3. 高所得世帯に多い「資金が減るのが怖い」への迷い。ファイナンシャルアドバイザー・長井祐人が伝えたいこと

高所得でまとまった預貯金があっても、投資経験がないために「どう運用していいか分からない」「資金が減るのが怖い」と悩む声はよく聞かれます。日々の生活には困らなくても、銀行に預けているだけでは物価上昇に対応できないのではないか、と焦りを感じる方が多いようです。

3.1 40代に多いお悩み相談は「まとまった資金を一気にリスク資産へ動かすのが怖い」

40代のお客様
夫が高収入で、数千万円規模の預貯金があります。最初はやっぱりちょっと怖いので、まとまった資金の一部は金利の良い銀行に預け、残りの資金を債券とNISAに配分したいというのが、正直な気持ちです。投資経験がほとんどなく、まとまった資金を一気にリスク資産へ動かすことには強い抵抗があります。

そこから、まずは少額からNISAでの積立投資を始めつつ、手元にあるまとまった資金の運用先を慎重に探ることにしました。その後は、債券や外貨建て保険など、それぞれの商品の特徴やリスクを理解しながら、ご自身に合った配分を見つけて運用を続けています。

このように、資金に余裕があっても、最初の一歩をどう踏み出すかで立ち止まってしまうという方は少なくありません。

3.2 【ファイナンシャルアドバイザー・長井祐人が回答】怖さを理由に立ち止まらず、少しずつ経験を積む

長井 祐人
本記事では、国税庁や博報堂の調査結果をもとに、新富裕層の人数分布や消費行動について解説していきました。
日本の所得税収は全体の約2割にあたる高所得層が税額の約9割を占めています。
また、世帯年収3000万円を超える「新富裕層」は自身の「資産」や「時間効率」を最大化するために積極的にお金を使う傾向にあります。
節税や時間を生み出すための工夫は、一部の富裕層だけではなく、私たちの日々の生活に取り入れられる方法も数多く存在します。
まずは、自分自身のライフスタイルに合った選択肢を見つけ、活用していくことが大切です。

3.3 ポイント1:金利が高い今のうちに債券でリターンを固定する

まず見直したいのは、金利が高い環境をどう活かすかという点です。この方は当初、為替の変動を気にしていましたが、「債券は為替リスクはあるものの、金利が高い今のうちに固定すれば、将来のリターンを確保できるのは魅力的だ」と気づいたように、債券の特性を理解されました。為替の動きを完全に予測することは専門家でも困難ですが、高い金利を長期間固定できる債券は、まとまった資金の運用において有効な選択肢の一つとなります。目先の為替変動にとらわれず、将来の確実なリターンに目を向ける視点が、資産を守りながら増やすうえで大切な視点になります。

3.4 ポイント2:運用益にかかる税金の違いに着目する

そのうえで、運用益に対する税金への配慮も重要です。まとまった資金の運用先として債券と外貨建て保険を比較検討する中で、「税金面で比較すると、保険の方がかなり有利になることが分かった」という気づきの通り、受け取り時の税制の違いに着目されました。同じように外貨で運用する商品でも、金融商品によって税金の計算方法は異なります。特に高所得層の場合、運用益にかかる税金が最終的な手取り額に大きく影響するため、税制優遇を活用できる保険商品などを選択肢に含めることは、効率的な資産形成において若い頃以上に大切になります。

3.5 ポイント3:少額から始めて段階的にステップアップする

また、一度にすべての資金を動かす必要はないということも押さえておきたいポイントです。この方も、最初から大きな金額を投資に回すのではなく、まずは少額から積立投資を始め、市場の動きや商品の仕組みに慣れながら、徐々にまとまった資金の運用へとステップアップしていきました。投資への恐怖心があるうちは、無理のない範囲で少しずつ経験を積んでいくアプローチが、結果的に納得のいく資産形成につながるという反応をされる方が少なくありません。焦らずに自分のペースで進めることが、長く運用を続けるための秘訣といえます。

投資は怖い、あるいは為替が気になると決めつける前に、金利の固定によるリターンの確保や、税制優遇の違い、そして少額から始めるという選択肢を一つずつ整理してみることが、まとまった資金を有効に活用する出発点になります。

4. 「世帯年収3000万円」が分岐点!新富裕層に共通する4つの消費行動

そして最後にお伝えしたいのが、この多額の税を負担する高所得者層は、一般層とは一線を画す独自の価値観を持つプレミアムな層であるということです。博報堂富裕層マーケティングラボ(HAML)「新富裕層調査2025」によると、この「世帯年収3000万円」というラインを境に、彼らの意識・価値観や消費行動が大きく変化することが明らかになっています。

具体的には、ここを超えると以下のようなパラダイムシフトが起こります。

4.1 投資のリスク資産化

世帯年収別の保有資産(金融資産・現物資産)3/3

世帯年収別の保有資産(金融資産・現物資産)

出所:博報堂富裕層マーケティングラボ「新富裕層調査2025」

手堅いNISA等にとどまらず、暗号資産(21.8%)やアクティブファンド(20.9%)などのリスク資産へと拡大し、金融資産1億円以上の「資産富裕層(過半数の51.6%)」へとシフトします。

4.2 「時間」と「健康」への徹底投資

タイパ(タイムパフォーマンス)を追求し、家事や育児の「外注志向」が急激に強まります。

4.3 次世代への教育投資

子供への「海外留学志向」が顕著になります。

4.4 ストーリー消費

単に高級品を買うのではなく、商品の背景にある文化的背景やストーリーを重視して消費します。

このように、一定の収入水準を超えた新富裕層の消費行動は、単な贅沢や自己顕示のためではなく、自身の「資産」や「時間効率」を最大化するための理にかなった選択であるといえます。

5. まとめにかえて

今回は、日本の所得税収を支える納税者の人数分布と、新富裕層に共通する消費行動、そしてまとまった資金を運用する戦略について解説しました。

日本の所得税は累進課税により、全体のわずか約2割の高所得層が税額の約88.5パーセントを負担する構造になっています。一方で、世帯年収3000万円を超える新富裕層は、時間や次世代への教育を重視した合理的なお金の使い方をしており、高所得であっても投資には慎重な姿勢を見せることが多いのが実態です。

大多数の中間層が社会の土台を成し、一握りのトップ層が税収の大きな負担を担っているという日本の仕組みを知ることは、日々の経済ニュースを読み解くための大切な教養になります。私たち一人ひとりも、こうした富裕層の合理的な考え方を参考にしながら、ご自身のライフスタイルに合ったお金との付き合い方を見つけていくことが重要ではないでしょうか。

参考資料

長井 祐人