厚生労働省は、令和8年度の年金額改定にあわせて、老齢・遺族年金生活者支援給付金の基準額を月5620円(前年度比170円増)に引き上げました。
年金本体の改定率が+1.9%だったのに対し、この給付金は+3.2%という、より大きな増額率になっている点も見逃せません。
これは、年金本体に適用される「マクロ経済スライド」というルールが、この給付金には適用されないためです。日本年金機構からも、2026年6月3日以降、対象者宛てに「支給金額のお知らせ」が順次発送されており、緑色の封筒を受け取った方も増えているタイミングです。
ただ、この「基準額5620円」という数字だけを見て安心するのは早計です。実際に届く金額を決めるのは、基準額そのものではなく、「保険料を納めていた期間」と「免除を受けていた期間」を、それぞれ別の計算式に当てはめた結果だからです。
免除申請の経験がある方ほど、基準額と実際の受給額の間にズレが生じやすく、そのズレの仕組みを知らないまま通知を受け取ると、想定と違う金額に戸惑うことになります。
1. この記事の3つのポイント
- 受給額は「納付済期間」と「免除期間」で単価が異なる、2本立ての計算式で決まります
- 所得基準は「わずかに超えただけ」で対象外になるケースがあり、世帯構成が判断を分けます
- 要件を満たしていても、請求手続きをしなければ受給額はゼロのまま確定します
2. まず確認しておきたい「年金生活者支援給付金」の基本

本題に入る前に、制度の骨格だけを短く整理しておきます。すでに大枠を理解している方は、次の見出し以降から読み進めても支障はありません。
ここで押さえておきたいのは、名称が似ているために「自分がどの種類の給付金に当たるのか」を誤って理解している方が一定数いる、という点です。老齢基礎年金を受け取っている方が対象になるのは「老齢年金生活者支援給付金」であり、障害年金・遺族年金を受け取っている方はそれぞれ別の給付金として判定されます。
まずはご自身がどの分類に当たるのかを確認することが、この先の話を正しく読み進める前提になります。
3. 【執筆者コメント】
この制度で実務上つまずきやすいのは、「年金生活者支援給付金」という一つの名称でひとくくりに呼ばれているために、老齢・障害・遺族のどれに該当するかによって要件や計算の考え方が変わることが、案外知られていない点です。
特に、老齢基礎年金の受給者の方が「自分は厚生年金も受け取っているから対象外だろう」と自己判断で申請を見送ってしまうケースもあるでしょう。
厚生年金を受け取っていること自体が対象外の条件になっているわけではなく、判定の基準になるのはあくまで世帯の非課税状況と、年金収入及びその他所得の合計額です。制度の入り口部分で自己判断による見送りが起きやすい設計になっているという事実は、まず知っておいて損はありません。
この先の章で、所得基準の具体的な線引きと、免除期間・納付済期間の違いによる受給額の差を順番に見ていきますが、いずれも「自分は対象外だろう」という思い込みだけで判断せず、実際の要件に当てはめて確認する姿勢が前提になります。
判断に迷う場合は、最終的な要件の当てはめについては、お住まいの年金事務所や市区町村の窓口に確認するのが確実です。
4. 見落とされがちな「所得基準」のライン
先ほど触れた要件のうち、特に誤解が多いのが「前年の年金収入とその他の所得の合計額」に関する基準です。ここでの理解が曖昧なまま「自分は対象外だ」と思い込んでしまう方が一定数存在します。
ここで注意したいのは、「その他の所得」に何が含まれ、何が含まれないのかという範囲の問題です。
少額の給与収入や事業収入がある方は、この合計額の算入対象に自分の収入が入るのかどうかが分からず、申請そのものを諦めてしまうケースが想定されます。
また、支給要件の一つに「世帯全員が市町村民税非課税であること」がありますが、これは本人だけでなく、同居する家族全員の課税状況が関わってくる条件です。
同居する家族の中に課税者が一人でもいる場合、この要件を満たさなくなる可能性があります。
「世帯分離をすれば対象になるのではないか」という疑問を持つ方もいらっしゃいますが、この点については判断が分かれる要素を含むため、後の章であらためて整理します。
5. 【執筆者コメント】
所得基準の話で実務上気を付けたいのは、「年金収入だけを見て自己判断してしまう」ことです。
前年の年金収入から公的年金等控除などを差し引いた雑所得と、その他の所得を合計した金額で基準が判定されるため、年金以外にわずかな収入がある方ほど、自分がその他所得としてどこまで算入されるのかを正確に把握していないまま、対象かどうかを誤って判断してしまう可能性があります。
