村岸理美
筆者はファイナンシャルプランナー(FP)としてこれまで多くのお客様の家計相談を承ってきましたが、医療費が家計の大きな負担になっている方は少なくありません。

私たちの暮らしに直結する医療保険について、今年(令和8年)5月29日、「健康保険法等の一部を改正する法律案」が成立しました。「ニュースで耳にしたけれど、自分や家族の負担はどう変わるの?」と不安を感じる方もいるのではないでしょうか。

今回の改正は、現役世代の負担上昇を抑えながら、全世代で納得して制度を維持する観点から行われました。具体的には、市販薬で代用できるお薬の給付見直しや、子育て世帯の保険料軽減など、負担と給付の公平化に向けたルールが決定しています。 いざという時に慌てないために、FPの視点から公的医療保険の基本と、今回の改正で押さえておくべきポイントをわかりやすく解説します。

この記事でわかること

  •  自分や家族が加入している医療保険の種類と自己負担割合の違い
  •  今年5月成立の医療保険改正における「5つの重要ポイント」
  •  高額療養費や傷病手当金など、暮らしを守る公的サポートの基礎知識

1. 働き方や年齢でこんなに違う!「5つの医療保険者」徹底比較

日本の医療保険制度は、すべての人がいずれかの公的医療保険に加入する「国民皆保険(こくみんかいほけん)」を採用しています。これにより、私たちは医療機関を自由に選んで受診でき(フリーアクセス)、少ない自己負担で高度な医療を受けることができます。

加入するグループ(医療保険者)は、働き方や年齢によって大きく5つに分かれます。

1.1 ① 市町村国保(国民健康保険)

  • 主な対象者:自営業、フリーランス、退職された方など
  • 加入者数:約2413万人
  • 平均年齢:54.2歳

都道府県と市町村が運営しています。かつては農家や自営業者が中心でしたが、現在は年金生活者などの無職の方が約4割を占めています。

1.2 ② 協会けんぽ(全国健康保険協会)

  • 主な対象者:主に中小企業にお勤めの方とそのご家族
  • 加入者数:約3944万人
  • 平均年齢:38.9歳

日本で最も加入者が多い保険です。都道府県ごとに医療費の実態に合わせて保険料率が設定されています。

1.3 ③ 組合健保(健康保険組合)

  • 主な対象者:主に大企業にお勤めの方とその家族
  • 加入者数:約2820万人
  • 平均年齢:35.9歳

企業ごとに独自に設立されており、法律で定められた給付に加えて企業独自の付加給付(手厚い補助)が用意されている場合もあります。

1.4 ④ 共済組合

  • 主な対象者:公務員や私立学校の教職員など
  • 加入者数:約982万人
  • 平均年齢:33.1歳

各共済法に基づき設立された保険者で、手厚い福利厚生と保障が特徴です。

1.5 ⑤ 後期高齢者医療制度

  • 主な対象者:75歳以上の方全般
  • 加入者数:約1913万人
  • 平均年齢:82.8歳

財源の約9割が、現役世代からの支援金(約4割)や公費(税金・約5割)で社会全体から支えられている制度です。

1.6 年齢で変わる「窓口の自己負担割合」

医療費の一部負担(自己負担)割合について2/3

医療費の一部負担(自己負担)割合について

出所:厚生労働省「我が国の医療保険について」

病院の窓口で治療費の全額を支払うわけではなく、年齢や所得に応じて、支払う割合(一部負担金)が決まっています。

  • 小学校入学前(義務教育就学前):2割負担
  • 小学校入学後〜69歳:3割負担(現役世代の多くがここにあてはまります)
  • 70歳〜74歳:2割負担(現役並みの所得がある方は3割負担)
  • 75歳以上:1割負担(一定以上の所得がある方は2割負担、現役並み所得者は3割負担)

また、会社員や公務員が加入する②〜④の保険(被用者保険)には、病気などで長期間仕事を休んだ際、最長1年6ヶ月にわたりお給料の約3分の2が支給される「傷病手当金」という強力な生活サポートも用意されています。