65歳以上では、認知症が約443万人、軽度認知障害(MCI)が約559万人と推計されています。合わせると約1002万人。およそ3人に1人が、認知機能について何らかの注意が必要な状態にあります。

本記事では、厚生年金の受給額分布と平均寿命の推移を確認したうえで、この推計値が示すものと、終活の実態を見ていきます。あわせて、自分の年金見込額を「ねんきんネット」「ねんきん定期便」でどう確かめるかも取り上げます。

木村 悦朗

資産を増やし老後の生活に備えることも非常に大切なことですが、同じくらい大事なのが、その資産を「使える」状態にしておくことです。例えば、加齢が進むにつれ判断力が落ちてしまうと、いざ使いたい時に口座が動かせなくなることがあります。そのような事にならないように、対策の手段を知っておくことが大切です。

以下で、厚生年金の受給額分布やねんきん定期便の見方をお伝えしていきます。まずは老後の収支について具体的な数字を見ながら、いつ何をどのように整えておくべきかを考えていきましょう。

1. 厚生年金の受給額分布。月10万円未満が19.0%

厚生年金(国民年金を含む)の受給額分布を詳しく見ると、次のような傾向があります。生活費の目安となる「20万円以上」を受給する人よりも、「10万円未満」の人のほうが多くなっています。

※この記事で紹介するのは、会社員など民間の事業所で雇用されていた人が受け取る「厚生年金保険(第1号)」の、国民年金の月額部分を含む年金額です。

厚生年金・国民年金の平均年金月額(2024年度末現在)1/5

厚生年金・国民年金の平均年金月額

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」

1.1 受給額分布の対比(厚生年金・男女全体)

  • 月額10万円未満:19.0%(約5.3人に1人)
  • 月額20万円以上:18.8%(約5.4人に1人)

わずかな差ではありますが、高額受給者の割合を「10万円に届かない層」が上回っています。
国民年金のみの受給者を含めて全体を俯瞰すれば、この「10万円未満」の割合はさらに圧倒的なものになると推測されます。

平均額が15万円台であっても、実際には受給者間の格差が大きく、個人単位で見れば、8割以上の人が「月20万円未満」の受給額となっており、自助努力での備えが重要視される背景となっています。

年金生活に入ってから「思ったより少なかった」と慌てないよう、現役時代から自身の受給予定額をシビアに見積もっておく必要があるでしょう。公的年金だけに頼り切るのではなく、早い段階からiDeCoやNISAなどを活用した「自分年金」作りを検討することが、老後のゆとりを左右する鍵となります。

2. 自分はいくら受け取れるのか。ねんきんネットとねんきん定期便で確かめる

分布はあくまで全体の姿です。自分がどのあたりに位置するのかは、実際の見込額を見ないと分かりません。

実際に口座へ振り込まれる年金額は、受給が始まるときに「年金振込通知書」で確認することになります。それより前、セカンドライフを迎える準備の段階では、「ねんきんネット」や「ねんきん定期便」で見込額を確かめられます。

2.1 ①ねんきんネット。最新の記録と試算をウェブ上で確認できる

日本年金機構の「ねんきんネット」では、最新の年金記録をいつでもウェブ上で確認することができます。 将来受け取る老齢年金の見込額を試算することも可能です。

利用にあたっては、基礎年金番号やメールアドレスを使う方法と、マイナンバーカードを使う方法の2つがあります。

2.2 ②ねんきん定期便。毎年の誕生月に届き、年代で中身が変わる

「ねんきん定期便」は、毎年の誕生月に郵送されてきます。35歳・45歳・59歳の節目には封書タイプ、それ以外はハガキ形式となります。

気をつけたいのは、年代によって記載内容が大きく異なる点です。

【50歳未満の場合】

50歳未満の人に届くねんきん定期便には、「これまでの加入実績に応じた年金額(今受給した場合の年金額)」が記載されています。

これから納める保険料は計算に含まれていないため、少なく感じるかもしれません。今後も保険料を納めることで、将来受け取る金額は更新されていきます。

【50歳未満の人に送られる「ねんきん定期便」】2/5

【50歳未満の人に送られる「ねんきん定期便」】

出所:日本年金機構「「ねんきん定期便」の様式(サンプル)と見方ガイド」

【50歳以上の場合】
一方、50歳以上の人に届くねんきん定期便には、現在の加入条件のまま60歳まで保険料を納め続けたと仮定した場合の「65歳から受け取れる年金見込額」が記載されています。

実際に老後に受け取る金額に近い、よりリアルな数字を確認することができます。

【50歳以上の人に送られる「ねんきん定期便」】3/5

【50歳以上の人に送られる「ねんきん定期便」】

出所:日本年金機構「「ねんきん定期便」の様式(サンプル)と見方ガイド」

見込額を見て、思ったより少ないと感じる方は少なくありません。

現役世代のうちに気づくことができれば、老後に向けて手を打てます。ただ、年金を受給する段階になってから気づいても、できることは限られます。

老後の資金計画を立てるうえでは、収入の目安を先に把握しておくことが欠かせません。「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で、早いうちに確認しておきましょう。

3. 65歳以上の12.3%が認知症、15.5%がMCI

厚生労働省が公表する「令和7年簡易生命表の概況」によると、最新の平均寿命は男性が81.35年、女性が87.33年。前年と比較して男性は0.25年、女性は0.20年上回っており、長期的にも大きく伸びています。

長い老後を豊かに過ごすには、資産形成に加え、公的年金や医療・介護リスクへの理解が重要です。長寿化の中で避けて通れないのが「認知症」への備えです。

3.1 認知症の現状、「シニアのおよそ3人に1人」認知機能に何かしらのサインが現れている状態

65歳以上の高齢者における認知症の現状(令和4年(2022年)時点の推計値)5/5

65歳以上の高齢者における認知症の現状(令和4年(2022年)時点の推計値)

出所:政府広報オンライン「知っておきたい認知症の基本」

65歳以上のシニア層3603万人を対象にした令和4年度(2022年度)の推計によると、65歳以上の高齢者における現状は以下の通りです。

  • 認知症: 約443万人(12.3%)
  • 軽度認知障害(MCI): 約559万人(15.5%)

認知症やその前段階とされるMCI(軽度認知障害)を含めると合計で約1002万人、およそ3人に1人が認知機能に関して何らかのサポートや注意が必要な状況にあると推計されています。認知症は今や身近な問題であり、MCI段階での対応が生活の質を左右します。

こうした背景から注目されているのが「終活」です。