「給付付き税額控除」という言葉を聞いて、税金が安くなる制度なのか、現金を受け取れる制度なのか、仕組みが分かりにくいと感じる方も多いのではないでしょうか。
8月5日、政府は「給付付き税額控除」の制度導入に向けた基本方針を閣議決定し、令和11年度から「所得に連動したきめ細かな給付」を導入する方針を示しました。
一方、具体的な給付額や対象となる所得水準など、今後の検討に委ねられている部分も残されています。
本記事では、国税庁の統計から所得税を納めていない給与所得者の規模を確認したうえで、閣議決定された基本方針をもとに、誰が対象になり得るのか、どのような仕組みが検討されているのかを整理します。
なお、給付付き税額控除の基本的な仕組みと、住民税非課税世帯の要件については、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。
- 「給付付き税額控除」の基本的な仕組みと目的
- 所得税を納めていない人の実態と対象者の条件
- 制度の本格導入に向けたスケジュールと今できる準備
1. 「給付付き税額控除」の一般的な仕組み|税額控除と給付を組み合わせる考え方
規模感を確認したところで、制度そのものの考え方を押さえておきます。名称に「税額控除」と「給付」の両方が入っているとおり、この制度は本来ひとつの仕組みではなく、二つの仕組みを組み合わせたものとして構想されてきました。
1.1 税額控除と給付をセットにするという発想
給付付き税額控除とは、「税金を安くする(税額控除)ことと「現金を配る(給付)」ことをセットにした制度」です。
支援の枠をあらかじめ決めておき、まずはその枠を納めるべき税金から差し引く。差し引ききれなかった分は現金で受け取る。この二段構えが、制度の基本形にあたります。
1.2 納税額がない人は「枠の全額」が給付になる
たとえば「10万円」の支援枠があったとします。
- 中低所得者層(課税額が少ない人や納税額がない人): 納める税金が3万円しかない場合、10万円の枠から引ききれない「7万円」が発生します。この引ききれなかった7万円を現金で給付します。また、所得税を納めていない(税額がない)低所得層には、枠の全額がそのまま現金として給付されます。
- 高所得者層: 所得が高くなるにつれて支援の枠自体が縮小、あるいは対象外となるように調整されるため、高所得者が一律で10万円の減税を受けられる仕組みではありません。
所得税を納めていない(税額がない)低所得層には、枠の全額がそのまま現金として給付されます。
ただし、閣議決定された基本方針を読むと、話はもう一段複雑になります。
2. 国税庁データで見る「所得税を納めていない給与所得者」は約1384万人
給付付き税額控除は、納めている所得税が少ない人ほど給付の色合いが濃くなる制度です。であれば、そもそも所得税を納めていない給与所得者がどれくらいいるのかを押さえておくと、制度の輪郭がつかみやすくなります。
国税庁の基幹統計から、その規模を確認してみます。
2.1 納税者の割合は73.1%まで下がった
国税庁「令和6年分民間給与実態統計調査結果について」(令和7年9月公表)によると、1年を通じて勤務した給与所得者は5137万人でした。このうち源泉徴収により所得税を納めている人は3753万人で、割合は73.1%となっています。
差し引くと、1年を通じて働きながら所得税を納めていない給与所得者は1384万人という計算になります。
前の年はどうだったのかを並べてみると、様子が変わります。令和5年分では給与所得者5076万人に対して納税者は4382万人、割合は86.3%でした。同じように差し引くと、所得税を納めていない人は694万人です。1年で納税者の割合が13.3ポイント下がったことになります。
2.2 この数字をそのまま将来に当てはめてはいけない理由
ここで、1384万人という数字だけを取り出して「これだけの人が満額の給付を受けられる」と読むのは、筆者は避けたほうがよいと考えています。
令和6年分は、「所得税の定額減税」が実施された年だからです。令和6年分の所得税では1人あたり3万円の特別控除が設けられました。給与所得者については、同年6月1日以後に支払われる給与から差し引く形で実施されています。
もともとの所得税額が少なかった人は、この控除によって年間の税額がゼロになったケースが相当数あったと考えられます。
つまり1384万人という数字には、制度上の一時的な要因が乗っています。定額減税が実施される前の令和5年分では694万人だったことから、令和6年分の1384万人には定額減税という特殊要因が大きく影響している可能性があります。
それでも1年を通じて働く給与所得者の1割強が所得税を納めていないという構図自体は変わりません。給付付き税額控除が「減税だけでは支援が届かない層」を意識した制度だといわれる背景には、この構造があります。