加えて、世帯全員の非課税状況という要件は、本人の収入状況だけを見ていても分からない部分です。
同居している家族の課税状況まで含めて確認する必要があるため、「自分は年金以外に収入がないから対象になるはず」という判断だけでは不十分な場面が出てきます。基準額をわずかに超えている、超えていないというボーダーライン上のケースほど、思い込みによる見送りや、逆に対象外であるにもかかわらず申請してしまうといった行き違いが起きやすい領域です。
この基準額や算入対象の具体的な範囲は制度改定によって変わる可能性があるため、ここでは構造だけを示しています。ご自身の具体的な所得状況や判定については、お住まいの市区町村の窓口で確認することをおすすめします。
特に世帯構成が複雑な方ほど、自己判断より窓口での確認を優先したほうが、結果的に手続きの手間を減らせます。
6. 年金生活者支援給付金の受給額を決める「2つの計算式」――納付済期間と免除期間で単価が違う
前の章までは「もらえるかどうか」の話でしたが、ここからは「もらえるなら、いくらか」という金額の話に焦点を移します。実は、この給付金の金額を決めているのは基準額の5,620円という数字そのものではなく、2つの計算式の組み合わせです。
保険料納付済期間に基づく額(月額)は5620円×保険料納付済期間÷480月、保険料免除期間に基づく額(月額)は1万1768円×保険料免除期間÷480月で算出されます。
ここで多くの方が見落とすのが、この2つの式にかけられている単価が違う、という点です。
納付済期間には5620円という基準額そのものが使われますが、免除期間には1万1768円という、基準額の2倍以上の数字が使われています。
これは、老齢基礎年金の満額(月7万608円)の6分の1にあたる金額で、全額免除・4分の3免除・半額免除の期間に適用されます(4分の1免除の期間は12分の1の5884円)。
「免除を受けていた期間は、納付していた期間よりも低く評価される」というイメージを持っている方は多いのですが、この給付金に限っては、単価という点では逆の構造になっているのです。
7. 【執筆者コメント】
この2つの計算式は、年金制度の中でも数字の並びだけを見ると誤解を招きやすい部分です。「免除を受けた期間は年金額が減る」という感覚がそのまま頭にあると、「免除期間の単価が納付済期間の単価より高い」という事実に違和感を覚える方も多いと思います。
ただ、これは特別な優遇措置というわけではなく、年金生活者支援給付金がそもそも「低所得の方の生活を支援する」という目的で設計されている制度である以上、保険料を納める余裕がなく免除を選んだ期間について、一定の配慮をする計算式が組み込まれているという理解が近いと思います。
実務上重要なのは、この単価の違いを知らないまま「免除期間があるから、自分の受給額は低いはずだ」と思い込んでしまうケースです。次の章で具体的な数字を当てはめますが、免除期間の比率が高い方のほうが、フルで納付してきた方より受給額が大きくなる場合も実際にあります。
「納めてきた期間が長いほど得」という一般的な年金の感覚を、この給付金にそのまま当てはめると、実態とズレることがある、という点はまず頭に入れておいていただきたいところです。ご自身の納付済期間・免除期間は、ねんきん定期便やねんきんネットで確認できます。
8. 独自シミュレーション!3ケースで見る受給額の差
前章の計算式を、実際にありそうな3つのパターンに当てはめてみます。いずれも令和8年度の基準額(納付済期間5620円、全額免除期間1万1768円)をもとに、480月(40年)を基準に算出しています。
8.1 ケース①:40年間ずっと保険料を納めていた人
納付済期間480月、免除期間0月のケースです。
- 納付済期間に基づく額:5620円×480÷480=5620円
- 免除期間に基づく額:0円
- 合計:月額5620円(年額6万7440円)
8.2 ケース②:納付10年・全額免除30年の人
現役時代に自営業やフリーランス期間があり、収入が低い時期に全額免除を申請していたケースです。納付済期間120月、全額免除期間360月(合計480月)とします。
- 納付済期間に基づく額:5620円×120÷480=1405円
- 免除期間に基づく額:1万1768円×360÷480=8826円
- 合計:月額1万231円(年額12万2772円)
40年フルで納付したケース①の月5620円に対し、ケース②は月1万231円と、約1.8倍の差になります。保険料を納めてきた月数だけを見ればケース①のほうが「頑張って納めてきた」印象になりますが、この給付金の受給額という一点では、免除期間の比率が高いケース②のほうが大きくなるという結果になります。
