5年でたどるメモリ市況の乱高下と好況期に進む財務の立て直し
キオクシアの過去を並べると、市況の振れの激しさがよくわかる。営業損益は2022年3月期に2,162億円の黒字だったが、2023年3月期は990億円の赤字、2024年3月期は2,526億円の赤字へ沈んだ。
需要の冷え込みと価格下落が重なった局面だ。そこから2025年3月期は4,517億円の黒字に転換し、2026年3月期は8,703億円へ拡大した。
そして直近1Qは、単一の四半期で前期の通期を上回る利益を出している。赤字と急回復を数年で往復する、典型的なメモリの循環である。
足元の好況を、キオクシアは財務の改善に充てている。1Qの営業キャッシュフローは8,663億円と大きく、長期借入金を4,332億円繰り上げ返済した。
この結果、自己資本比率は前期末の37.9%から50.8%へ、一気に高まった。
半導体メモリは巨額の設備投資と借入を抱えやすい事業だ。だからこそ、稼げるうちに借入を軽くしておく動きは理にかなう。
次の市況の谷に備える体力づくりが進んでいると読み取れる。
筆者コメント
好決算なのに、なぜ株価は下がるのか。キオクシアの直近は、その問いをそのまま映している。
1兆円を超える四半期の営業利益は、事実として際立っている。だが株価が見ているのは、その事実ではなく、次に来る市況のほうだ。
メモリの循環を思い出したい。この会社は数年のうちに、大きな赤字と急回復を往復してきた。今がその山のどのあたりなのかは、誰にも断定できない。
好決算の大きさに驚くより、単価と需要がどこで折り返すかを冷静に追うほうが、この銘柄には向いている。
その意味で、好況期に借入を返し、財務を厚くしている点は見落とせない。
次の谷を織り込みながら動くのがメモリ株だとすれば、企業側もまた、次の谷に備えている。株価と経営の両方が先を見ている構図だと私は考えている。
参考資料
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石津 大希