4. 実家の庭の放置が招く、実質増税ペナルティ「管理不全空家」の落とし穴

シニア世代の親を持つ世帯で、放置されがちなのが実家の「庭」です。

草むしりや植木の手入れは高齢の親にとって想像以上の重労働であり、体力の衰えや近年の酷暑によって真っ先に管理が行き届かなくなってしまいます。

そして、問題が始まるのは「親が施設に入る、あるいは同居のために実家を空き家にしたとき」などです。

2023年12月に施行された改正空家法において、適切な管理がなされていない空き家を網に掛ける「管理不全空家等」という枠組みが新設されました。

行政が特に問題にするのは、地面に生い茂る雑草よりも、隣家や道路に大きくはみ出した「木(立木の枝の越境、大枝の折れ・腐朽)」です。

庭木を放置し、自治体から「管理不全空家等」として改善の「勧告」を受けると、これまで受けていた強力な減税措置「住宅用地特例(200平方メートル以下の部分について課税標準額を6分の1にする特例)」から除外されてしまいます。

特例が外れると、実家の土地の固定資産税負担は実質的に3倍から4倍程度に増えます。

また、2026年4月1日からは、法改正により「不動産所有者の住所や氏名の変更登記」が義務化されました。

これらを怠ると過料が科される可能性があるなど、空き家となった実家に関する手続きは厳格化が進んでいます。

親が元気なうちに、植木スペースをコンクリートや防草シートにして負担を減らす「庭じまい」を検討することも大切です。

5. 【お盆に考える実家の庭じまい】草を刈れなくなった日から始まる「庭の固定費」&知っておきたい「シルバー人材センターには依頼できないこと」

自分で実家の庭を手入れできなくなると、管理を「外注」に頼ることになります。

しかし、これは一時的な出費ではなく、毎年支払い続ける「新たな固定費」が生まれることを意味します。

安価な依頼先として「シルバー人材センター」が一般的ですが、ここには大きな盲点があります。

シルバー人材センターは法律上、原則として「臨時的、短期的な軽易な業務」しか引き受けることができません。そのため、高木の剪定や危険な作業は一律で受付不可。

一方、行政が「管理不全空家」として特例除外を警告する原因となるのは、隣家に越境した「高い木の枝」や「折れかけた大枝」です。

つまり、安く済ませようとシルバー人材に依頼しても、肝心の高木トラブルは解決できず、結局は「民間の造園業者」へ別途依頼をすることになり、二重発注による想定外の出費を強いられるケースが少なくありません。

庭が荒れ始める前に、木の高さや越境状態に応じた適切な依頼先を親子で把握しておくことが、将来の家計負担を抑えるカギになります。

6. 手続き忘れに注意!年金生活者支援給付金と「緑の封筒」

今回の意向確認書と同様に、年金受給者向けの書類で手続きを忘れないようにしたいのが「年金生活者支援給付金」の請求です。

この制度は、公的年金などの収入が一定の基準額を下回る方に対し、年金に上乗せして支給される恒久的な支援策です。物価上昇を反映し、2026年4月分より3.2%の増額改定が実施されています。

2026年度:年金生活者支援給付金の月額

  • 老齢年金生活者支援給付金(基準額):月額5620円 ※実際の支給額は、個人の保険料納付期間や免除期間などに応じて個別に計算されます。
  • ・障害年金生活者支援給付金(2級):月額5620円(1級は月額7025円)
  • ・遺族年金生活者支援給付金:月額5620円  ※子どもが2人以上いて受給する場合、人数に応じて按分されます。

6.1 さかのぼっての支給は原則不可!