8.3 ケース③:納付25年・全額免除2年の"平均像"に近いケース
会社員期間と自営業期間が混在し、一部に免除期間もある、比較的よくあるパターンです。納付済期間300月、全額免除期間24月(合計324月、残り156月は未加入・未納等でカウント対象外)とします。
- 納付済期間に基づく額:5620円×300÷480=3512.5円→3513円(端数処理)
- 免除期間に基づく額:1万1768円×24÷480=588.4円→588円(端数処理)
- 合計:月額4101円(年額4万9212円)
実際に、老齢年金生活者支援給付金を満額(月5620円)で受け取れる人ばかりではなく、平均的な支給額は月額4000円台にとどまるという実態が報じられています。これは、480月をフルにカバーできている人が多数派ではないことを反映した数字です。
9. 【執筆者コメント】
この3ケースで一番お伝えしたいのは、「保険料を全額きちんと納めてきた人が、この給付金でも一番得をする」とは限らないという事実です。ケース①とケース②を比べると、40年間フルで納付してきた方の受給額が、免除期間の比率が高い方より低くなるという、直感とは逆の結果になっています。
これは制度が不公平だという話ではなく、免除期間に適用される単価(1万1768円)が、納付済期間の単価(5620円)より高く設定されているという、計算式の構造そのものによる結果です。
一方で、ここで注意していただきたいのは、この給付金の受給額だけを見て「免除を受けたほうが得だった」と結論づけるのは早計だという点です。
老齢基礎年金そのものの金額は、免除期間よりも納付済期間のほうが確実に高くなります(全額免除期間は満額の2分の1、納付済期間は満額そのものが反映されるため)。
年金生活者支援給付金は、あくまで基礎年金に上乗せされる補助的な給付であり、老後の収入全体を左右するのは基礎年金本体の金額です。この給付金の計算式の癖だけを切り取って一喜一憂するのではなく、「自分の納付記録全体で、基礎年金と給付金を合わせていくらになるか」という視点で確認することをおすすめします。
ねんきんネットでは、この合計額に近いシミュレーションも確認できます。
10. 所得基準を「わずかに超えている」人はどうなるか
ここまでは受給できることを前提にした金額の話でしたが、実際には所得基準を数万円単位で超えているだけで対象外になってしまう方も少なくありません。この章では、そのボーダー層に絞って整理します。
前年の年金収入額とその他の所得額の合計が80万9000円以下(昭和31年4月1日以前生まれの方は80万6700円以下)の場合は「老齢年金生活者支援給付金」が支給されます。80万9000円を超え90万9000円以下(同90万6700円以下)の場合には、代わりに「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給されます。
補足的老齢年金生活者支援給付金の額は、5620円×保険料納付済期間÷480月×調整支給率で計算されます。調整支給率は「(90万9000円−前年の年金収入額とその他の所得額の合計)÷10万円」で求められる数字です。
例えば、40年間フルに納付し、前年の年金収入とその他所得の合計が85万円だった方の場合、調整支給率は(90万9000円−85万円)÷10万円=0.59。
補足的老齢年金生活者支援給付金の額は5620円×480÷480×0.59=3315.8円→3316円(端数処理)となり、通常の老齢年金生活者支援給付金(この方の場合は月5620円)と比べて、月2304円ほど少なくなる計算です。所得が基準額の中で高いほど調整支給率が下がり、給付額も小さくなる仕組みです。
「世帯分離をすれば非課税の要件を満たせるのではないか」という疑問については、要件の「世帯全員が市町村民税非課税である」という条件が世帯構成に依存するものである以上、世帯構成の変更が判定に影響する可能性自体は制度上想定されていますが、それによって必ず対象になるとは限らず、個々の家族構成や課税状況によって結果は変わります。
安易に判断せず、年金事務所や市区町村の窓口で確認したうえで検討することをおすすめします。
11. 【執筆者コメント】
所得基準の話で実務上厄介なのは、基準額を「1万円未満わずかに超えただけ」で、老齢年金生活者支援給付金そのものから、補足的老齢年金生活者支援給付金という別枠に移ってしまう、という制度の切れ目です。
