50代になり、ねんきん定期便の受取見込額を見て「これだけしか受け取れないのか」と絶句してしまう方は少なくありません。老後の生活費が足りるのか、今の生活水準を維持できるのかといった不安は、実際のファイナンシャルプランニングの場でも非常に多く寄せられます。特に定年後も住宅ローンの返済が続くケースでは、「公的年金だけで家計を回すことができるのか」と深刻に悩まれる声が目立ちます。
まずは、最新の公的年金の給付水準と、シニア世代におけるローンや負債の実態データを整理したうえで、ファイナンシャルアドバイザー・川勝隆登氏による具体的な解決へのアプローチをご紹介します。
この記事では以下の記事を一部引用しています。
- 利益確定や安定運用への移行で、築いた資産の守りを固める。
- 一括返済を急がず、手元資金と負債のバランスを整理する。
- 金利上昇などの状況変化に応じ、柔軟に方針を見直す。
1. 最新データで見る「年金支給額」と「シニアの借入金」の実態
1.1 令和8年度の年金額はいくら?
公的年金の受給額は、物価や賃金の動向を踏まえて年度ごとに見直されます。2026年6月支給分(4月・5月分)からは、国民年金(基礎年金)が前年度から1.9%、厚生年金(報酬比例部分)が2.0%引き上げられました。
- 国民年金(老齢基礎年金・満額、1人分):7万608円(前年度比+1300円)
- 厚生年金(夫婦2人分のモデル年金):23万7279円(前年度比+4495円)
※昭和31年4月1日以前生まれの方の老齢基礎年金の満額は月額7万408円(前年度比+1300円)
※厚生年金のモデル年金は、「男性の平均的な収入(平均標準報酬〈賞与含む月額換算〉45万5000円)」で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金〈満額〉)の給付水準
上記はあくまでの「例」です。次の章では、実際の受給者全体の平均額を確認してみましょう。
1.2 【厚生年金・国民年金】シニア世代の実際の平均受給額
実際に年金を受け取っている全受給権者(60歳~90歳以降)の平均月額(厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」より)は以下の通りです。
厚生年金(国民年金を含む)の平均月額
- 全体:15万289円
- 男性:16万9967円
- 女性:11万1413円
国民年金の平均月額
- 全体:5万9310円
- 男性:6万1595円
- 女性:5万7582円
厚生年金は男女差が6万円ほどあるのに対し、国民年金の男女差は数千円程度にとどまります。これは、厚生年金の受給額が現役時代の収入や加入期間に大きく左右されるためです。
1.3 60代・70代でも「負債・住宅ローン」を抱える世帯の実態
年金生活を迎える前に負債をなくしておきたいのが理想ですが、実際には60代・70代になっても借り入れが残っている世帯は少なくありません。
借入がある世帯の割合
- 2人以上世帯: 60代 14.3% / 70代 6.7%
- 単身世帯: 60代 10.0% / 70代 4.8%
借入金がある世帯の残高(平均値と中央値)
借入金を抱えている世帯に限ってみても、平均値と中央値には大きな差があります。
60代の2人以上世帯では、借入残高の平均は1,131万円ですが中央値は500万円、単身世帯では平均441万円に対し中央値は150万円です。平均が中央値を大きく上回っているのは、一部に数千万円規模の借入を抱える世帯が含まれ、平均値を押し上げているためです。つまり、借入がある世帯の中でも、残高には大きな個人差があるということです。
住宅ローン残高(平均値と中央値)
住宅ローンに限定した残高をみると、その差はさらに際立ちます。
60代の2人以上世帯では、住宅ローン残高の平均は697万円である一方、中央値は300万円にとどまり、70代になると中央値は0円まで下がります。単身世帯もいずれの年代も中央値は0円で、多くの世帯が定年前後にはすでに完済していることがうかがえます。
一方で、平均が中央値を大きく上回っている以上、少数とはいえ、定年を迎える時点で数千万円規模の住宅ローンを抱えている世帯も一定数存在するということです。年金の平均受給額が15万円前後にとどまるなかで、こうした大きなローンが残っていれば、「年金だけでは返済が厳しい」と感じるのは無理もないことです。