この給付金は、自ら請求手続きを行わなければ支給されない「申請主義」を採用しています。

新たに支給対象となる可能性がある方には、日本年金機構から毎年9月上旬以降、はがき形式の請求書が同封された「緑色の封筒」が順次届きます。

もしこの手続きを先延ばしにし、申請が遅れてしまうと、請求した月の翌月分からしか支給されません。

受け取れるはずだった過去の期間分は、原則としてさかのぼって支給されないため注意が必要です。

6.2 世帯を分ける「世帯分離」3つのデメリット

老齢年金生活者支援給付金やその他の優遇措置の対象となる「住民税非課税世帯」になる目的で、同居を続けながら住民票上の世帯を分ける「世帯分離」を検討する方もいるかもしれません。

しかし、世帯分離には次のようなデメリットが生じる可能性があります。

国民健康保険料が世帯全体でかえって増えるリスク

国保料には「平等割」や「均等割」という世帯ごとに定額でかかる区分があるため、世帯を分離して世帯数が増えることで、世帯全体で支払う保険料の総額が高くなってしまう場合があります。

高額療養費や介護費用の「世帯合算」が不可能に

同一世帯であれば、家族全体の医療費や介護費用を合算して負担限度額を超えた分を払い戻し(高額療養費や高額介護サービス費など)できますが、世帯を分離すると別々に計算されるため、合算できなくなる不利益が生じます。

※なお、同居していても、加入している医療保険制度が異なる場合(例:子が会社の健康保険、親が後期高齢者医療制度や国民健康保険)は、もともと世帯合算はできません。

勤務先からの「家族手当(扶養手当)」の打ち切り

会社員である子が親を世帯分離することで、会社の規定にある扶養手当や健康保険の扶養家族から除外され、世帯全体での手取り収入が減少するケースもあります。

7. マイナポータルで進む「年金手続きのデジタル化」

一方で、年金関連の公的な手続きそのものは、デジタル化によって利便性が向上しています。

現在、日本年金機構における手続きは、マイナポータルを通じた電子申請への移行が進められています。

自営業者などが対象の「国民年金保険料の免除申請」や「産前産後期間の免除届出」なども、スマートフォンを使って24時間自宅から申請できるようになりました。

さらに、大きな負担となっていた「老齢年金の請求手続き(老齢年金請求書)」も、未統合の年金記録がないことや共済組合等の加入記録がないことなど、一定の条件を満たせばマイナポータルから直接電子申請が可能になっています。

住民票を分けるといった世帯の最適化を考える際も、マイナポータルに記録されている過去の医療費データや、「ねんきんネット」の試算機能を活用し、世帯全体での実質的な負担額を冷静にシミュレーションすることが、これまで以上に重要になるといえるでしょう。

8. まとめにかえて

お盆休みに実家に集まる機会がある今、親子でテーブルを囲み、何気なく置かれている「郵便物」に目を配ってみてください。

2026年8月から順次発送が始まる「公金受取口座登録の意向確認書」や、秋口から届く年金生活者支援給付金の「緑の封筒」は、いずれも大切なお知らせです。

また、お庭の管理不足が「管理不全空家」による固定資産税の優遇剥奪に繋がるなど、空き家となった実家の維持には想定外のハードルが潜んでいます。

「まだ元気だから大丈夫」と様子見をして先延ばしにするのではなく、届いた郵便物をきっかけに、これからの暮らしやスマートな手続きについて親子で笑顔で話し合う。

そんな「前向きな暮らしの選択」を、この夏の帰省から始めてみませんか。

9. 監修者からのコメント

熊谷 良子

年金生活者支援給付金の「緑の封筒」のように、公的な手続きの多くは、自ら申請しなければ1円も受け取れない「申請主義」です。

親世代にとって、こうした複雑な紙の書類を正しく理解して郵送するのは年々大きな負担になっています。

だからこそ、お盆の帰省時に実家に届いた郵便物をチェックした流れで、「マイナポータル」や「ねんきんネット」を一緒に登録・確認してあげるのが、これからのデジタル時代のスマートな親サポートの一つのスタイルでしょう。

「代わりに紙に書いてあげる」のではなく、「スマホを使って、親子で一緒に画面を見ながら」がポイントです。

このほんの少しのデジタル活用の共有が、ご家族の大切な時間と将来の手取り収入を守る強力な自衛策になります。

参考資料

池上 翠