しかも補足的老齢年金生活者支援給付金は、調整支給率という仕組みによって金額が段階的に減っていくため、「対象からいきなり外れる」わけではないものの、「基準額の中でどこに位置しているか」によって受給額が細かく変わってきます。 この調整支給率の存在を知らないと、「所得が基準額を少し超えたから、もう給付金は一切もらえない」と思い込んで、補足的老齢年金生活者支援給付金の請求自体を諦めてしまう方が出てくる可能性があります。
所得が80万9000円をわずかに超えている程度であれば、補足的老齢年金生活者支援給付金として一定額を受け取れる余地が残っていますので、「基準額を超えたからもう関係ない」と自己判断で終わらせず、まずは自分の所得がどのレンジに入るのかを確認することが大切です。
世帯分離についても、それ単独で得になるかどうかは、国民健康保険料や介護保険料など他の制度への影響も含めて総合的に判断する必要がある論点です。給付金の要件だけを見て動くのではなく、世帯全体の負担で考える視点を持つことをおすすめします。
12. 免除・未納期間がある人が今からできる選択
ここまでの「罠」を踏まえたうえで、免除や納付猶予などの期間がある方が実際に取れる選択肢を整理します。
代表的なのが「追納」と「繰下げ受給」の2つですが、いずれも年金生活者支援給付金との関係では単純に得とは言い切れない側面があります。
国民年金保険料の免除や納付猶予、学生納付特例の承認を受けた期間の保険料は、原則としてその期間の属する年度の翌年度から起算して10年以内であれば、後から納める(追納する)ことができます。ただし、単なる未納期間は追納できず、すでに老齢基礎年金の受給権が発生している方も追納はできません。
追納を行うと、その期間は「免除期間等」から「納付済期間」へと切り替わり、将来受け取る老齢基礎年金の本体額は満額に近づきます。
一方で、年金生活者支援給付金の算出においては、免除期間等を有していた期間に準ずる計算上の評価と、保険料納付済期間に基づく基準額のバランスがあるため、追納によって給付金の支給額が変動・調整される場合があります。
このため、基礎年金本体の増額分と給付金の増減をトータルで捉える視点が欠かせません。また、追納には「翌年度から10年以内」という明確な期限があり、老齢基礎年金を受け取り始めた後(受給権取得後)は利用できないため、計画的な判断が求められます。
繰下げ受給については、老齢基礎年金を受け取っていない待機期間中は、年金生活者支援給付金も支給されません。
給付金自体には繰下げによる増額の仕組みがないため、繰下げ待機を選んでいる間の給付金は、単純に受け取れない期間として積み重なっていきます。繰下げによる年金本体の増額メリットと、給付金を受け取れない期間の損失を、両方見て判断する必要があります。
13. 【執筆者コメント】
追納も繰下げ受給も、「年金額を増やすための一般的な選択肢」として紹介されることが多いのですが、年金生活者支援給付金という枠だけで見ると、必ずしも得になるとは限らないという構造があります。
追納は基礎年金本体を増やす効果がある一方で、給付金の計算式上は免除期間の単価のほうが高いため、給付金側では逆方向の影響が出ます。実際には基礎年金本体の増額分のほうが大きくなるケースが多いと考えられますが、「追納すれば何でも増える」という単純な理解のまま進めるのではなく、基礎年金と給付金を合わせた総額でどう変わるかを確認したうえで判断することをおすすめします。
繰下げ受給についても同様です。年金を増やす目的で70歳や75歳まで繰り下げる選択自体は有効な手段の一つですが、その待機期間中は給付金も一緒に止まる、という点は見落とされがちです。給付金の金額自体は月数千円程度でも、待機期間が長くなればその分の合計は無視できない金額になります。繰下げを検討する際は、基礎年金本体の増額シミュレーションだけでなく、給付金が止まる期間の損失も合わせて計算に入れることをおすすめします。いずれも、追納や繰下げそのものを避けるべきという話ではなく、「給付金という切り口だけでは損得が判断できない」という前提を持って、総合的に検討していただきたい部分です。
14. 請求を忘れると受給額はゼロになるという事実
ここまで計算式や要件を正確に理解していても、最後に手続きを行わなければ受給には至りません。この制度は「申請主義」であり、条件を満たしていても請求をしなければ1円も支給されないという、手続き面の実務上の注意点があります。
年金生活者支援給付金を受け取るには、支給要件を満たし、年金生活者支援給付金の認定請求という手続きを行う必要があります。
ただし、毎年9月頃に新たに対象者へ送付される請求書(はがき型)については、年明けの指定期限(1月上旬頃)までに日本年金機構へ届くように提出すれば、10月分に遡って受給できる措置が取られています。
