私たちの健康と暮らしを守る公的医療保険制度。実は先月、2026年(令和8年)8月より、ひと月の医療費の自己負担上限を定める「高額療養費制度」の仕組みが一部変更されました。皆さんはご自身の健康保険について、どのような見直しが行われているかご存知でしょうか。

菅原 美優
筆者はファイナンシャルアドバイザーですが、お客様の中でも「家族が急な入院をした際、高額療養費制度のおかげで想定より出費が抑えられて本当に助かった」という方もいらっしゃいました。いざという時に使える公的制度の知識を持っておくことは、自分や家族の家計の安心に直結すると日々痛感しています。

今回は、厚生労働省の最新データをもとに、日本の医療費の現状をひもときながら、2026年8月に施行された高額療養費制度の変更点、そして今後の私たちの生活に直結する医療保険制度の大改革について、初心者の方にもわかりやすく解説していきます。

1. 膨らみ続ける医療費「49.2兆円」に!伸び率プラス2.6%、受診日数減でも総額が増える理由

日本の公的医療保険制度のこれからを考える上で、医療費の全体像とその変動要因を知ることはとても大切です。厚生労働省が公表したデータによると、日本の医療費総額は依然として拡大する傾向にあります。

具体的な集計結果は以下のようになっています。

  • 概算医療費総額:49.2兆円(前年度より約1.3兆円の増加)
  • 医療費の伸び率:プラス2.6パーセント
  • 受診延日数の伸び率:マイナス0.7パーセント
  • 1日当たり医療費の伸び率:プラス3.3パーセント

この「医療費の伸び率プラス2.6パーセント」の内訳を少し詳しくみてみましょう。実は、人口増加の影響がマイナス0.5パーセント、高齢化の影響がプラス0.6パーセント、診療報酬改定(国が定める医療行為の値段の見直し)などの影響がマイナス0.39パーセントとなっています。一方で、医療技術の高度化や私たちの受診行動の変化など、それ以外の要因がプラス2.9パーセントと大きく押し上げる結果となりました。

ここで注目したいのは、病院にかかる日数(受診延日数)自体は減っているにもかかわらず、1日当たりの医療費が上昇しているため、全体の総額が大きく増えているという点です。つまり、単に病院に行く回数が増えたからではなく、より高度で新しい医療技術が使われるようになったことや、治療単価が上がっていることが医療費増大の大きな理由となっています。公的医療保険というみんなで支え合う制度を未来へ繋ぐためには、医療の費用対効果をしっかり評価していくことが欠かせません。

2. 1人当たり医療費「75歳以上98.9万円、75歳未満26.1万円」75歳以上が全体の4割超

次に、私たちが加入している保険制度ごとの医療費の実態を見てみましょう。令和7年度のデータでは、年代や加入している制度によって、医療費にかかる金額に大きな違いがあることがわかります。

【表2-1 制度別の概算医療費と1人当たり医療費の推移をみる】

制度別の概算医療費と1人当たり医療費の推移をみる2/4

制度別の概算医療費と1人当たり医療費の推移をみる

出所:厚生労働省「令和7年度 医療費の動向」を公表します~概算医療費の年度集計結果~」

制度別の医療費構成と、加入者1人当たりの医療費は以下のようになっています。

  • 75歳以上(後期高齢者医療制度):20.3兆円(全体の41.3パーセント) / 1人当たり98.9万円
  • 75歳未満全体:26.5兆円(全体の53.9パーセント) / 1人当たり26.1万円
  • 被用者保険(会社員など・75歳未満):16.4兆円 / 1人当たり21.2万円
  • 国民健康保険(自営業者など・75歳未満):10.1兆円 / 1人当たり41.5万円

データを見ると、75歳以上の1人当たり医療費は、75歳未満の約3.8倍となっています。年齢を重ねれば病気やケガのリスクが高まるのは自然なことであり、医療費が増えるのは必然といえます。

また、75歳未満のなかでも、自営業の方や定年退職後の方などが多く加入する国民健康保険の1人当たり医療費は、会社員などが加入する被用者保険の約2倍となっています。少子高齢化という日本の構造的な背景により、現役世代への負担がどうしても大きくなっているのが現状です。制度の持続可能性を高めるため、世代を問わず助け合える仕組みづくりや、公平な負担のあり方が議論されています。