「人生100年時代」を迎え、老後の生活設計への関心が高まっています。
しかし、総務省が公表した2026年7月分の東京都区部消費者物価指数(中旬速報値)でも生鮮食品を除く総合指数が前年同月比1.9%上昇(総合指数は2.0%上昇)を示すなど、家計を圧迫する物価高は継続しています。
厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査」によると高齢者世帯の41.3%が年金のみに収入を依存。その一方で、「老後の生活費は月30万円で十分」というかつての想定は見直しを迫られており、長く働き続けるシニアが増加しています。
本記事では、厚生年金をひとりで「月30万円以上」を受け取っている人のリアルな割合を解き明かしながら、年金と支出のギャップ、さらに2026年8月開始の「公金受取口座登録の意向確認書」の詐欺対策まで分かりやすく整理します。
その際、個人1人あたりの年金受給額と世帯全体の生活費を混同せず、単身か夫婦かといった「世帯単位」で将来の年金総額を正しく把握する重要性についても考えてみましょう。
1. この記事の3つのポイント
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老後の最低予想生活費は平均「39万円」へ上昇: 最新の調査では、物価高を反映して世帯の最低予想生活費が上昇し、かつての「月30万円」の目安を大きく超えています。 -
「月30万円以上」の厚生年金受給者は全体の約0.12%: 30万円以上の高額受給者は、男女合計しても稀なトップ層に限定されているのが現実です。 -
厚生年金保険(第1号)全体の平均は月額約15万円に留まる: 平均受給額は15万289円であり、年金だけで日々の暮らしをすべて賄うのは困難であることが分かります。
公的年金のデータを読み解くうえで、知っておきたい基礎知識があります。
私たちが「厚生年金」とひとくくりに呼ぶ制度は、実は被保険者の職種等によって第1号から第4号まで4つのグループに区分されています。
第1号は民間企業の会社員、第2号は国家公務員、第3号は地方公務員、第4号は私立学校の教職員が対象です。公務員や私学教職員などの共済組合と民間企業勤務者とでは、統計上の算出基準や平均受給額が異なります。
この記事でご紹介する平均額や受給ゾーンの分布データは、最も加入者数の多い「第1号(主に民間企業の会社員など)」を対象とした公的統計に基づいています。
ご自身のこれまでの働き方と照らし合わせながら、客観的な目安として参考にしてください。
2. 60歳代・70歳代が直面する、最低生活費「月39万円」の現実
J-FLEC(金融経済教育推進機構)の「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」によれば、世帯主が60歳以上の世帯において「老後に最低限必要と予想する月々の生活費」は、60歳代で39万円、70歳代で38万円に達しています。
昨今の厳しい物価高やインフレの影響もあり、かつて何となく目安とされていた「ざっくり月30万円」という水準から、想定される生活費は大きく上昇しているのが現実です。
実際、同調査において70歳代の二人以上世帯・単身世帯の87.7%(約9割近く)が家計について「ゆとりがない・苦しい」と回答しており、その最大の理由として半数以上が「物価上昇」を挙げています。
2.1 厚生年金「男女別」の平均受給額事情
では、その生活費のベースとなる公的年金は実際にいくら受け取れるのでしょうか。
厚生労働省が公表した最新の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、国民年金(基礎年金)に上乗せして受け取る厚生年金(老齢基礎年金を含む)の平均年金月額は全体平均で15万289円です。
さらに男女別で見てみると、受給額には以下のように大きな開きがあります。
- 男性:16万9967円
- 女性:11万1413円
現役時代の就業期間やキャリアにおける賃金水準の差が、老後の受給額の差となって明確に現れています。
2.2 厚生年金の受給額階級別の分布
では、具体的に「どのくらいの金額」を「どのくらいの割合の人」が受給しているのでしょうか。
最新の受給権者数のデータから、男女別の詳細な分布を見てみましょう。
男性(合計 1067万9944人)の分布
- 〜5万円未満:6万6039人
- 5万円以上〜10万円未満:923万9111人
- 10万円以上〜15万円未満:233万8996人
- 15万円以上〜20万円未満:441万4218人
- 20万円以上〜25万円未満:257万8659人
- 25万円以上〜30万円未満:33万9320人
- 30万円以上:1万8801人
女性(合計 540万5752人)の分布
- 〜5万円未満:17万1796人
- 5万円以上〜10万円未満:189万2228人
- 10万円以上〜15万円未満:267万7242人
- 15万円以上〜20万円未満:57万3593人
- 20万円以上〜25万円未満:8万3738人
- 25万円以上〜30万円未満:6673人
- 30万円以上:482人
2.3 「月30万円以上」の高額受給者はわずか0.12%
この受給分布データから、厚生年金を「毎月30万円以上」受け取っている人の割合を算出すると、男性で全体の約0.18%、女性にいたっては全体のわずか約0.009%に留まります。
男女を合計しても全体の約0.12%(1万9283人)に過ぎず、月額30万円以上の受給権者は、文字通りほんの一握りの「トップ層」に限られていることが分かります。
冒頭でご紹介した「老後の最低予想生活費(平均39万円)」はもちろんのこと、従来の目標水準であった「30万円」ですら、公的年金だけで賄っていくことは大多数の受給者にとって難しいと考えざるを得ません。
毎年の「ねんきん定期便」に記載されている年金の見込額をチェックする際、多くの方が「額面の金額」だけをそのまま老後予算として見積もってしまいがちです。
実際には、現役時代と同様に、受給する年金からも所得税や住民税が源泉徴収されるほか、介護保険料や後期高齢者医療保険料などの社会保険料が原則として天引き(特別徴収)されます。
そのため、手元に残る「実質的な手取り額」は額面からおよそ1割から1.5割ほど目減りします。
一次データを冷静に分析すると、将来の収支を正確に予測するためには、当初から「手取りベース」で老後の家計を設計しておくことが重要です。
現役時代からこの天引き分を想定したリアルなマネープランを立てることが、将来の大きな安心に繋がります。