この期限を過ぎてしまうと、その後に請求した月の翌月分からの支給となり、遅れた月分の給付金は受け取れなくなります。新たに対象になる方には毎年9月頃から請求書が順次発送され、初回の認定後は翌年以降の手続きが原則不要になる(所得情報による自動判定)仕組みですが、最初の1回の手続きや期限内の提出を忘れると、本来受け取れるはずの分を逃してしまうため注意が必要です。
15. 【執筆者コメント】
この制度のポイントは、計算式の複雑さではなく、「請求しないと遡って受け取れない」という手続き面のルールだと考えています。年金の請求漏れというと、多くの方は将来受け取る年金本体の話を思い浮かべますが、この給付金は本体とは別に請求が必要な手続きであり、しかも遡及して受け取れる期間に限りがあります。
ハガキが届いたのに「よく分からないから後で」と後回しにしてしまうと、その間の給付金は取り返せないまま確定してしまいます。
特に注意したいのは、65歳になって年金の請求を行うタイミングです。年金請求書と一緒に給付金の認定請求書も提出できる仕組みになっているため、年金の手続きだけを済ませて給付金側の請求を忘れてしまう、というケースが起こり得ます。年金事務所や市区町村の窓口で年金の相談をする際は、あわせて給付金の請求状況も確認しておくと、こうした取り漏れを防ぎやすくなります。
「対象かどうか分からないから請求しない」のではなく、「対象かどうか分からないからこそ、まず請求書を確認する」という順番で動くほうが、結果的に損をしない選択だと考えています。
16. まとめ
年金生活者支援給付金は、令和8年度の基準額が月5620円に改定されましたが、実際に受け取れる金額は、保険料の納付済期間と免除期間をそれぞれ別の単価で計算した合計で決まります。
免除期間の単価(1万1768円)は納付済期間の単価(5620円)より高く設定されているため、免除期間の比率が高い方が、フルで納付してきた方より受給額が大きくなるケースもあります。
所得基準をわずかに超えた場合も、補足的老齢年金生活者支援給付金として一定額を受け取れる余地が残っており、追納や繰下げ受給は基礎年金本体と給付金の両方への影響を合わせて検討する必要があります。
そして、要件を満たしていても、請求手続きをしなければ受給額はゼロのまま確定するという申請主義のルールは、最後まで見落とせないポイントです。
ご自身の納付記録や所得状況は、ねんきん定期便・ねんきんネット、または年金事務所での確認をおすすめします。
17. よくある質問
17.1 Q. 免除期間があると、受給額は必ず増えるのですか?
免除期間の単価(1万1768円)は納付済期間の単価(5620円)より高いため、免除期間の比率が高いほど給付金の受給額が大きくなる場合があります。ただし、老齢基礎年金本体の金額は納付済期間のほうが有利になるため、給付金と基礎年金を合わせた総額で判断する必要があります。
17.2 Q. 未納期間がある場合、そもそも対象外になりますか?
未納期間は、給付金の計算式における納付済期間・免除期間のいずれにも算入されません。受給資格期間や所得基準など他の要件を満たしていれば対象になり得ますが、未納期間分は受給額に反映されない点に注意が必要です。
17.3 Q. 世帯分離をすれば必ず対象になりますか?
世帯全員が市町村民税非課税であることが要件の一つであるため、世帯構成の変更が判定に影響する可能性自体はありますが、必ず対象になるとは限りません。国民健康保険料など他制度への影響も含めて、年金事務所や市区町村の窓口で確認することをおすすめします。
17.4 Q. 追納をすれば給付金は増えますか?
追納によって基礎年金本体は満額に近づきますが、給付金の計算式では免除期間の単価のほうが納付済期間の単価より高いため、追納した期間分の給付金はむしろ減少する方向に働きます。基礎年金本体の増額分と合わせて総合的に判断する必要があります。
17.5 Q. 繰下げ受給中でも給付金はもらえますか?
老齢基礎年金の繰下げ待機期間中は、年金生活者支援給付金も支給されません。給付金自体には繰下げによる増額もないため、繰下げを選ぶ場合は基礎年金の増額メリットと給付金が止まる期間の損失を合わせて検討する必要があります。
17.6 Q. 請求書(ハガキ)が届いたのに手続きを忘れたら、遡って受け取れますか?
給付金は原則として請求した月の翌月分からしか支給されず、年金本体のように遡って受け取ることはできません。手続きを忘れた期間の給付金は受け取れないまま確定するため、届いたらできるだけ早く手続きすることをおすすめします。
参考資料
齊藤 慧
