円帯(34.29%)がやや高いものの、無収入世帯を除けば、どの層もおおむね20%台で大きな差はありません。

つまり資産運用は一部の高所得層だけのものではなく、平均的な収入の世帯にもすでに広く根づいていると言えそうです。

2. 年代別に見る、金融資産保有額の平均値・中央値

次に、20代から70代まで、年代ごとの金融資産保有額を「単身世帯」と「二人以上世帯」に分けて確認します。

J-FLECの「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](令和7年)」および「同[二人以上世帯調査](令和7年)」をもとにしています。

まずは単身世帯(金融資産を保有していない世帯を含む)のデータです。

【単身世帯】年代別の貯蓄額(金融資産を保有していない世帯を含む)2/3

【単身世帯】年代別の貯蓄額

出所:金融経済教育推進機構「家計の金融行動に関する世論調査(令和7年)」をもとにLIMO編集部作成

  • 20歳代:平均値255万円・中央値37万円
  • 30歳代:平均値501万円・中央値100万円
  • 40歳代:平均値859万円・中央値100万円
  • 50歳代:平均値999万円・中央値120万円
  • 60歳代:平均値1364万円・中央値300万円
  • 70歳代:平均値1489万円・中央値500万円

続いて、二人以上世帯(金融資産を保有していない世帯を含む)のデータも見てみましょう。

2.1 二人以上世帯(20歳代~70歳代)の金融資産保有額

【二人以上世帯】年代別の貯蓄額(金融資産を保有していない世帯を含む)3/3

【二人以上世帯】年代別の貯蓄額

出所:金融経済教育推進機構「家計の金融行動に関する世論調査(令和7年)」をもとにLIMO編集部作成

  • 20歳代:平均値525万円・中央値125万円
  • 30歳代:平均値1096万円・中央値311万円
  • 40歳代:平均値1486万円・中央値500万円
  • 50歳代:平均値1908万円・中央値700万円
  • 60歳代:平均値2683万円・中央値1400万円
  • 70歳代:平均値2416万円・中央値1178万円

ここで注目したいのが、平均値と中央値の差です。

単身世帯・二人以上世帯のいずれも、40代・50代では平均値が中央値の3〜7倍近くに達しています。

これは、一部の資産をたくさん持つ世帯が平均値を大きく引き上げている一方、多くの世帯はそれよりずっと少ない金額で暮らしている、という実態を示しています。

実際、単身世帯の40代では32.1%、50代では35.2%が金融資産を保有していません。

二人以上世帯でも、40代の18.8%、50代の18.2%が同じ状況にあります。

単身・二人以上世帯を問わず、40代・50代の時点で貯蓄がゼロという世帯は、決して少数派ではないのです。

単身世帯では60代に入ると中央値が大きく上昇しており、退職金の受け取りなどが資産を押し上げていると考えられます。

二人以上世帯は単身世帯より平均値・中央値ともに高い水準にありますが、これは世帯人数が増えることで将来の生活費や教育費への備えが必要になり、資産形成への意識が高まりやすいためと見られます。

和田 直子
「貯蓄ゼロ」というデータを見ると焦りや不安を感じてしまうかもしれません。しかし、単身世帯の50代の3人に1人以上(35.2%)が該当しているという事実は、この問題が決して特殊なものではなく、多くの人が直面している課題であることを示しています。大切なのは、まず「現在の蓄えの状況」を客観的に直視し、整理すること。現状を正しく把握してこそ、これからの10年・20年を安全に乗り切るための具体的な作戦が見えてきます。