8月から10月にかけては、年金にまつわる動きが続く時期です。8月に定期支払があり、9月ごろには年金生活者支援給付金の請求書が新たに対象となる人へ届き、次の支払日は10月15日にやってきます。
通帳に記帳された金額を見て、「この水準で老後を乗り切れるのだろうか」と感じた方も多いのではないでしょうか。生活費の目安としてよく挙がるのが「月20万円」というラインですが、公的年金だけでこの水準に届いている人は、実はそれほど多くありません。
そこで本記事では、国民年金・厚生年金の平均受給額と受給額の分布を確認し、月20万円以上を受け取っている人がどのくらいいるのかを見ていきます。
なお、公的年金の仕組みや平均受給額に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。
- 厚生年金(国民年金を含む)の平均年金月額は全体で15万289円、国民年金は全体で5万9310円
- 公的年金収入が「月20万円以上」に達しているのは、厚生年金受給権者のうち18.8%のみ
- 8割超にあたる81.2%は月20万円未満。世帯単位で見ても自助努力による上乗せが欠かせない
1. まずは公的年金の「2階建て」構造を確認する
受給額の話に入る前に、公的年金がどう組み立てられているかを整理しておきましょう。日本の年金制度は、1階にあたる国民年金(基礎年金)と、2階にあたる厚生年金の2つで構成されており、しばしば「2階建て構造」に例えられます。
1.1 1階部分:国民年金(基礎年金)
1階の国民年金は、原則として日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入対象です。保険料と満額については、LIMOの記事「【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説」で次のように説明されています。
国民年金保険料は所得にかかわらず一律ですが、年度ごとに見直されます(2026年度は月額1万7920円)
保険料を40年間(480カ月)すべて納付すると、満額を受け取ることができます(2026年度は月額7万608円)
出所:【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説
つまり1階部分は、納めた期間の長さだけで金額が決まる仕組みです。収入が多かった人も少なかった人も、40年間納めきれば同じ満額にたどり着きます。
1.2 2階部分:厚生年金
2階の厚生年金には、会社員や公務員のほか、パートタイマーなどで特定適用事業所に勤務し一定の要件を満たす人が、国民年金に上乗せする形で加入します。
保険料は収入に応じて変動し、勤務先と本人が折半して負担します。受給額は加入していた期間の長さと納めた保険料の額によって決まるため、1階部分とは違って個人差が大きく出るのが特徴です。この2階部分の厚みの違いが、そのまま老後の受給額の差につながります。
2. 国民年金・厚生年金の平均受給額はいくらか
では、実際にはいくら受け取っているのでしょうか。厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにした平均年金月額は、次のとおりです。
2.1 厚生年金の平均年金月額(国民年金を含む)
- 〈全体〉平均年金月額:15万289円
- 〈男性〉平均年金月額:16万9967円
- 〈女性〉平均年金月額:11万1413円
2.2 国民年金の平均年金月額
- 〈全体〉平均年金月額:5万9310円
- 〈男性〉平均年金月額:6万1595円
- 〈女性〉平均年金月額:5万7582円
出所:【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説
厚生年金は男女で5万8554円の差があり、2階部分の有無と厚みが受給額を大きく左右していることがわかります。一方の国民年金は男女差が4013円にとどまり、納付期間で決まる制度の性格がそのまま表れています。
いずれの数字も、あくまで加入状況の異なる人を平均した値です。自分がこの平均のどちら側にいるのかは、次の分布データで確認していきましょう。
3. 厚生年金で「月20万円以上」を受け取る人は何パーセント?
ここからは、厚生年金(国民年金部分を含む)の受給額が1万円刻みでどう分布しているかを見ていきます。
3.1 厚生年金:受給額ごとの人数
- 1万円未満:4万3399人
- 1万円以上~2万円未満:1万4137人
- 2万円以上~3万円未満:3万5397人
- 3万円以上~4万円未満:6万8210人
- 4万円以上~5万円未満:7万6692人
- 5万円以上~6万円未満:10万8447人
- 6万円以上~7万円未満:31万5106人
- 7万円以上~8万円未満:57万8950人
- 8万円以上~9万円未満:80万2179人
- 9万円以上~10万円未満:101万1457人
- 10万円以上~11万円未満:111万2828人
- 11万円以上~12万円未満:107万1485人
- 12万円以上~13万円未満:97万9155人
- 13万円以上~14万円未満:92万3506人
- 14万円以上~15万円未満:92万9264人
- 15万円以上~16万円未満:96万5035人
- 16万円以上~17万円未満:100万1322人
- 17万円以上~18万円未満:103万1951人
- 18万円以上~19万円未満:102万6888人
- 19万円以上~20万円未満:96万2615人
- 20万円以上~21万円未満:85万3591人
- 21万円以上~22万円未満:70万4633人
- 22万円以上~23万円未満:52万3958人
- 23万円以上~24万円未満:35万4人
- 24万円以上~25万円未満:23万211人
- 25万円以上~26万円未満:15万796人
- 26万円以上~27万円未満:9万4667人
- 27万円以上~28万円未満:5万5083人
- 28万円以上~29万円未満:3万289人
- 29万円以上~30万円未満:1万5158人
- 30万円以上~:1万9283人
出所:【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説
公的年金収入が「月20万円以上」に達しているのは、厚生年金受給権者のうちわずか18.8%にとどまります。裏を返せば、81.2%にあたる8割超の人が、ひと月20万円未満というのが実情です。
もっとも多いのは10万円以上11万円未満の層で、分布の山は10万円台の前半にあります。平均の15万289円は、この山よりもやや高い位置にあるということです。
なお、この割合はあくまで厚生年金を受給している人のなかでの数字です。国民年金のみを受給している人まで含めて全体を見渡せば、年金月額が「月20万円以上」となる人の割合はさらに低くなると考えられます。
年金収入は世帯単位で考える必要もありますが、公的年金だけで安定した生活を送るためには、自助努力による備えが欠かせないといえるでしょう。
3.2 【シミュレーション】平均15万289円の人が「月20万円」に届くには、いくら必要か
生活費の目安としてよく挙がる「月20万円」と、厚生年金の平均15万289円との差は、月4万9711円です。この差を自助努力で埋めるとした場合、受給期間を通じて必要になる総額を試算してみます(受給額が改定されないと仮定した、一定の前提を置いた試算です)。
- 65歳から10年間(75歳まで):4万9711円×12カ月×10年=約596万5000円
- 65歳から15年間(80歳まで):4万9711円×12カ月×15年=約894万7000円
- 65歳から20年間(85歳まで):4万9711円×12カ月×20年=約1193万円
- 65歳から25年間(90歳まで):4万9711円×12カ月×25年=約1491万3000円
90歳まで生きると想定すると、必要な上乗せは累計で約1491万円です。ひと月あたり5万円弱という数字は決して手が届かない額ではありませんが、それが25年続くと考えると、退職金だけで賄いきるのは難しい規模になります。だからこそ、現役のうちからの準備が意味を持ちます。



