2. 高額療養費制度「8月から何が変わった?」自己負担の月額上限と年間上限をみる
2026年8月より、高額療養費制度の一部が見直されました。公的医療保険を将来にわたって維持しつつ、長期で治療を続ける方へのサポートを手厚くするための改定となっています。具体的には、大きく分けて3つのポイントがあります。
2.1 ポイント①:ひと月あたりの「自己負担上限額」が引き上げへ
医療費全体の伸びなどに合わせ、月ごとの負担上限額(1ヶ月間に窓口で払う最大額)が一部引き上げられます。
例えば、70歳以上で年収約260万円〜約370万円(標準報酬月額20万〜26万円=お給料などの月額に基づいた区分)の方の場合、8月からは以下のように変わっています。
- 通常の上限額(入院+外来):従来の5万7600円から 6万1500円 に引き上げ
- 外来診療のみの上限額(外来特例):従来の1万8000円から 2万2000円 に引き上げ
月ごとの上限額が少し上がるため、一時的な出費が増える点には注意が必要です。
2.2 ポイント②:長期療養者の味方!新たな安心の仕組み「年間上限」がスタート
月額負担が引き上げられる一方で、長期間治療を続ける方の負担を軽くする「年間上限」が新たに導入されました。
- 対象期間:毎年8月から翌年7月までの1年間
- 仕組み:毎月支払った自己負担額が積み上がり、一定の「年間上限額」に達した場合、それ以上の医療費の支払いは不要になります(超過分は後から戻ってきます)。
- 上限額の目安:先ほどの70歳以上(年収約260万円〜約370万円)の方の場合、年間上限は 53万円 となります。
「毎月の医療費は上限内に収まっているけれど、1年間ずっと通院しているので出費が重い」という長期療養中の方にとって、家計の助けとなる心強い仕組みです。
2.3 ポイント③:長期治療を支える「多数回該当」の金額はそのまま維持
直近12ヶ月の間で3ヶ月以上、高額療養費の対象となった場合、4ヶ月目以降の自己負担がさらに軽くなる「多数回該当(たすうかいがいとう)」という仕組みがあります。今回の見直しでは、長期で治療に励む方の経済的な負担が増えないよう、この多数回該当が適用された際の金額は引き上げられず、これまで通り維持されます。
3. まとめにかえて
今回は、2026年8月から始まった高額療養費制度の見直し内容と、三大死因に備えるための医療費対策について解説しました。自己負担上限額の引き上げが行われる一方で、年間上限の新設や多数回該当の維持など、長期療養者を支える仕組みも拡充されています。まずは公的保障の内容を正しく理解したうえで、不足する部分を貯蓄や民間保険で補いながら、自分に合った医療費対策を考えていくことが大切でしょう。
ここで、FPから今日から始められる2つの実用的なアクションをご紹介します。
3.1 1.公的保障を確認し、不足分を民間保険で補う
民間の医療保険を検討する際は、まず自分が利用できる公的保障を把握することが大切です。自営業者など国民健康保険の加入者は、病気やケガで働けなくなった際の傷病手当金がないため、就業不能保険で収入減に備える方法もあります。また、年金受給者の方を含め、制度改正を踏まえて保障内容と保険料のバランスを定期的に見直しましょう。
高額療養費制度の基本や8月から改正されたポイントをまとめた記事もあわせてご覧ください。
3.2 2. セルフメディケーション税制を活用
体調不良の際は、市販薬を活用するセルフメディケーションも選択肢の一つです。対象となる市販薬の購入額が年間1万2000円を超えた場合は、セルフメディケーション税制によって税負担を軽減できる可能性があります。日頃の健康管理とあわせて活用することで、家計の負担軽減にもつながるでしょう。
OTC類似薬の薬剤給付の見直しと「セルフメディケーション税制」のポイントをまとめた記事もあわせてご覧ください。
参考資料
- 厚生労働省「病院報告(令和8(2026)年5月分概数)」
- 厚生労働省「令和7(2025)年簡易生命表の概況 4死因分析」
- 厚生労働省「高額療養費の見直しについて」
- 厚生労働省「高額療養費の年間上限の新設」
村岸 理美

