稼ぎ頭はどこか、セグメントで見る成長の中身

ゼンショーの強さを理解するには、ブランドごとの違いを見る必要がある。2027年3月期1Qのセグメント別営業利益では、「はま寿司」が88億円と前年同期比で7割増となり、全体を牽引した。「すき家」も前年同期の営業損失から24億円の黒字へと転じている。欧米で持ち帰り寿司を展開する「グローバル中食」も、86億円の営業利益を確保した。

一方で、すべてが好調というわけではない。「なか卯」などを含むファストフード事業は営業利益が3割強減り、スーパーマーケットの小売事業は小幅な営業損失が続いた。複数のブランドを抱えるからこそ、好調な業態が苦戦する業態を補い、全体として大きな増益を生み出す構造になっている。

海外M&Aで広がる版図と、高めの財務レバレッジ

成長を支えるもう一つの軸が、海外展開だ。会社は2026年5月、欧州で大規模なパック寿司工場を持つポーランドの食品会社をおよそ81億円で買収し、完全子会社にした。北米や欧州での持ち帰り寿司事業を強化する狙いで、この買収に伴っておよそ70億円ののれんが発生している。国内の外食にとどまらず、世界で「食」の版図を広げる姿勢が鮮明だ。

こうした積極投資の裏で、財務は相応に張っている。1Q末の自己資本比率は35.7%と、小売業の中央値であるおよそ49%を下回る。M&Aや出店を借入も使って進めてきたためだ。もっとも、前期のROEは15.8%と業種中央値のおよそ7%を大きく上回り、投じた資本を効率よく利益に変えている。攻めの投資と資本効率が、いまのところ両立している点は見逃せない。

筆者コメント

ゼンショーという会社を眺めていると、「安くて早い牛丼屋」という入り口の印象と、実際の姿の開きに毎回驚かされる。売上は1兆円を超え、足元の稼ぎ頭は牛丼ではなく回転寿司のはま寿司であり、成長の最前線は欧米の持ち帰り寿司にある。今回の大幅増益と上方修正は、この会社がもはや国内外食の枠に収まらないことを、数字で示したものだと感じている。

面白いのは、成長のエンジンが一つではない点だ。既存店の底上げ、ブランド同士の相互補完、そして海外M&A。この三つが同時に回ることで、物価高という逆風の中でも増益を積み上げている。営業利益がこの5年で数倍に膨らんだのは、その合わせ技の成果だろう。

とはいえ、借入を伴う積極投資は諸刃でもある。金利や為替、そして買収した事業の統合がうまく進むかどうかで、成長の速度は変わる。高いROEと高めの財務レバレッジは表裏一体だ。強い決算の余韻の中でこそ、この攻めの姿勢が次にどこへ向かうのかを見ておきたいと考えている。

参考資料

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石津 大希